牧師室より

新しい年を迎えると、新しい夢や希望を語らなければと、まずは考えます。しかし深く考えなくても、21世紀が、前世紀と同じくらいか、それ以上に困難な時代を迎えつつあることを、多くの方が感じ取っているのではないでしょうか。  たとえばコロナ感染症が全世界に広がり、すでに多くの命が奪われていますが、コロナ禍での生き方が、まだ定まっていません。昨年起きたウクライナ戦争は、世界経済に多大な影響を与え、燃料や食糧の不足に留まらず、核兵器をはじめとする軍拡競争に拍車をかけています。日本でも事実上、憲法9条は「死に体」と化してしまいました。  話は変わりますが、島田雅彦さんという方が、『カタストロフ・マニア』(初版2017年)という小説を書いておられます。太陽フレア爆発により、世界規模で通信手段が失われ、同時に新種のウイルスが蔓延することでの「文明の滅び」を描いています。コロナ感染症が広がる直前に書かれた作品ですが、現状を預言したかのような作品となっており、話題になったようです。巻末に収録された宮内悠介さんとの対談で、「(若い人たちは)最新のテクノロジーは使いこなすけれども、火起こしをはじめとして人間がこれまで手作業で行ってきた仕事は、まずできない。で、そんなときに頼れるのは老人なんですね」とあります。 「カタストロフ」の時代。教会にとっても、社会にとっても、頼りになるのは、生き抜いてきた人生のベテランの方たちです。今年も引き続き教会を支えていただき、元気を頂ければと願っています。(中沢譲)