「月経困難症でピルを20年以上飲んで卒業した体験記、っていうか私の人生」サンプル



 この本は、私が成長するにつれて直面した「生理」という大きな障害と、どのように付き合いながら生きてきたのかを語る本です。
 女という性、初潮、生理、病、薬、PMS、進学、留年、産科、婦人科、仕事、スポーツジム……などなど。一見、生理とは無関係な言葉があるように思うかもしれませんが、どれも欠かせない話です。
 そして、「月経困難症でピルを二十年以上飲んで卒業した体験記、っていうか私の人生」というタイトルの通り、ピルに関する体験をじっくりと語りたいと思っています。
 私の体験談は、ピルを知らない人には興味深く読んでいただける物かもしれない、もしかしたらピルを飲む女性の話を詳しく知りたいという人の役に立つかもしれない。そんな気持ちがこの本を書き始めたきっかけなので、何か少しでもあなたにとって、得る物があったらと思います。
 少し長い話になるかもしれませんが、最後までお付き合いしていただけたら嬉しいです。



 小児科の先生による診察のあと、私は検査を受けることになりました。レントゲン撮影をしたり、腹部エコーを受けたり……。様々な方法で調べましたが、原因はハッキリしません。その間もずっと、私のお腹は痛くて痛くてしょうがなくて、あまりに痛がっている私の様子を見た先生はこう言いました。
 入院しましょう、と。
 これほど痛み苦しんでいるのに原因不明だなんて、おかしい、何か重大な病気なのかもしれない……そんな判断があったのだと思います。私は、その場ですぐ入院の手続きをすることになりました。
 安静にしながら様子を見ることになりましたが、相変わらず原因は不明なまま、腹痛だけが続きます。
 そうして、数日が過ぎた時でした。

 私は入院中に初潮を迎えました。
 すると、あれほど辛く苦しかった腹痛がぴたっと止み、それまでの様子が嘘のようにすっかり元気を取り戻したのです。



 この時処方されたドオルトンという薬が、いわゆる避妊薬だという説明は、実はまったく受けていません。私は、それがピルであることを自分で調べて理解できていましたが、知識が無ければ、ただ「生理痛の薬」だという認識で飲んでいたでしょう。
 今思うと、あまり良い処方の説明では無かったように思いますが、まあそんな事はどうだっていいのです。

 ピルが処方された!
 ピルを飲むことができる!

 もうそれだけで、世界が輝いたかのような気分でした。
 私は苦しみながらも日々を過ごし、いつものように生理を迎えました。生理が始まったら、満を持してドオルトンを飲み始めることができます。
 飲むのは毎日同じ時間に飲むようにした方が良いとのことだったので、私は「毎日0時」にドオルトンを飲むと決めました。一番覚えやすい時間ですし、深夜ですから「どこかに出かけていて飲み忘れる」といった心配をする必要も無いと思ったのです。
 これは結果的に、非常に良いチョイスでした。万が一飲み忘れても「寝る前」と「起きた後」の二回、気付くチャンスがあるから、安定して飲み続けることができたのです。その後、私はピルを飲むのを止める日まで、0時にピルを飲み続ける生活を続けることになります。

 そう、続けることになったのです!

(中略)

「きっと、普通の人みたいに生きていくのは無理だろう」
 中学生の頃、そう思っていた私が、普通の人のように働いて収入を得られるようになったのです。まるで嘘のようで幸せな現実でした。



 それは、もうすぐ四十歳を迎えるというある日の事です。私は、ピルの新しいシートを手にしながら、ふとこんな疑問を思い浮かべます。
「そういえばピルって、いつまで飲むものなんだろう?」
 私は、生理の諸症状を軽くする為にピルを飲んでいますが、生理は死ぬまで続く訳ではありません。
 だいたい五十歳で閉経を迎え、それ以降は生理が起こらなくなります。
 しかし、その時にピルを飲み続けていたら?
 一体どうなるのか、私は知りませんでした。