U心、苛立つ

                                     苛
                                          @小さい草が生えているさま。
                                      Aこまかい。わずらわしい。
                                      Bからい。むごい。きびしい。
                                      Cおもい(苛疾)。
                                      Dみだす。みだれる。
                                             (角川 大字源より)

 苛−前口上

病気で体に不具合持ち
普通の振る舞い出来なくなると
昔を思い出しては不運をかこつ。
そればかりか小さいことにも腹立つようになり
人や物にも苛立ちぶつけるようになる。
その原因自分の方にあるのは分かってはいても
なぜか矛先他者に向ける。
苛立ちは義憤の表れと言い訳させる
不自由な体の自分が恨めしい。
人間出来た賢人言うように
飛べない鳥は飛べないところに自由があるのだ
こだわり棄ててこそ明日への出発出来るのだと
悟ればいいものを
体の不自由さが私の心乱している。


 苛@

私より年の若い人が
次々と亡くなっていく
それを目にして次は自分かもしれないと思ってしまう。
それだけ年をとっているのだからと
殊勝げに言ってはみても
世の中の事もう少し見聞きしたいとも思うのは
煩悩のなせるさもしい言い訳か。
年取ればこそ落ち着きも寛容さも出来て当然なのに
ちょっとしたことにも苛立ち覚えるのは
生きたいと思う気持ちの表れなのか。
間違いもなく死への準備しているのに
今私が生きているのは
多少の欲と多少の煩いあればこそと
感謝する私になりさがっている。


 苛A

日本人的な人生パターンに従って
定年後に郷土に帰り
長男ということで
猫の額のような畑の幾つかを継いだ。
病気の後遺症で耕作もままならず
土地には草がぼうぼうと生えている。
過疎地のこととて価値もなく処分も出来ない。
寄付すると言っても維持費かかると断られる。
そんな土地でも固定資産税払えよの通知が毎年来る。
利益あげる都市とは違い
片田舎の土地持ちには税金は納めるものではなく
むしり取られるものでしかない。
利用価値のない土地にしたのは国なのか私なのか
苛立ちの一つともなっている。


 苛B

企業は儲けることか゜その使命。
そのために時には恫喝めいた警告もする。
今、印象に残るのは
原発なければ電気代もっと上がるという恫喝。
ウインドウズXPはそのまま使えるが
ウイルスにやられてしまうとの恫喝。
一見利用者のための物言いのように見えるが
自利を図っての恫喝であるのは見え見え。
企業は儲けることで社会のお役に立つとの理屈は
資本主義社会でこそ通用するのではあるが
そんな社会が長く続くと
企業は社会的貢献どころか社会的束縛さえかけるのだ。
経済的余裕のある庶民には何ともないだろうが
年金生活者には心苛立せるきびしい時代となったものだ。


 苛C


電力を供給する民間会社がある。
民間会社である以上
経営で損失出せば
経営与る人は責めを負う。
だのにこの民間会社
赤字を出したというのに役員には多くの手当を出し
正規雇用者の社員には高給を出す。
大企業の上に
公的企業ということでおごりあるので
後ろめたさもなく値上げして平気で庶民にツケを回す。
真実を庶民に知らせず嘘ばかりをつく。
国の政策にべったりだと
消費者の苛立ちさえも封じられるということを
この民間会社は図らずも証明してくれた。


 苛D

日本で一瞬原発稼働が皆無になったのは
原発推進派にとっては恥ずべきことだったのか。
福島の原発事故で懲りたはずなのに
あっという間に再稼働の動きが加速されていく。
原発は麻薬のようなものかもしれない。
安全で心地よいこと楽して味わえると吹き込まれ
一度使用してその習慣性から逃れられず
ついには使用せねばならない体にしてしまう。
まるでやくざが人をシャブ漬けにするような
手法をまねしたかのように
政府や電気会社が
国民を怠惰で欲どしい人間にしていく。
そして計画停電で脅かす姿を見るにつけ
われわれの苛立つ心もいつしか麻痺されていく。


 苛E

選挙がくる度に思うのは
その都度行われるメディアの事前調査。
90%の人投票するとが答えているのに
実際は50〜60%くらいの投票率。
日本の国民は選挙にいい加減なのか。
それとも報道する側がいい加減な質問するからなのか。
メディアは常に世論調査に依存しながら
さも報道が正しかったと言い訳するように
なぜ投票率が低かったのかをしたりげに解説する。
実際投票しなかった人の決まり文句も
「仕事が忙しく行けなかった。」
「投票したって何にも変わらない。」
壊れたレコード聴くだけの
苛立ち覚えるいつもの選挙風物詩である。


苛F

日本のお偉方のよく言うせりふは
「辞するよりこのまま職責を全うしたい。」
これはいったん選ばれたエリートの常套語。
にもかかわらず言葉通りに実行した人は
まあ、お目にかからない。
大半が地位に固執して高収入に酔いしれている。
例の大震災以後のお偉方の立ちいふるまいは
何十万の人を路頭に迷わせ苦しめながら
誰もが責任を取らず日本人の心を苛立たせている。
天災にかこつけて民を利用しようとする魂胆は
日本の無責任体制そのもの。
和を以て貴しの日本民族に流れるよさが
戦後教育によってその良き部分を封じ込められ
負の部分として跋扈したからでしかない。


 苛G

自民党にはこりごり
民主党にはがっかり
第三極はさっぱり分からぬ。
これはメディアが世論調査で捻り出した政党観。
現実はこりごりのはずの自民党が支持率第一位。
がっかりのはずの民主党が支持率第二位。
こりごりなのにこの数値。
がっかりなのにこの数値。
あきらかにこれはメディアに国民が踊らされたせいか。
日本の国民は変化を求めるに懲りたのか。
第三極の日本の仕組みを変えるのどうのの動きも
生活がどうの安全がどうのの関心に取って代わられた。
われわれの心を苛立たせているのは
今の風潮がなかなか変わらないということである。


 苛H

テレビなどで見聞きして苛立つのは
「私達も反省しなければならないが」とか
「私達も悪いところがあるのだが」とか言いながら
相変わらずの自己主張し続ける出演者の光景。
しおらしげに前置きして言うものだから
ちっとは反省したかと思いきや
相変わらずの傲慢さを懲りなく維持している。
その典型を今までの政治に驕っていた自民党と
正義面して報道するメディアに見る。
権力の復権や持続図るにこれほど便利な言葉はない。
これらの言葉が使われた時
心苛立たせるだけではなく
より狡猾な戦術が採られているかもしれぬと
裏読みすること不可避だろう。


 苛I

何をやっても責任をとらないのは
日本の役人の本質。
いっぱしの提言しながら
いざそれができる立場になっても
決断実行しないのは
日本の政治家の一般的特徴。
役人や政治家の資質がないというのではない。
むしろ個人的には優秀だと思わせる。
それなのにそんな身分を持つと
役人は相変わらず責任はとらないし
政治家は決断力がなくなってくる。
われわれの苛立ち高じてくるのは当然としても
よく見れば日本の国民の方が
そのこと許す体質を持っていた。


 苛J

イエスかノーかをはっきりさせてから
いろいろ行動するのが西洋の人間。
そのずるい逃げ道はダブルスタンダードで臨むこと。
イエスかノーかをはっきりさせずに
いろいろ行動するのが日本人。
そのずるい逃げ道は周囲に決めさせて自利謀ること。
結局人間とは欲どしい存在なのだと言っても
倫理的にそれ自体を非難できないのは
それが近代的人間の本質だから。
日本の場合は借り物の民主主義である上に
今も村社会の生き方に固執している。
総論賛成、各論反対のやり方で我欲満たそうとし
身内の判断を優先するにはばからない。
それで何が悪いのかと思っている日本人はごまんといる。


 苛K

ヤクザという組織がなくならないのは
談合という手法がなくならないのは
裏金という使い道がなくならないのは
望む気持ちが
日本人の心の中で払拭されていないから。
反社会的のイメージ強いヤクザはともかく
談合や裏金は「和をもって貴し」の日本よく表している。
口では否定するが腹では「必要悪」認めている。
本音と建て前使い分けしつつ
それって悪いことだったのかと初めて気づく日本人。
それの何が悪いのかと開き直る確信的日本人。
そんな悪弊ひたすら恥じる日本人の混在する中で
日本とは何?と確認しようとしても
確認できない苛立ちがまだまだ残っている。


 苛L

中国や韓国で反日教育受けて育った子供たち。
大人になって道理がわかってきても
日本の国旗や財産を踏んづけ燃やしたりするのに
何の後ろめたさも感じない。
同じように
日本で戦後の国連賛美の平和教育受けて育った子供たち。
大人になって道理がわかってきても
反日教育染みついた中国人や韓国人の行為を知っても
戦後教育染みついた日本人としては
平和的に処するのだと別段騒ぎもしない。
そんな中国人や韓国人を愛国的であると思わせ
そんな日本人を人間的であると思わせるのが
国が管理する戦後教育だと思えば
苛立つ日本人の心も少しは治まる。

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