牧師室より

我が家の食卓で夏の定番、昼は冷や汁素麺、晩は麻婆豆腐の季節がやってきた。そればかり食べるわけではないが、夏バテしてきた時によく作る。すり鉢で味噌と胡麻をすり、冷水でのばし、刻んだキュウリ、ミョウガ、オクラなどを入れた北関東風の冷や汁(九州のものは干魚が入る)は、もともと夏場の農作業の合間に火を使わず調理する食事で、熱中症対策としても理に適っている。麻婆豆腐は、市販の「素」は使わず、花椒、甜麺醤、豆鼓、豆板醤などを順序に従い挽肉と炒め合わせ、豆腐とあり合わせの材料で作る。爽快な辛さで発汗作用もあるのだが、食べると(はやり言葉で言うところの)「ととのう」感じがある。あとは、ゴーヤチャンプルーも夏場によく作る。屋上菜園で、オクラやゴーヤが実るのが待ち遠しい。  社会人になって以降、小説の主要登場人物の、調理など家事に関する描写がとても気になるようになった。きっかけは1970年代に書かれた米国のミステリーで、仕事を持つ妻と暮らす主人公の警察官が、自宅で調理する描写がかなり頻繁に出てくることに気づいたことだ。和訳の多い欧米の小説は、男性作家の作品であっても、家事描写が人物描写において重要な位置を占めていることも多い気がするのだ。そして、最近の日本の小説も家事描写が増えてきた気がする。聖書には、あまりそういう描写が無くて残念だ。 (中沢麻貴)