2.資格について・・・・縦割り行政の弊害??
さて、ここの項では、気分を変えて、資格制度について考えてみます。アマチュア無線の範囲から外れますが、参考になれば、と思います。
皆さんが努力して、無線従事者免許証を取得したとします。その資格が通信士の場合、無線の試験に合格したと、喜んでいられるのもせいぜい3日です。勿論個人の価値観がありますが・・・・
理由は法令の管轄と体系に由来しています。「各級海上無線通信士や各級総合無線通信士」を取得しているのに、船舶職員たる船舶通信士として勤務できない、「航空無線通信士や第一・二級総合無線通信士」を取得しているのに航空機に乗り込んで無線の操作ができないというわけです。
法令上、無線従事者免許はあくまでも、無線設備の操作の知識、技能について証明がされるのみであり、船舶職員としての知識や技能を証明しているのではない、または、航空機運航乗務員としての知識や技能を証明しているのではない、ということです。
従って、現行法令上では、船舶職員たる船舶通信士として勤務するには、無線従事者免許証に加えて、船舶局無線従事者証明書、船舶職員法に基づく海技免状(通信または電子通信)を取得しなくてはなりません。また、航空機運航乗務員として航空機に乗り込んで無線設備の操作を行うには、無線従事者免許証に加えて、航空法に基づく航空通信士技能証明書、第2種航空身体検査証明書を取得しなくてはなりません。
海技免状も航空通信士技能証明書も試験はいずれも学科試験のみ。従って、全部の科目を無線従事者の試験と同時に行い、資格も、まとめて1つにすることによって、上記問題は解決すると思われます。
ただ、現在は時代が変わり、無線機器の性能が向上し、誰でも簡単に無線機器を操作できるようになり、航空通信士が航空機からモールス電信により航空管制通信を行っていたのが操縦士が無線を取り扱うようになって久しくなっていますし、船舶でも、船長と航海士が無線の資格の取得が義務づけられ、専任の無線通信士は下船するという状態になっています。現実には海技免状の試験でも通信士は受験者が激減し、また、航空通信士技能証明書の試験も殆ど受験者がいないという状態になっています。