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この地球の上で(共感)(2018年11月)

 世界を理解したいから、月に一度開かれているイスラーム世界勉強会に、なるべく出席している、11月の勉強会は、京都大学大学院教授の岡真理さん(アラブ文学)とパレスチナ映画「オマールの壁」と「ガザの美容室」を観た。
 「オマールの壁」(原題「オマル」)。イスラエル入植地とパレスチナの間にはりめぐらされたヨルダン川西岸地区の分離壁は、イスラエルは「安全保障壁」と呼び、国際社会は「アパルトヘイト・ウォール」と呼ぶものだが、入植地をめぐって複雑に入り組んでいる。パレスチナの人々にとって、自分の家と、畑や職場や井戸が壁で分断され、壁の向こうに行くのには、壁に何か所か設けられたイスラエルの検問所を通らなければならない。
 主人公のオマルは、恋人のナディアに会うために、監視の銃弾を避けながらロープでよじ登って壁を超えるのだった。ナディアと結婚するために、オマルはパン(ピタパンを焼いていた)職人として稼いだお金を貯めている。こんな日常を変えたいと、幼馴染のタスクやアブジャドとともに、イスラエル兵を襲撃する。オマル一人が捕らえられてしまう。誰が撃ったのかと拷問されるが、オマルは黙秘を続ける。囚人仲間がオマルに近づいてきて、「自白をするな」という。「自白をしない」というオマルの言葉を録音して、これは裁判で証拠になるから協力者(スパイ)になれ、一生監獄にいるのかナディアと一緒になるのかと選択を迫ったのは秘密警察のエージェント、ラミだった。オマルはナディアのために協力者になることを選ぶ。ラミは、ラディアには秘密があると仄めかす。ナディアに思いを寄せているアブジャドに問い詰めると、ナディアを妊娠させたという。婚前交渉は死に値するパレスチナ。オマルは、貯めたお金をアブジャドに渡し、二人を結婚させる。子どもが生まれたら「早産だ」と言えといって。2年後、ナディアを訪ねたオマルは二人が結婚した時にはまだ妊娠していなかったことを知る。ラミと、協力者になっていたアブジャビが、オマルを嘘ではめたことを知り、オマルはラミを呼び出す・・・
 岡さんは、構造的な暴力である占領の中で、なぜ、密告者(協力者、スパイ)が生まれるかについて話された。貧しくてお腹を空かせている子どものために、あるいは、オマルのように自分の一番大切なものに手を出させないために、密告者になってしまう。人間のもっとも弱いところをついてくる。密告者となった負い目は、抵抗する力強い意志を内側から壊していく。
 ガザは、種子島程の面積の土地に200万人近くが住んでいる。2005年ガザから入植地とイスラエル軍が撤退した。その直後から空爆が始まる。ガザはイスラエルの新型兵器の実験場と化す。イスラエルの空爆は報道されず、パレスナのロケット弾は報道される非対称な報道はおかしい。完全に封鎖されたガザの生活は、「生きながらの死」といわれる。封鎖されたまま、それがすでに12年以上続いている。質の悪い小麦粉と油、砂糖が配給され、糖尿病が増えている。下水処理場が破壊されたままで、汚水が海に流れ込み、地下水は汚染されている。ガザの水道水の90%が飲料に不適だという。パレスチナ人の体が、放射能に侵されるように、じわじわと内側から蝕まれていく。覚醒作用のある鎮痛剤がドラックとして使われている。自殺が増えている。2017年日本では17/10万人 ガザ48/10万人!
 「ガザの美容室」の原題は、「デグラデ」。劣化を意味する。ガザの「今」のありよう(=女たちの抵抗)を、写実的に描いた作品ではなく、ガザのメタファーとして美容室に集まった(閉じ込められた)女性たちの言動を通して、ガザの状況を示唆した作品。
 パレスチナを内側と外側から蝕み、民族浄化の道を進むイスラエル。知ることは力になるのだろうか?パレスチナに目を向ける人々が増えれば、大きな力になる日が来るのだろうか?
 ―と、フェイスブックに報告を書いたら、「痛いです」とコメントを書いてくれたのは、福島原発事故で故郷を追われ、毎年夏には、佐渡で子どもたちのための保養キャンプを開いている友人だった。集団生活を営む人間は、他者に共感することができる。ただその向いている方向が、財界などの強者であるか、弱い立場の者か、だ。
 今、国会で議論されている外国人労働者の入管法改正案を見ているとつくづく、そう思う。単なる「労働」を呼び込むのではなく、「人」としての権利を保障できるか、本人並びに家族、とりわけ子どもたちの言葉の学習を支援する用意があるのか、十分論議してほしい。共感は「ともに生きる」ためにこそ、あるはずだ。

この地球の上で(避難訓練)(2018年10月)

 10月の初め、夏みたいに暑い日があったのに、中ごろから急に冷え込み始めた。
 家では、もちろん朝晩ストーブをつけているが、おやおやの店内は、まだ暖房がない。それで寒い時はホカロンを貼ってしのいでいる。去年、急な冷え込みが来た時に、何の備えもなく出勤したら、友人が寒くてかわいそうだと、家までホカロンと未使用のタイツを取りに行ってくれて渡してくれた。ありがたかった。
 それ以来バックの中には、ホカロンを常備しておくことにした。
 ちなみに、私のバックの中には小さな非常用袋が入れてあって、「小さな懐中電灯・予備の電池・笛・手ぬぐい・マスク・ガーゼ付きばんそうこう・アルミシート」が入っている。前に、献血をした時にもらったコップ入りの非常用携帯グッズも、これと同じようなものが入っていた。生き埋めになって、笛を吹くような事態にならいことを願いつつ、お守り代わりに持っている。
 もちろん家の枕元には、非常持ち出しリュックが置いてある。こちらも、使うことのないことを願っているお守りみたいな存在。
 106日(土)に、おやおや出勤前に、あがたの森でやっている消費生活展に寄ってきた。途中、ヘルメットにリュックの親子連れに遭遇。ちょっと前に、「震度〇の地震が発生しました。これは訓練です。」の防災無線のアナウンスが流れていたので、訓練だとわかる。ヘルメットをかぶっている人はいるけれど、前回で紹介した洗面器を風呂敷で被っている人はいなかった。知っていても、あの姿で歩くのは勇気がいるかもしれないな。私は、やってみてもいいけれど。
 源池小学校PTAは、防災に力を入れていて、この日は第三地区との協同の訓練だったとのこと。体育館やテントに泊まり、車中泊もしたとか。源池小学校に通う子どもと母親(私の姪)に様子を聞いてみた。その日は小学校まで行ったけれど、子どもが体育館に泊まるのは怖いと泊まらずに帰ってきたという。地震が起きるという想定や、非日常が怖かったかもしれない。でも、訓練はしたほうがいいと思う。とっさに必要なことができるようになるには、訓練は有効だ。
 私が中学生の時、授業中に小さな地震が来た。たった一人だけ机の下に隠れる子がいた。当時、松代群発地震があった地域から転校してきた子だった。
 「地震が来たら机の下に隠れる」は知識として持っていたのに、訓練していた彼以外私たちは誰一人として、体を動かすことができなかったのだった。
 でも、こんなことは訓練だけで終わってほしい。たとえ避難できたとしても、家が倒壊したら、立て直す費用のある人なんて、そうそういないはず。ずーと仮設住宅ずまいを続けている人の気持ちに寄り添いたくなる
 それにしても、Jアラートの訓練だけはしたくない。核ミサイルが飛んで来たら隠れるところなどありはしない。それより、核が使われないように人類全体の叡智を集めるべきだし、廃絶の努力をすべきだ。核禁止条約は、122か国の国・地域が賛成し、採択された。核禁止条約を批准する国・地域は来年2019年後半にも発効に必要な50に達しそうだという。日本は米国に追従するばかりでなく、一日でも早くこの地球の上から核がなくなるように、この条約を批准すべきだと思う。

この地球の上で(災害列島)(2018年9

 台風21号の強風で、関西では屋根が飛び(実際私の友人の実家の屋根がすっぽり飛び、ブルーシートを持って慌てて駆け付けたらしい)、車が大破した、というニュースを見たばかりのその3日後、北海道で震度7の地震が起きた。もうこうなると、「災害列島」と呼ぶしかない。
 泊原発は、外部電源が断たれたが、幸い非常用電源が動いてことなきを得た。運転停止中でも、原発内には使用済み核燃料がプールに保管されていて、電気を使って冷やし続けなければいけないからだ。今回、北海道全域が停電するという事態に陥ったのは、道内の半分の電気をまかなう苫東厚真火力発電所が停止したために、需給のバランスが崩れて周波数が乱れ、ほかの発電所が連鎖的に停止したということだ。大規模なものに依存するシステムから、小規模分散型のものに移行すべきだという教訓になってほしい。
 ニュースを見ると、開いている店に水、食料、懐中電灯、乾電池を求めて、長蛇の列ができていた。災害が発生した後では、これらがすぐになくなることは、3.11直後に石巻にボランティアに入る友人たちのために準備をした時に身に沁みている。ボランティアに入る人は、自前でテント、寝袋、水、食料、電池などを用意していくのが常識なので、彼らのために店を回って買い集めようとしたが、量販店の棚はどこも空っぽ。価格が少し高めのコンビニには、まだ少しあったので、おやおやの野菜ジュースやレトルトと合わせ、何とか送り出したということがあった。何ごともない平時の時に、水、保存食、電池などの準備を、どうぞ怠りなく!
 停電になると、テレビ、電話、パソコンが使えなくなる。どうなっているか状況がわからないのは不安だから、情報源は必要だ。ラジオ、スマホが頼りになるだろう。私自身はスマホを持っていないけれど、今回娘たちのために、2000円のソーラー充電器を買った。ネットで買った安い充電器が使えなかったという友人もいるので、お天気のいい日に、よく日に当てたらどうやら使えそうなので、やれやれだ。松本の非電化工房みよしやさんは、スマホ10台に充電できる独立型のソーラーパネル、バッテリー、充電コントローラー、のセットを自作して売っている。29160円(もっと発電量が多くてノートPCも使えるタイプもある) 生物は多様性があったほうが、生き残れる。何があってもおかしくないこの時代、エネルギーも電力会社の電気だけに頼らないで、多様性を持たせたほうがいい。独立型ソーラー発電、ガス、灯油、薪、炭・・・・
 地震や台風などの体感できる災害は、行動が起こしやすい。目に見えずに臭いもない放射能が襲ってくる原子力災害はどうだろう。災害時には特有のバリアがはりやすいという。第1のバリアは「大丈夫という思い込み(正常性バイアス)」異常事態であるにも関わらず、大丈夫、何でもないというバイアスをかけて心を安定させようとする。第二のバリアは「まわりが正しいという思い込み(集団同調性バイアス)」自分の判断力を失っているので周りに合わせてしまい、周りが逃げ出さないと自分も逃げ出せない。第3のバリアは、「パニックになるという思い込み(過大評価バイアス)」パニックを恐れて危険をちゃんと伝えない。危機管理者がかかりやすい。では、どうすればいいか。人々が、大丈夫だという思い込みにかかっていて動けないときは、誰かが率先して逃げ出せば、周りも心のバイアスがはずれだす。被ばくしないためには、空振りを恐れずに「とっとと逃げる」勇気が必要だそうだ。
 ヘルメットはお持ちだろうか。避難の時に頭を守るヘルメット。うちにはバイク用のが一つ、災害用のが一つ。三人家族なので、もう一つはどうしようと思っていたら、NHK・あさイチで、こんなことを教わった。洗面器にタオルを敷いて頭にかぶり、風呂敷でしばる。ちょっと笑ってしまえる姿だが、洗面器もタオルも避難所で役に立つ。ヘルメットにはヘッドライトをガムテープで固定しておく。笛もセットしておくとなお良い。いつ何時、何が起きるかわからない日本列島に住む私たちは、備えだけは十分すぎるくらいにしておこう。
 しかし、こんな中でオリンピックが開けるのだろうか。選手村が、被災者の仮設住宅より立派というのは、なんだかおかしい。避難所についても、国際赤十字・スフィア基準には、最低基準として一人当たり33平方メートル(2畳分)の広さで覆いのある空間を確保、トイレは20人につき1つ以上などと定められている。国はちゃんと、守ってよね!オスプレイなどを買うお金を、こっちに使えばいいんだから。

 

この地球の上で(猛暑の過ごし方)(2018年8月)

 毎日暑い!としか言いようがない。世界各地で猛暑が続いていて、アメリカ・デスバレーで50度を超したとか(といってもデスバレーは毎年暑そうだけれど)、シベリアでも30度を超え森林火災が発生しているとか。日本の場合、猛暑はチベット高気圧と太平洋高気圧の勢力が強いことが原因らしい。この二つの高気圧のおかげで、台風12号は、西から東へという通常の動きが、東から西という真逆の不思議な動きになってしまった。でも、どんな気象であれ、私たちは元気で毎日を過ごさねば。
 ある日、娘が仕事場のエアコンが壊れたけれど扇風機もなく、頭痛がして食欲もなくなって熱中症みたいといって早退してきたことがあった。エアコンがなくても、扇風機さえあればなんとかしのげるのに。うちがそう。熱帯夜も一人に1台ずつあれば大丈夫。首振り(幸い私の部屋のは壊れていて首振りしかできない)、「弱」、タイマーをかけて、麦茶を1杯飲んで寝る。電気をたくさん消費して、排熱を外に出すエアコンは、エコロジストとしては、まだ手を出さないでおこうと思っている。
 汗を流すのにはシャワーで簡単にすませたいところだけれど、3日に1回くらいはお風呂に入る。ぬるめのお湯にゆっくりつかると、副交感神経が働いてリラックス効果でよい睡眠が取れるとか。湯船に2,3滴ペパーミントオイルをたらして爽快感を味わったりもしている。
 おやつは、暑いときには寒天、ゼリーなどが、やっぱりおいしい。梅シロップは、寒天を使った梅ゼリーにしたり、炭酸で割ったりして大活躍。桃、ネクタリンなどを、甘さ控えめに煮て、柔らかめに固めてジュレ風に。昨年は「ヨ―グルトバーク」の作り方を書いたけれど、今年の新作は、信毎に紹介されていた「水切りヨーグルトのカスタードソースかけ」…ヨーグルト1パックをざる、キッチンペーパー、ボールで水切りしておく。(ボ―ルにたまった水・ホエーもおいしいから飲んでね)卵黄2個、牛乳250cc、洗糖50グラムを弱火でトロリとするまで温め、冷やしておく。水切りヨーグルトを器に盛り、周りにカスタードをかけ、ミントの葉やブルーベリーなどを飾って完成。
 この量は3人で食べてちょうどよかった。少し酸っぱいヨーグルトと優しい甘さのカスタードがとても素敵。新しいレシピが増えるのは世界が広がるようで嬉しい。
 暑い時にしっかり汗をかくのもいい。雑巾がけに、ジャム作り、大工仕事。
 ブラックベリーのジャムを作っていたら娘に「お母さん、この暑いのにどうしてジャムなんか作っているの?」と言われた。瓶を煮沸消毒して、煮て裏ごして、洗糖を入れ煮詰め、瓶に詰め、瓶ごと煮て脱気をする。たしかに見ているだけでも暑いかも・・・しかし娘よ、毎日少しずつ収穫したベリーを冷凍して貯めているんだもの、適当にジャムを作らないと冷凍庫がいっぱいになってしまうのですぞ。
 トイレに、突っ張り棒を使って新たな棚を作るために、反対側の壁に今まであった棚を移動した。棚板をL字金具で取り付ける仕事は、大工仕事苦手意識で緊張した冷や汗と狭い空間での足場の悪さに汗だくだく。でもいいのができたので、汗をかいた甲斐があった。
 ご飯は、娘たちがバテ気味で「熱いものなど食べたくない」という時には、トマトとモッツアレラの冷スパや、冷やし中華を。回復してきたら夏野菜たっぷりラタトゥユや、肉料理を。春雨や野菜をナンプラーとレモン汁、チリパウダーで和えたタイのサラダなど暑い国々の料理も、食べやすいかも。次の休みには、しっかり玉ねぎを汗だくで炒めてインドカレーを作ろうかな。
 都合がつけば参加している「信州イスラーム世界勉強会」では、先日初めての料理講習会があった。ナス、カリフラワー、鶏肉(今回はイスラームの教義に則って処理されたハラール肉を使った)、松の実を鍋の内側に飾り、サフランライスを入れて鍋をひっくり返すと、あらまあ素敵な「マクルーバ」、モロヘイヤのスープ、ナスのディップ、ミントの葉の入ったサラダなど、これも暑い国の料理。
 とにかく、あの手この手で、熱中症になることなく、この暑さを乗り越えましょう。

この地球の上で(安定ヨウ素剤の事前配布を)(2018年6月)

 たしか3月に書いた「この地球の上で」に、安定ヨウ素剤の事前配布について触れたたと思う。5月15日に以下のような要望書をもって、友人たちと、松本市の危機管理課と話し合いの場を持ってきた。
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<要望書>
 松本市が原子力災害に備えて、松本市災害時医療救護活動マニュアル・原子力災害編の作成並びに、40歳以下の市民と市内滞在者用に安定ヨウ素剤を自主的に備蓄してくださっていることに、深く感謝しています。
 ところで、先の福島第一原発事故では、安定ヨウ素剤を備蓄していたにも関わらず、配布されずに現在までに福島県内の子ども193人に甲状腺がんが見つかっています。そこで、以下を要望したいと思います。
安定ヨウ素を事前に各戸配布してください。
 マニュアルには各戸配布と学校等への備蓄が書かれていますが(P1718)、現在、小学校や薬局などへの備蓄のみで、各戸配布は行われていません。
地震などが起きたら、道路が寸断、渋滞などで、配備してある小学校や薬局の備蓄場所までたどり着けない事態が起こりえます。小さい子どもを抱えたお母さんが、子ども連れで外に出ることをためらうことも考えられます。夜間だったら、なおさら混乱するでしょう。
 確実に放射線ブルームが来る前に安定ヨウ素剤を服用するために、事前に各戸配布をしてください。
 安定ヨウ素剤は、医師や薬剤師から副作用や服用時期などの説明を受けることが必要だと理解しています。が、事故時の混乱の中で説明を聞くよりも、平常時に配布される時に、ゆっくり十分な注意事項を聞いた方が、安全性が高まると思います。このほうが、配布する方にも、受け取る方にとっても、メリットが大きいのではないでしょうか。
 市民も学習会をして理解を深めていきたいと思います。
 以上、要望します。
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 どうして事前配布が必要か、お読みいただければ、お分かりだと思う。危機管理課からは、具体的な運用方法は決まっていないので検討するという返事だった。とにかく甲状腺が放射性ヨウ素を取り込む前に、普通のヨウ素で満たしておくためには事前に各家庭に配っておくことが必要だと思うので、引き続き話し合っていきたい。ちなみにチェルノブイリ原発事故時、隣国ポーランドでは配布したため、小児甲状腺がんは発生していないといわれている。ドイツ、フランス、ベルギー、オーストリアなども、家庭に配布されているようだ。
 チェルノブイリの子どもたちに甲状腺がんの治療を行った市長だから、松本市では原発から30キロ圏外であるのに備蓄しているのかと思っていた。が、安曇野市の市会議員の方から、安曇野市も備蓄しているとお聞きした。だからもしかしたら、ほかの市町村でも備蓄しているかもしれない。お住いの自治体に問い合わせてみてはどうだろうか。
 福島原発事故から7年が過ぎ、事故時の安定用ヨウ素剤の服用が甲状腺がんを防ぐことを知らない人が増えていると思う。各地の原発は次々に再稼働している。地震も多発している。
 7月7日には、30キロ圏外の兵庫県篠山市で事前配布実現のために尽力された京都府在住の守田敏也さんにそのお話を聞きたいと思うので、ぜひご参加を

この地球の上で(新緑の季節の中で)(2018年5月)

 あれよあれよという間に、世界は緑と花々にあふれている。と同時に空き地やお手入れされていない庭では、ヒメジオン、ハルジオン(ヒメジオンに似ているが花はピンクがかっている)、オニタビラコ、スズメノチャビキやらカラスエムギやらイネ科の、いわゆる雑草も元気がいい。(どうか除草のために危険な農薬ラウンドアップなど使われませんように!ラウンドアップが量販店で目に着く場所に積み上げられていたので、腰が抜けそうになった。)
 うちは、北向きの玄関の側は、ツルニチソウ、ワイルドストロベリー、ミント、レモンバーム、オレガノ、三つ葉のグランドカバーできる草で地面が覆われ、草取りの手間がずいぶん省けるようになった。おやおやの洋子ちゃんから貰った2株ほどのツルニチソウやワイルドストロベリーが、ここを気に行ってくれて増えてくれたし、ミントは、土手に生えていたのを摘んできて水に差して根を伸ばしたものを植えた。南側の庭に種をまいた三つ葉や、植えたレモンバームが、何故か、こっちに勝手に引っ越してきて増えている。みんな自分のお気に入りの場所を見つけたのだろう。 
 アスファルトやコンクリートの割れ目に生えている植物たちを人間は「ド根性大根」「ド根性―」と勝手に呼ぶけれど、彼らのその場所は、競合する相手がいないので自分だけの場所を確保して幸せなのだと紹介していた又吉直吉の出ていたEテレの番組があっって、納得した。
 ワイルドストロベリーの間にドクダミが生えているので、気が付いたときに抜いている。でもある日、娘の背中・首の付け根にできた化膿性の吹き出物にドクダミをきれいに洗って火であぶり揉んだものをガーゼと絆創膏で貼ってみた。一日2回貼り換えたら、翌日には腫れが引いていた。さすがドクダミ。これからは、あまりじゃけんにするのはやめよう。いや、気を使わなくても、ひたすら勢力を増そうとしているドクダミなので適当に抜いてもいいかな。
 南の庭は、空いているところに自分で敷き詰めたレンガや、ホトトギス、これまた洋子ちゃんからもらったニリンソウが覆っている。野菜を植える狭い場所ではこぼれ種のシソの芽がぎっしり。そろそろ掘り起こして何か植えよう。
 食べたビワの種から育てた木が大きくなってきて、昨年は20個ほどの実をつけてくれた。実もさることながら、葉っぱを重宝している。台所仕事、オーブン皿などで火傷した時には、採ってきてきれいに洗って火であぶり、適当な大きさにカットして絆創膏で貼り付ける。すると、翌日には痛みはなく、水膨れにもならない。子どもが小さかった時、あせも用に、桃の葉っぱとビワの葉っぱを煎じて瓶に入れ冷蔵庫で保存したことがある。桃の葉っぱはすぐに傷んだのだけれど、ビワの煎じ汁は1か月以上なんともなかった。殺菌力が強いと思う。「薬」は「草で楽になる」という字の如し。
 新緑の木々や草に囲まれながら、それなりに小さな庭でも楽しんでいる。春の山菜取りが好きだった連れ合いが亡くなって17年。山に連れて行ってくれる人がいないので、コゴミやコシアブラをスーパーで買ってくる(タラの芽は高いので買えない)。
 今年もまだ軽井沢のコシアブラから国の基準値100ベクレル/㎏を超える放射性セシウムが検出された。やるせない。群馬県を通って福島原発から250㎞以上離れた長野県にまで放射能ブルームはやってきたのだ。
 松本市が原子力災害のために備蓄している安定ヨウ素剤を、各家庭に事前配布してほしいという要望書を書いたので、この話は次回にでも。

この地球の上で(アンダーコントロールの東京五輪?)(2018年4月)

 331日に東京で開かれた「オリンピック災害おことわりリンク集会 311と東京五輪」に参加してきた。一橋大学の鵜飼哲さんが、元京大原子炉実験所の小出裕章さんに話していただきたいと企画したものだったので、お話を聞いてみたいと思ったのだった。
 安倍首相は、201398日国際オリンピック委員会総会で福島の状況を「The situation is under control」(状況は制御されている)と言った。その発言から4年以上が過ぎているが、果たして制御されているのだろうか?
 小出裕章さんのお話「溶け落ちた炉心が今どこにあるかすら分からない。ひたすら水を注入してきたが、放射能汚染水が溢れている。果てしない放射能の封じ込め作業と労働者の被曝が続いている。溶け落ちた炉心は圧力容器直下のペステル(台座)内に饅頭のように堆積していると東電は思いたがっていて、溶け落ちた炉心を掴み出し3040年で事故を収束させるといった。が、ペステルには、作業員が出入りするための通路が開いていて、測定したら、圧力容器内20μ㏜、通路は530μ㏜が計測された。溶け落ちた炉心はペステルから外部に出ており、掴み出すことはできない。100年後にも事故は収束できない。仕方がないので、格納容器の横から穴をあけて取り出す「気中工法」にロードマップを変更したが、莫大な被曝作業になってしまう。
 結局はチェルノブイリ原発のように「石棺」を作って閉じ込めるしかない(発熱量は、事故直後の数百分の一に減っているので、もう冷却水は必要ない。空冷が可能なはず)が、チェルノブイリ原発は1機の上部だけ。福島第一原発は3機あって上も下もしなくてはいけない。労働者の被曝は莫大になるだろう。
 本来なら放射線管理区域にしなければならない土地に子どもを含めて捨てられ、被曝が続いている。原子力マフィアがそれを忘れさせようと画策している。彼らがとる手段は別のことに国民の目を誘導させること。オリンピックに反対すると非国民であるかもように言われる。しかし、今なすべきことは、事故の収束と被害者の救済である。それをなさない国であれば、私は喜んで非国民になる。」
 次は、福島原発刑事訴訟支援団・団長であるいわき市議会議員の佐藤和良さんのお話「今も、事故収束作業に1日約5000人の被曝労働者が働いている。『復興五輪』という国家による悪辣な福島第一原発事故の隠蔽がなされている。2017年3月で住宅無償提供と帰還困難区域を除く避難区域指定が解除された。2020年には避難者も帰還困難者もいないことにしたいのだろう。福島原発事故は、全国で『風化』、加害者は『居直り』、被害者は『疲弊』。
 被害者の生きる権利を求めての7年間だった。20123月福島原発告訴団が発足し、同年6月に福島県民1324人、全国合わせて14716人が福島地検に刑事告訴した。
 翌20139月東京地検に移送され、容疑者全員が不起訴処分になる。(安倍首相のアンダーコントロール発言の前日97日に告訴が不起訴になったのは単なる偶然だろうか。)
 201310月検察審議会(検察審議会とは、くじで選ばれた20歳以上の市民が検察官の不起訴処分の当否について審査するもの)に申し立てがなされ、20147月東京第5検察審議会が東電元幹部3名に起訴相当の議決をした。20151月東京地検が再び不起訴にするが、同年7月検察審議会が東電元幹部3名に、再び起訴の議決。2016229日指定弁護士が東京地裁に東電元幹部3名を強制起訴した。
 2017630日第1回公判が開かれ、17回の公判が開かれることになっている。2018年秋までに証人20人、被告人尋問までを終える予定。公判では、東電の100%子会社・東電設計の社員が証言。証人は、同社の土木本部構造耐震グループに所属、事故3年前に福島第一原発の津波想定を15.7mの津波高をとりまとめた津波計算の技術責任者を勤め、その試算を東電に手渡していた。東電からは、東電設計に対して『津波高を解析で小さくならないか』と依頼があったが、証人は『数値は土木学会の手法に則っているので、変更はできないと』と断り、解析条件を変えて試算したが、数値は15mを超え、変わらなかったと証言。これからの公判で、様々な事実が明らかになってくると思われる」
 国の法律では年間被曝量が1m㏜と決められているのに、いまだ原子力災害緊急事態下のこの国では年間20m㏜に引き上げられたまま。人間が20倍放射能に強くなったわけではないのに、そこに帰還せよと言っている。溶け落ちた炉心は、そのままの状態で遮蔽し、半減期で放射線量が下がるのを待つのが一番いい。取り出す作業で労働者が被曝してしまうし、取り出した炉心を持っていく場所など、どこにもない。人々の生業や暮らしを壊した東電はいまだ刑事責任をとっていない。どうか厳正な判決がなされますように!

この地球の上で(7年目の春)(2018年3月)

 もうすぐ、福島第一原発事故から7年が経とうとしている。
 この1月には、チェルノブイリ原発事故から31年経ったウクライナを訪問したチェルノブイリ救援中部の原富男さんのお話を聞く機会があった。原発労働者の町プリピャチとチェルノブイリ原発の距離は、大熊町・双葉町と福島第一原発の距離とほぼ同じだ。そのプリピャチは住民が避難したままで、31年経っても無人の町だ。プリピャチは、核関連の町だということで、旧ソ連の中でも先駆けてスーパーや地下駐車場もある最新の町だったが、今は、すべてが草木に覆われている。
 かたや、帰還困難区域の大熊町・双葉町は避難解除計画が進められている。2021年(つまり、事故から10年)には居住を開始する予定だそうだ。除染するから大丈夫?汚染土が詰み込まれた袋(フレコンパック)は、ひたすらたまり続け、増え続けている。除染をしても、しても、除染されない山々からは放射性物質が飛来してくるだろう。その膨大な費用は、東京電力が背負いきれるものではなく、結局国民が負担することになるらしい。
 除染にかける費用で、大熊町・双葉町の人々に新しい土地や家を提供することの方が理にかなっているような気がする。放射線量は時間の経過とともに下がっていくので、100200年(年間被ばく量が1m㏜まで下がるために。どのくらいの時間がかかるのか私にはわからない)放置しておいた方がいいのではないだろうか。
 チェルノブイリ原発は、事故後コンクリートで全体を覆って「石棺」としたが、その石棺が朽ちてきて、今度はそれを覆う「シェルター」が昨年完成した。このシェルター、100年持つと言われているが、100年経ったらそれを覆うさらに巨大なシェルターが必要となるのだろうか。福島第一原発では地下水が流れ込み、汚染水がタンクに、ひたすら貯まり続けている。原発の回りの土を凍らせて壁を作り、地下水の流入を防ぐという計画は、ほぼ失敗のようだ。どうするのだろうか。
 ウクライナでは、保養が権利として認められていて、国の費用で、非汚染地域で一定期間保養することができる。保養から帰ってくると、「背が伸びた」「聞こえなかった耳が聞こえるようになった」などと、効果があるようだ。福島では、放射能が怖いということが禁句であったり、子どもが保養に行くときは内緒で行かせるというのが実情なんて悲しすぎる。もちろん、この国は保養の費用なんて出さないから、自費で参加するしかないし、保養キャンプを企画する側も、バザーをしたりカンパを募ったりして頑張るしかないのだ。
 現在までに、福島では子どもたちに193人に甲状腺がんが見つかっている。国は、これは原発事故のせいではないと言い続けている。原発事故後、配備してあった安定ヨウ素剤を服用させなかったことへの責任逃れなのかもしれない。(安定ヨウ素剤とは、原発事故時に甲状腺が放射性ヨウ素を取り込まないように、予め甲状腺に安定ヨウ素で満たしておくために飲むもの)原発から30キロ圏内には配備されているが、ありがたいことに、圏外であるにも関わらず松本市は、40歳以下の市民と市内滞留者用に、自主的に安定ヨウ素剤を配備している。
 30キロ圏外にも福島第一原発の放射性物質は飛来していった。(いまだに東信の野生キノコやコシアブラから、国の基準を超えるセシウムが検出されている。)事故が起きた時、配備してある小学校や薬局に、地震で道路が寸断されたり、渋滞などで車がたどり着けない、あるいは、小さい子どもを抱えた人が家から出られないといった事態が起こりうることは、私でさえ容易に想定できる。ならば、安定ヨウ素剤を予め配っておいて、市の危機管理課は、風向きのチェックをして放射線ブルーム(目に見えない放射線が大気に乗って流れていく)の松本市への到来を予測して、防災無線で服用を呼びかけた方がいいのでは?近日中に危機管理課に行って話してこよう。日本人は海藻を食べているから大丈夫?食事からとるヨウ素は5mgだそうで、甲状腺への放射性ヨウ素を取り込みを防ぐためには70mgが必要だそうだ。地震の活動期でもあるし、次々と原発の再稼働をしようとしているのだから、十分な備えはしておいた方がいいと思う。
 先進国と呼ばれている一握りの国々が世界のエネルギーの65%を使っているという理不尽さ。7年目の311日を迎えて、エネルギー大量消費の私たちの社会や政治を見つめ直していきたい。

この地球の上で(今年の寒中)(2018年2月)

 毎年のことだけれど、この寒さの中で、物みな凍ることが一番いやだ。
 特に、お風呂場の蛇口を凍らせないように気をつけている。壊れて取り換えとなったら、お金がかかるから。でも、水をチョロチョロ出したつもりでいたのに、夜中に止まってしまい、先日は浴室に小さい灯油ストーブを持ち込んで溶かした。翌日には洗濯機用の蛇口が凍ってしまい、今度は洗面所にストーブを持ち込んで溶かした。これで洗濯ができると一安心したのも、つかの間、どうやら排水管が凍ったらしい。自動洗濯機の工程が「すすぎ」から先に進まない。バケツに排水を受けながら、何とか洗濯を済ませたけれど、毎回こんなことはやっていられない。溶けるまではコインランドリーを使うしかないかもと、近くのコインランドリーの所在を調べた。
 フェイスブックに、こんなことを書いたら、友人のお店のトイレが使えなくなったとか、家の中が-7℃で、石のように凍った牛乳や野菜を楽しんで料理しています(たぶん冷蔵庫をお持ちではないのかと)とか、書き込みがあった。断熱がしっかりした家だったら、こんな苦労はないのにと思ってしまうけれど、どうにもならないことを思ってみても仕方ない。前に住んでいた家(戦前に建てられたもので隙間だらけだった。)は蛇口が一つしかなく、そこだけ気をつければよかった。街中なのでお風呂は近くの銭湯に行き、洗濯は台所の蛇口からホースでつないで使っていた。ホースの水切りにさえ気をつけていればよかった。当然凍結防止ヒーターも一か所だけで、電気代がかからなかったなぁ。何が便利か便利でないか、よくわからなくなる。
 ※後日、思い直して、排水ホースを浴室にひいて難なく洗濯完了!排水口は、凍ったというより、ゴミが詰まっている可能性が高いみたい。ドラム式洗濯機は、使う水の量が少ないので、詰まりやすいとのこと。ゴミをとろうと排水溝の蓋をとろうとしたけれど開かない。この仕事は後日に回す。
 それからファンヒーターの調子が悪くなった。「換気をしろ」と警告されて、戸を開けても15分くらいしたらまた表示が出る。これも、寒い中こんなことばっかりやってられないと、新しいのを買いに行った。原因はわかっている。毎朝、ストーブのそばで娘が、洗髪した髪を乾かしているからだ。彼女が買ってくるトリートメントに含まれているシリコンが付着して故障の原因となるらしい。成分に「〇〇シロキサン」とか「〇〇メチコン」と記載されているトリートメントはシリコン配合。娘の使っているトリートメントの成分表示を見ても、あんまり字が細かくて私には読めなかったが、たぶんそう。新しいファンヒーターの部屋では、ノンシリコンのロゴナのコンデショナー以外は使用禁止を言い渡した。
 本当は電気を使わないタイプのストーブを買いたかったけれど、冬シーズンも半分過ぎたこの時期、店頭にはファンヒーターしか並んでいなかったので、しょうがない。凍結防止ヒーターといい、電気なしには生活できない。
 その電気だが、問題なしとは言えないまでも放射能を生む原発や、二酸化炭素を生む火力発電よりましな再生可能エネルギーが日本で普及しないわけが分かった。電力会社が再生エネルギーを買い取っているわけだけれど、送電施設の容量が足りないからと、九州電力が再生可能エネルギーの買い付けを中断したことがあった。送電線の容量は、すべての発電所がフル運転された場合を想定して算出されていて、再生エネ業者が接続するには送電線の増強費を負担する必要があるらしい。エネルギ-供給構造を変える政策が必要になる。欧州は再生エネの送電線網接続を義務付けていて発電量を抑制する場合は、まず石炭火力、原発、水力の出力を抑え、太陽光や風力の出力抑制は「最後の手段」だそうだ。
 電気なしには生活できなくなっている私たち。でも、その電気を作るために環境破壊がなされることを考えると、省エネしてなるべく消費は押さえたい。でも最近盛んに言われている電気自動車の普及って、二酸化炭素排出量は押さえても電気の消費を増やすということだから、実際、環境に優しいのかと???だらけである。
 さてさて寒い中、多少の困難はあるけれど、-65℃には絶対ならないので、春を楽しみに待って、日々過ごしていこうか。

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