牧師室より

黒崎幸吉氏という人が、「シュヴァイツェル博士はクリスチャンか」(1957年)という論文を書いている。黒崎氏は、無教会主義キリスト教の伝道者であり、聖書学者でもある。ここで話題にされている「シュヴァイツェル博士」とは、医者や哲学者として知られるアルベルト・シュヴァイツァー氏のことだが、彼は当時の神学者や牧師から「キリスト者ではない」との烙印を押されていた。黒崎氏はこの「烙印」への反論として、この論文を書いている。 シュヴァイツァー氏への批判の内容を黒崎氏はこう伝えている。「彼は一度もイエス・キリストは神の子であると告白したことはなかった」「『原爆実験廃止に関する訴え』に、『神』『キリスト』という語を使っていない」「神の啓示とはなんらの 関係もない倫理に過ぎない」云々である。これらが「キリスト者ではない」理由なのだそうだ。黒崎氏は「そう判断する理由と態度が不愉快」だと書いている。また、救いは神ご自身が決定する事柄であり、たとえ法王や大神学者であっても、決めることではないとも語っていた。  信仰とは、各自がそれぞれに神様と向き合って生きることであり、その形は自由であることを思わされた。コロナ禍により信仰生活は試練の中にあるが、神様への信頼を失わずに、みなさんと共に歩みたい。(中沢譲)