◇牧師室より◇
小泉首相は8月15日の敗戦記念日に多くの反対を押し切って靖国神社参拝に行った。人権意識と歴史認識の欠落を痛切に思う。
小泉首相は「心の問題だ。反対すのが理解できない」と言い、「韓国、中国の反対におもねる必要はない」とナショナリズムを煽る。ブッシュ大統領と仲良しの小泉首相が訪米した際、太平洋戦争を称える靖国参拝者には演説させないと米国議会からも拒否された。
首相の参拝は政教分離原則の憲法に違反するといくつかの裁判が行われた。殆どの裁判所は憲法判断を避けているが、「合憲判決」は一つもない。大阪高裁ははっきりと「違憲判決」を出した。また首相の参拝は侵略戦争の反省に立つ平和理念に基づいた戦後の国際・国内合意の条約、声明、決議を踏みにじる。
戦前の靖国神社は天皇が祭主となって、戦争の悲惨な実態を覆い隠し、「天子様がお参りくださる」と遺族の悲しみを喜びに転化させる闇の祭儀の場であった。戦後は、一宗教法人になったが、「遊就館」の展示に明らかなように英霊を顕彰し、侵略を美化する施設である。
戦争に刈り出されて戦死した二万八千人の台湾人、二万二千人の韓国・朝鮮人も合祀されている。台湾・韓国の遺族は合祀の取り下げを要求しているが、靖国神社は応じようとはしない。これは、思想・信条・信仰の自由に反し、自己決定権に対する侵害である。
昭和天皇はA級戦犯の合祀以後、靖国参拝を止めたというメモが見つかり公表された。天皇は自分の責任をA級戦犯に押しつけたのだから、合わせる顔がないだろう。これから「分祀論」が議論されるのではないか。A級戦犯の遺族で合祀を当然としている人もいる。天皇の発言によって分祀されたら、靖国神社は自己矛盾し、何より主権在民の日本の民主主義は崩壊する。
麻生外務大臣は靖国神社の非宗教法人化、古賀誠国会議員は「国家護持」と、権力による宗教介入をあからさまに主張している。靖国問題を中国との経済問題やA級戦犯分祀問題に歪曲させてはならない。政教分離原則に立った人権問題である。また、戦死者への真の弔意は侵略戦争の責任を明らかにし、平和を維持、実現していくことではないか。
8月11日から15日まで、連続して「平和の灯を ! ヤスクニの闇へ キャンドル行動」を東アジアの四地域「日本、沖縄、台湾、韓国」の市民が合同して行った。私は 14日の明治公園での「野外展示とコンサート」と「キャンドル人文字作り」に参加した。ろうそくを持った800人で「YASUKUNI NO」と表した。
首相の参拝に批判的な加藤紘一国会議員宅が放火された。戦前のように、言論を封殺させてはならない。