牧師室より

酷暑の日々も、熱中症対策をしつつ里山を散歩している。「終戦記念日」を過ぎた頃から、山路の脇にキンミズヒキとガンクビソウが咲きそろってきた。どちらも黄色の可憐な花だが、この二つが咲きそろうと、心の中がざわざわする。学生の頃、この二つの花が野に咲きそろうと、そろそろ夏休みが終盤の徴なので、終わっていない宿題が気になり始めていたからだ。夏が終わってしまうざわざわ感が、今も心に沸き起こる。  先週のある日の散歩では、「秋の七草」のうち、じつに六種を目撃した。まだ咲いていなかったのはフジバカマ。ちなみに、春の七草は、七草粥として食するものとしても知られ、親しまれるようになったが、秋の七草は、もっぱら秋を感じる花を愛でるためのリストである。春のほうは、定着したのは平安時代から江戸時代にかけてのようだが、秋の七草のリストは、奈良時代の歌人山上憶良の句が由来とされるので、歴史が長い。秋の七草の覚え方として、「お好きな服は」という呪文がある。七草それぞれの頭文字をならべた呪文だ。お=オミナエシ、す=ススキ、き=キキョウ、な=ナデシコ、ふ=フジバカマ、く=クズ、は=ハギとなっている。最近、この秋の七草に別の覚え方があることを知った。同じく頭文字を並べたものだが、それは「沖縄救う」というものだ。考えた人はたぶん、かなり上の世代だと思う。なぜなら、これを平仮名で「おきなはすくふ」と旧仮名遣いで書くと、秋の七草の頭文字となるからだ。  8月15日以降、心がざわざわし始め、さらに「沖縄救う」の花々が咲きそろう頃の今、むしろ軍備増強を押し付けられて救われない沖縄のことを思い、秋にできることは何かを考えている夏の終わりである。  (中沢麻貴)