浦和絵本大学(公開講座)


 2003年9月より幼稚園にて、絵本の研究会「絵本大学」が開催されています。
 
 絵本とは何か、子どもたちにとって大切な絵本とはどういうものなのか、おとなが子どものために、どういう絵本を選び、どんなふうに読んでやったらいいのかを、世界の代表的な50作品を味わいながら考えていきます。
 また、絵本を探ることで、現在崩れつつある親と子の絆についても考えていきます。


 お問い合わせ先
 048-822-4594(麗和幼稚園)




麗和幼稚園 201年度『絵本大学』 ―­お誘いと年間スケジュール―

 

 2003年に始めたこの『絵本大学』は、今年度で16年目になります。もともとここ諸聖徒教会の司祭で麗和幼稚園の理事長の広田勝一先生が発案し、こちらの教会の信徒で、長年福音館書店で絵本や童話の編集責任者をしていた作家の斎藤惇夫(現園長)が、世界の代表的な、そして、何としても卒園までには子どもたちに読んでやってほしい、50冊の絵本を選び、それを1年かけて保護者の皆さんとともに楽しみながら、子どもの成長と絵本の関係を考えようとしてきた学びの場所です。保護者の皆さんは、

「人が生涯本好きになるかどうかは、絵本の中で味わった楽しみの量による」

「幼いころに読んでもらった絵本の量と質が、生涯の読書の方向を決める」

「メディアの嵐から子どもの心を守るのは親に読んでもらう絵本」

「三代続いたものでないと絵本とはいえない」

「どんなに字が読めるようになっても、10歳までは親に読んでもらうのが読書」

などという言葉はどこかで聞いていらっしゃると思います。どの言葉も正しいのですが、いざ我が子のために絵本を選ぼうとすると、絵も文章もひどいものを買ってしまったり、なんとか早く子ども自身に読ませようとしたり、お勉強に役立たせようとしたり・・・、結局は「子どもを本離れさせ、活字離れにしてしまう」ことがよくあるのです。

 絵本が好きにならなくてもかまわない、などと悠長に言ってもいられません。子どもたちを取りまいている環境は、メディア一つとっても、子どもたちの感じる力、考える力、生きる力を奪い去ろうとしています。今ほど子どもたちが普通に元気に成長していくのが難しくなった時代はないし、今ほど絵本(絵本体験)が必要とされている時代もないのです。

 この『絵本大学』では、

(1)世界の絵本の傑作中の傑作をご一緒に味わってみたいと思います。

(2)さまざまなジャンルの絵本をのぞいてみます。
     詩の絵本、昔話の絵本、そして、リ
アリズムやファンタジーの絵本など。

(3)三代にわたって子どもたちが愛し守ってきた絵本の内容と形式を考えてみます。

(4)絵本の歴史をすこしのぞきながら、絵本とは何か、について考えてみます。

(5)そのうえで、なぜ子どもたちの成長にとって絵本が必要なのかを考えます。

 つまり、芸術の中でもひときわ美しい絵本をご一緒に楽しみながら、具体的に、子どもたちにとって、
なぜ(とりわけ今!)絵本がなくてはならないものであり、その絵本とはどういうものなのか、それを考えてみたいのです。もしも、親が、絵本選びと読み聞かせに失敗さえしなかったならば、絵本は子どもたちの将来の読書の方向を決めていく鍵になるばかりでなく、子どもの心を守る砦になり、成長を促す力になっていくはずなのです。

楽しい豊かな学びの場です。子どもと絵本を愛する方ならばどなたでも、どうぞお誘い合わせのうえ、お気軽にご参加下さい。

毎回10時~11時30分です。会場は麗和幼稚園。参加費は無料です。






 

今年度『絵本大学』の日程と、おおまかな内容(時々内容を変えるときがあります)

 

 第一回 5月日(火) テーマ:「子ども・メディア・絵本」  

 具体的に絵本を学ぶ前に、子どもと言葉、子どもと絵本、子どもと物語、子どもとメディア、などについて、基本的なことを考えたいと思います。絵本はほんとうに子どもの成長に必要なのだろうか。絵本は、子どもたちをメディアの嵐から守ってくれる砦なのだろうか。そんなことを考えたいのです。毎回資料をお渡ししますが、第一回目は基礎資料で、優れた絵本のリストをはじめ、一年を通して使うものです。毎回ご持参ください。

 

第二回 6月日(火) 昔話絵本について

        昔話絵本の傑作、「おおきなかぶ」「てぶくろ」「三びきのやぎのがらがらどん」「ねむりひめ」
(いずれも福音館書店)を中心に、昔話絵本の楽しさを味わいます。同時に、昔話とは何か、なぜ人間の成長にとって昔話が必要と言われているのか、ご一緒に考えてみたいと思います。この四冊を、お子さんに読んでやってから参加して下さい。ただし、その際、お子さんの感想は絶対に聞かないようにして、お子さんの漏らす言葉にだけ耳を澄ませてください。これはいつでも同じことです!



 また、毎回指定された絵本は、図書館で借りて、お子さんが「もう一回読んで!」と言うようならば、それがお子さんの生涯の宝物になる絵本ですから、なるべく買って、当日持参してください。それは毎回同じです。

 

第三回 7月10日(火) 日常生活(リアリズム)の絵本について

 「はじめてのおつかい」「わたしとあそんで」「チムとゆうかんなせんちょうさん」(福音館書店)
「ちいさいおうち」(岩波書店)

    子どもたちが日常生活の中で経験できること、あるいは経験できるかもしれないことをテーマにした絵本です。子どもたちの日常生活の質をぐんと深め、世界を見る目を養っていく絵本です。例えば小学校高学年でぜひ読んでほしい、
『若草物語』とか『宝島』とか、『大きな森の小さな家』とか『ハイジ』とか『秘密の花園』に直結する絵本です。

 

第四回 9月日(火) 空想物語(ファンタジー)の絵本について 

 「おかあさんだいすき」(岩波書店)「もりのなか」「たんじょうび」(福音館書店)
 「かいじゅうたちのいるところ」(冨山房)

子どもたちがその持ち前の豊かな想像力の中で経験できる
(おとなは、よほど想像力を維持していないとなかなか楽しめない)空想物語の絵本です。子どもたちが目に見えない世界に触れることのよって、人間の深さや広さに気づく、驚く。その最初になる絵本のジャンルです。昔話の絵本同様に、『くまのプーさん』や、『ドリトル先生』や『ムーミン』や
『西遊記』や、『たのしい川べ』や『ホビットの冒険』などに連なる絵本です。

 

 第五回 10日(火) 詩の絵本を楽しむ

「かばくん」「木いちごつみ」「よあけ」(福音館書店)「もこもこもこ」(文研出版)

 おとなが少し苦手で、子どもたちは本来大好きな詩について考えます。参加者全員、編ずつ、大好きな詩(子どものための詩でなくとも、例えば青春時代に密かに愛唱した詩でも、今お好きな詩でもかまいません)を用意してきて、皆さんの前で披露して下さい。ご用意を忘れた方のためには、こちらで、幾冊か詩集を用意しておきます。目で読むのと、耳で聞くこととがどんなに違うのか、そして子どもたちがどんなに、本当は詩がすきなのか、それを認識していただきたいのです。それが、詩を知る第一歩です。

 

 第六回 11日(火) 近代絵本のはじまり

 「ピーターラビットのおはなし」「金のがちょうの本」(福音館書店)

一体、絵本は、いつから、子ども時代の消耗品では決してなく、生涯楽しむことのできる芸術の一つのジャンルとまでみなされるようになったのか、それを探ってみます。絵本とは何か、なぜ子どもたちにとって絵本が大切なのか、子どもの成長を促す絵本には何が備わっているのか。一体絵本が絵本になるためには、どういう質を持った絵と言葉によって作られていなくてはならないのか、つまり絵本の条件とは何か、それをしっかりと学びたいと思います。

 

 第七回 12日(火) 行って帰る物語

「こすずめのぼうけん」「アンガスとあひる」「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」(福音館書店)
そしてもう一度「チムとゆうかんなせんちょうさん」やピーターラビットなど。




 子どもたちが愛して守り続けてきた物語の形式「行って帰る」について考えます。この形式を学ぶと、子どもたちがなぜ物語を楽しむのか、どんな物語を愛するのか、はっきりと見えてきます。もしもできたら、
『幼い子の文学』(瀬田貞二著・中公新書)の中の、「行きて帰りし物語」の項目を読んできてください。この形式の子どもたちにとっての意味が、分かりやすく記されています。また、クリスマス絵本の傑作をご紹介します。

 

 

 第八回 15日(火) 取り上なかった絵本の傑作

 あまりとりあげられることのない、けれども紛れもない絵本、あるいは、幼児のための絵本の傑作を楽しみたいと思います。また、冬(雪)の絵本の傑作も取り上げます。

 

 第九回 日(火)私たちの国の子どもの本の夜明け

浦和に深い関係があり、しかも、私たちの国の子どもの本を実り豊かな方向に導いて下さった石井桃子さんと瀬田貞二さんのお仕事を振り返りながら、第二次世界大戦後、私たちの国の子どもの本の出版が何を目指してきたのか、それを考えてみます。同時に、小学校に入ってからぜひ子どもたちに経験してほしい本についてお話しします。