<Multilevel Holarchy ジャケット>
EP-4は「前期、中期、後期」に分類すると、クリアになる。
前期ー80年結成から「制服、肉体、複製」リリースまでの
ギグ中心期。ファンクだが、流動的で模索している感が強い。
中期ー5.21を中心とする、精力的なメディア戦略期。
サウンドプロダクションは、BANANA色が強まる。
明確な指針が示され、「ソリッドなニューウェーブバンド」
の座を不動のものとする。EP-4が好き、というのは「この時期」
が好きな方が多い。
後期ーWAVEレーベル移籍。トルコ、インド音楽等に方向性を見出し、
肉声で歌う曲も見受けられる。暴論ではあろうが、個人的に
「ビートルズ」っぽく聴こえる曲もある。PSI-TECH MUSIC
(P.T.M)と自らを名乗る。
異論をお持ちの方も多いと察するが、便宜的なものなので、諒として
戴きたい。
さて、「Multilevel Holarchy」は前期、つまり83年までの各地
でのライブを収録したものだ。
限定1,000枚(僕はNo.383だった。521ではなかった)。
坂本龍一氏も、ゲストで参加の豪華版である。
アルバムの印象は、当時の言葉でいうと「ノイジーなポップ・アヴァン
ギャルド」であるが、今聴いても「ノイジーなポップ・アヴァンギャル
ド」である。
A面の最後が「君が代」、B面の最後が「ウェディング・マーチ」。
♪咲いた咲いた、チューリップの花が、のメロディーがベースライン
になっていて、その上にカオル氏の「ヒョーイ、ウヒョーイ」と高音
エフェクト・ヴォイスが絡むという「テレグラフ魂」が炸裂している。
この「Multilevel Holarchy」のリリースは83年5月21日。
幻となった、LF-1と同時発売だったのである。
佐藤 カオル氏の「狙い」は何だったのだろうか。
過去を総決算して、メジャーシーンに乗り込む意思表明だろうか。
メジャーで出来る事と、インディーで出来た事の比較対比を
我々に求めたのだろうか。
いずれにしても、5.21にLF-1は発売されなかった。
LF-1は「太陽」である。まばゆい光、破綻なく照り続ける光。
その光は月を照らす。月は「Multilevel Holarchy」。
太陽は5.21に昇らなかった。それ故、月も輝かなかった。
青くさく、口幅ったいようだが、僕はこの「Multilevel Holarchy」
が大好きである。太陽が昇らなかったために、その月は輪郭も見えず
茫洋として、発光も極めて薄い。しかし、その頼りない薄光こそが、
当時のEP-4の「スタイルの模索」と重なり合い、堪らなく愛しく感じる
のだ。
饒舌に過ぎ、汗顔の至りだが涼とされたし。