内航船乗組み制度検討会                    

                          

1. 内航船乗組み制度検討委員会・第5回内航貨物船部会 開催
 3月25日に開催された国土交通省海事局の内航乗組み制度検討会・第5回内航貨物船部会では、事務局側から「内航貨物船乗組み制度見直しの基本的考え方(案)」が提示された。これは、昨年の6月に事務局から提示された船員法および船舶職員法関係の見直しに係る検討試案について、労使合意ではないがこれまでの議論を踏まえ、事務局としての考え方を改めて示したもの。そのなかで船橋航海当直については、当初「小型船の夜間の単独当直は原則として禁止する」との案を示したが、「航海当直を担当する乗組員は6級以上の海技免状所有者でなければならないこととし、航海当直の人数は現行規制を維持する。また、一定の要件のもとで、法定職員の兼務雇い入れを認める」とした修正案が示されたほか、試案を一部修正するものと試案の考え方を基本的に踏襲するものなどが示された。なお、同部会では今後、4月・5月とさらに議論を詰めて6月はじめには貨物船部会としての報告書をとりまとめ、併せて旅客船関係の課題も議論したうえ6月中に、親検討会に最終報告をしたい意向のようだ。

 今回、事務局から提示された案は「T、労働時間・定員等関係」および「U、資格制度を中心とした航行安全関係」の2部からなり、このうち「労働時間・定員等関係」では@労働時間規制A定員規制B業務繁閑船C家族船の運用の厳格化D雇入契約の届出E規制の実行性担保F規制の事後チェック──についての考え方をまとめている。
 一方、「資格制度を中心とした航行安全関係」については、@船橋航海当直A船舶技術や業務実態を踏まえた配乗基準の弾力化B配乗表に係る航行区域Cその他──などについての考え方が示された。
 これらのうち、船橋航海当直以外で検討試案が一部修正されたのは「労働時間・定員等関係」で当初、労働時間規制に関し、現行の制度そのものも存続させるが、実態に即して簡素な仕組も取り入れてはどうか。例えば、所定労働時間に想定される時間外労働時間を加味して、週当たり72時間を上限とした72時間以内で最長労働時間の考え方を取り入れ、労使合意で定めたらどうかなどの案が出された。
 これを今回、1日8時間、週平均40時間制は維持し、補償休日制も維持する考え方に修正。時間外労働について労使合意がある場合にも、時間外労働を含めた1週間当たり最大でも72時間を超える労働を禁止する。検討試案で示された最長労働時間の考え方、それに基づく年間最少休日の考え方は撤回し、定めないこととした。
 また、修正案では4週間(1か月)当たりの労働時間の上限を定め、1週間につき最大の労働時間(72時間)を遵守させるための担保規定を措置する。
 定員規制についても、労働時間規制の修正に併せて修正し、安全最少定員(相対基準、絶対基準)を規定する。併せて定員規制に抵触する場合は、ブラックリストまたはグレーリストを作成し、船員労務官による頻繁な監査を行えるようにする。各種規制の事後チェックについても、ITシステムを活用し、船員労務官の業務の効率化と重点化を行うなどチェック体制を整える。
 これら一部修正案の基本的考え方に対し、全日本海員組合側からは「労働時間規制については、労使合意の中身が問題であり、労組のない場合の合意がはたして担保できるのか。具体的な中身のチェック方法。あるいは労働時間の事後チェックの方法など、具体的に届出をどのようにチェックしていくのか」。
 「1週間の最大労働時間72時間は、補償休日を前提とすれば時間外労働は16時間となる。現状でも現行法律の趣旨が守られていないのが現実であり、長時間労働になることや、労働時間の実態が記録簿に現れてこないケース(時間外手当カット)が出てくる可能性もある。さらに船員労務官への違法の申告について本人の申告なのか、本人以外の申告による労務官の事後チェックが可能なのかどうか」などの意見が出された。
 これに対し当局側は、「労使合意は法64条の二によるが、中身の詳細について検討はしていないが、この条項を想定している。事後チェックと届出については、定員が足りているのかどうか事後チェックのみでなく、雇い入れ届出があったとき8時間が可能かどうかチェックできる。疑わしい場合はリストアップし指導し、労務官による頻繁な監査を行うことになる。最大の労働時間72時間を設けることにより、労働時間のチェックが可能である」ことなどを回答した。
 そのほか、船主委員から、「業務繁閑船については時間的猶予を考慮してもらいたい。現状の兼務実態を制度として追認してほしい。配乗表の緩和は賛成であり、航行区域に関しさらに沖縄周辺などの緩和を要望する」などの意見も出された。                       (内航海運新聞 15,3,31)

2. [公表資料]制度見直しの基本的考え方(案)
T 労働時間・定員等関係
 1. 労働時間規制…6月20日の試案(以下「試案」という。)を修正
 @ 1日8時間、基準労働時間について週平均40時間制は、維持。また、週平均40時間制を担保するための補償休日制も維持。
 A @を前提とした上で、時間外労働については、労使合意がない限り、これを認めない(ただし、現行船員法第64条1項の「臨時」の労働のうち、船舶の安全航行の確保に係るもの(=「安全臨時労働」とする)及び同条第2項の「特別」の場合は、除く。)。
 B Aの労使合意がない場合には、時間外労働は認めず、すべての海員について、いかなる1週間(連続した7日間)についても、最大でも56時間(=1日8時間×7日)を超える労働を禁止する(ただし、安全臨時労働及び法第64条2項の「特別」の場合は除く。)。
 C Aの労使合意がある場合には、すべての海員について時間外労働も含めて、いかなる1週間(連続した7日間)についても、最大でも72時間を超える労働を禁止する(安全臨時労働は除く。)。  また、通達で4週間あたり(1ヶ月あたり)の労働時間の上限を定める。
 D 安全臨時労働を含めて時間外労働については、割増手当を支払う。
 E 労働時間の定義は、試案の考え方を原則として踏襲。試案で提示された年間最少休日は、定めない。
 F 1週間につき最大の労働時間を遵守させるための担保規定を置く。
 2. 定員規制…労働時間規制の修正にあわせて試案を修正
 @ 労使合意の有無に拘わらず、1日8時間、週平均40時間を前提とした「標準定員」、最低限船舶の安全運航確保を要求する「安全最少定員」(相対基準、絶対基準)の両者を規定し、後者のみを強行規定とする。
 A 「標準定員」については、登録公認等による電子データの蓄積等を勘案して設定する。標準定員を割り込む乗組み体制の船舶については、その程度によって、必要に応じ、当該船舶所有者に通告した上で船員労務官の監査情報照会システムのポイントリストに掲出し、船員労務官による頻繁な監査を行う
 3. 業務繁閑船…試案の考え方を基本的に踏襲する。
 @ 2年更新制とし、実態が異なる場合は取り消す。
 A 新規指定を行うにあたっては、新たに事業場への監査等も含め厳しい審査を行う。
 B 業務繁閑船に対する特別監査時期を設定し、定期的・集中的に監査を実施。
 4. 家族船の運用の厳格化
 5. 雇入契約の届出…試案の考え方を基本的に踏襲
 @ 雇入契約については、公認制を届出制に改めるとともに、届出が受理されるまでは、出航を認めないこととする(官庁が閉庁である等のやむを得ない場合は事後届出を認める。)。
 A 届出は、形式的に法令等の違反がない限り、受理する。
 B 届出制導入までの間の措置として、登録公認、その他電子化等により、申請者の負担軽減を推進する。
 C これにあわせ、指定市町村を大幅に縮小するとともに、指定市町村に対し定期的に監査を行い、運用が不適切な市町村の指定を取り消す等の措置を講じる。
 6. 規制の実効性担保…試案の考え方を基本的に踏襲
 7. 規制の事後チェック
 @ 船員労務官の業務の効率化、重点化  申告があったときの具体的な監査手法について習得する。  監査情報照会システムの活用によるポイント制の実施、当該システムと登録データとのリンク等による船上でのチェック内容の充実強化。
 A 書類の記載方法の見直し

U 資格制度を中心とした航行安全関係
 1. 船橋航海当直…試案を修正
 @ 航海当直の人数については、現行規制を維持。
 A 航海当直を担当する乗組員は、海技免状受有者(6級〈航海〉以上)でなければならないこととし(ただし船舶職員であるか否かを問わない。以下同じ。)、複数で航海当直を行う場合は、少なくとも、そのうち1名は海技免状受有者でなければならないこととする。
 2. 船舶技術や業務実態を踏まえた配乗基準の弾力化
 甲板部、機関部等の兼務を中心として対応する。具体的には以下のとおり。(なお、スーパーエコシップ等の将来的な技術革新に対応した合理化については、今後検討。)
 @ 職員法上の法定職員の兼務  一定の要件(例えば、船舶機関規制に基づく機関区域無人化船など)を満たす内航船については、専任の機関部職員1名を除き、他の機関部職員が甲板部職員を兼務できる旨、職員法政令で認める。
 A 船員法上の雇入れ  法定職員間の兼務以外の兼務については、本来の業務に支障のない範囲で他の部の業務も行うなど航海の安全の確保に関して航海当直体制の維持に支障が生じる等の影響がないと認められる場合には、就労実態にあわせて兼務雇入れを認める。
 ※@、Aに基づく兼務の者に対する各種資格取得のための履歴のカウントは、記載された職名ごとにそれぞれ乗船期間をカウントする(ダブルカウントをする)。
 3. 配乗表に係る航行区域
 三直体制を原則とした限定近海に関する配乗表を新たに設ける。(沖縄の取扱いは別途検討。)
 4. その他
 @ 1600トン以上の内航船に係る資格レベルの緩和を図る。
 A さらに、3級以下の受験資格の大幅な要件緩和や、1. Aの円滑な実現に向け、講習受講者に対する試験免除による甲種部員の6級(航海)取得促進のための措置などを講じる。
                                           (内航海運新聞 15.3.31)

3. 配乗基準の弾力化への一環として 「兼務」の考え方も提示される
 既報のように、3月25日に開催された内航乗組み制度検討会の第5回内航貨物船部会(座長・野川 忍東京学芸大学教授)では、当局側から「内航貨物船乗組み制度見直しの基本的考え方(案)」が提示された。
 そのなかで、「資格制度を中心とした航行安全関係」の検討事項の一つとして、船舶技術や業務実態を踏まえた配乗基準の弾力化を図るうえで、「兼務」の考え方などが示された。併せて、船橋航海当直および配乗表に係る航行区域に関する案も示された。
 このうち兼務に関する案は(スーパーエコシップなどの将来的な技術革新に対応した合理化については、今後検討するとしたうえで)、現在の内航船においては基本的に、近代化が進んでいる状況などを踏まえて、甲板部、機関部など各部門ごとの兼務を中心に弾力的に対応してはどうかというもの。
 その場合、職員法上の法定職員の兼務として、一定の要件(例えば、船舶機関規則に基づく機関区無人化船、いわゆるMゼロ船など)を満たす内航船については、専任の機関部職員1名を除き、他の機関部職員が甲板部職員を兼務できるように、職員法政令で認めたらどうか。
 例えば内航船では機関長と一等機関士2名乗組みというのが配乗表で定められているが、そのうち機関長は専任として残したまま、一等機関士が上に上がって航海士も兼ねるというケースも、一定の船舶については認めるようにしてはどうかという考え方。
 また、職員と部員の間、あるいは機関部と甲板部など各部門での部員相互の兼務など、法定職員間の兼務以外についても、本来の業務に支障のない範囲で他の部の業務も行うなど、航海の安全の確保に関して航海当直体制の維持に支障が生じるなどの影響がないと認められる場合には、就労実態に合わせて兼務雇入れを認めるという案も示された。
 これは例えば、機関部の職員が甲板部に上がって、出入港時の荷役作業あるいは他の諸作業に甲板部員として参加する、 といったようなことも一定の船舶に関し一定の要件のもとで認めたらどうかということ。
 そしてこれらに基づく兼務の者に対する各種資格取得のための履歴のカウントの仕方は、例えば甲板・機関の兼務の職員、あるいは部員として1年間船に乗組んだ場合は、記載された職名ごとに甲板の履歴としても1年、機関の履歴としても1年と、それぞれ乗船機関をダブルカウントするようにしたらどうかという考え方。
 これらに関して当日、労働者側からは「スーパーエコシップなど今後出てくる技術的に進んだ船については、兼務を考えていくというのは1つの方策として考えられないこともない。しかし、現在の内航船で兼務を直ちに認めるというのは、なかなか難しい問題があるのではないか」という意見が出された。
 一方、使用者側からは、「現在でも技術革新の進んだ船舶では、例えば機関部の職員がブリッジで船橋当直の補助をするというのは十分に可能なのではないか。今後の技術革新をより促進していくという観点からも、今回の見直しのなかで、この兼務制度を導入するのは非常に意味があるし、よいことではないのか」という肯定的な意見も出された。
 これを受けて座長からは、「兼務については、それができる要件が今回示された案では必ずしも明らかではない。兼務についてはどのような船舶に導入できるのかなどをもう少し整理して、具体例をもって議論すると理解しやすいのではないか」などの見解も示された。
 そのほか、他の検討事項のうち船橋航海当直に関しては、当初の試案では小型船の夜間の単独当直は原則として禁止するという案などを提示していた。しかしその後、部会で議論を重ねた結果、現実問題としてはなかなか難しいということなどもあって、航海当直の人数については、現行規制を維持するとして、試案を修正した。
 ただし、航行の安全の向上を図るということで、航海当直をする乗組員は、海技免状受有者(6級〈航海〉以上)でなければならないこととし(この場合、船舶職員であるか否かを問わない)、複数で航海当直を行う場合は、全てが海技免状受有者ということではなく、このうち1名が海技免状受有者であればよいというもの。
 さらに配乗表に係る航行区域に関する案に関しては、現在、沿海を越えた場合、すぐに近海区域の配乗となっている。そのため、近海であれば2名から4名というように一気にグレードが上がってしまうことから、現在は南方直航・北方直航など20条特例で特例的に対応しているが、船舶安全法の安全基準で限定近海区域というのは制度化されているので、そうしたものも参考にしながら配乗表についても、3直体制を原則とした限定近海に関する配乗表を新たに設けてはどうかという考え方を示した。
 その場合、沖縄の取扱いについても考慮しておく必要があるが、これについては関係者の意見を踏まえながら別途検討していきたいとしている。                     
                                             (内航海運新聞 15,4,7)

4. 内航船乗組み制度検討会
         下旬にも第7回会合 見直し案で意見交換へ  国交省

 国土交通省は今月下旬にも、内航船乗り組み制度検討会の第7回内航貨物船部会(座長=野川忍・東京学芸大学教授)を開催する見込み。3月25日に事務局が公表した制度見直しの基本的考え方の案を基に、4月25日開催の第6回会合に続きメンバー間で意見交換する予定。
 事務局が提示している見直し案では、船舶職員法関連で、限定近海の配乗表(沖縄航路は別途検討)の新設、航海当直は海技免状受有者(6級〈航海〉以上)、一定要件を満たす内航船について専任の機関部職員1人を除き他の機関部職員が甲板部職員を兼務させることなどが盛り込まれたほか、船員法関連では定員規制として、「標準定員」「安全最少定員」を規定。労働時間については1日8時間週平均40時間制を維持することなどとされている。
 同部会では最終報告を5−6月に取りまとめる予定。6月中には本検討会の最終報告を行う。
                                              (日本海事新聞 15,5,15)

5. 『内航貨物船乗組み制度の見直し』中間報告
平成15年5月27日   内航船乗組み制度検討会・内航貨物船部会

 平成14年6月20日の第1回内航貨物船部会以降、7回にわたって審議してきたところ、これまでの審議結果を次のとおり中間報告として取りまとめた。
 なお、これまでの審議において、意見の一致を見ていない事項については、今後更に検討を行い、結論を得ることとする。
1 背景等
(1)我が国経済・国民生活を支える産業基礎物資の国内輸送の大宗を担う内航海運は、エネルギー効率が高く地球環境の点で優れているばかりか、輸送効率が高く物流効率化の観点でも優れているが、近年、産業構造・輸送環境の変化に対応して輸送コストの削減が強く要請されており、厳しい経営環境にある。
(2)近年の船舶設備機器の進歩、更にTSLの事業化、次世代内航船の研究開発が行われており、今後とも船舶運航の高速化、高度化が進展することが予想される。
(3)内航船員数は、減少の一途をたどっており、過去10年間で4割弱の減少となっている。また、その年齢構成もいわゆる逆ピラミッド型で船員の高齢化が顕著となっており、若年船員を確保し将来にわたって安定した労働力を確保することが重要な課題となっている。
(4)なお、船員の労働時間に関する国際的な枠組みも視野に入れる必要があり、国際労働機関(ILO)においては、船員の労働時間について、最長労働時間(24時間につき14時間以内及び7日間につき72時間以内)または最短休息時間(24時間につき10時間以上及び7日間につき77時間以上)のいずれかによること等を内容とする「船員の労働時間及び船舶の定員に関する条約」が昨年発効し、EUでは当該条約に基づくPSCも行われることになっている。
(5)このように内航を取り巻く状況が変化していることから、これに的確に対応し、内航海運の持続的発展と活性化を図るため、内航船の乗組み制度の見直しが求められている。このため、次世代内航海運ビジョンを踏まえ、安全運航を確保することを大前提としつつ、内航海運の公正かつ適正な事業競争環境を形成し、内航船員の適正な労働環境及び労働条件が確保されるとともに、機関部等の技術革新の進展等を踏まえ、効率的な船舶職員の配乗体制の再構築が図られるよう、実態を充分に踏まえて内航船乗組み制度の検討を行い、結論の得られたものから措置していくこととした。
2 検討を始めるにあたっての 基本的考え方
 船員の乗組み体制は、船員法における労働時間規制を満たす定員や航海の安全の確保のために必要な員数、船舶職員法における船舶職員配乗基準等を考慮して定められている。
 そのため、これらの規制については、船舶の航行の安全の確保を基本とし、次の方向で一体的かつ総合的に見直しを行う。
 なお、船員法、船舶職員法等に基づく内航船乗組み制度の見直しを行うことに伴い、外航その他の分野に係る乗組み制度についても見直しの必要が生ずる場合は、本検討会とは別に、更に検討が必要であることは言うまでもない。
(1)規制の実効性の確保に十分留意しつつ、技術革新の進展や社会経済情勢の変化に適切に対応し、可能な範囲内で規制内容の合理化・弾力化を図る。
(2)労働と生活の場が同一である特殊な労働実態を充分に踏まえて、航海及び船内の安全を確保することはもとより、適正な労働環境を確保する。
(3)機関部等の技術革新の進展等を踏まえ、効率的な船舶職員の配乗体制の再構築を図る。
3 検討概要
 平成14年4月19日、内航船乗組み制度検討会を設置し、同年6月20日の第1回内航貨物船部会において、事務局より「内航貨物船乗組み制度(船員法関係)の問題と見直しのための検討試案(その概要は別紙のとおり)」と、「内航乗組み制度(船舶職員法関係)の見直しについて」を提示し、議論を進めてきたところである。
(1)まず、議論の進め方として、船内の就労実態について、再度検証した上で議論を深めるべきである、法制度の見直しに当たっては、なぜ現行法が守られないのか、どのような運用実態にあるのか等について関係者間で共通認識を持った上で行うべきである等の意見があった。
(2)労働時間については、内航貨物船の中には長時間労働の実態が見られ、その是正が必要であるとの認識が示される一方、労使合意による最長労働時間及びこれに基づく定員算出の制度の導入に対しては最長労働時間の常態化のおそれがある等の意見が出された。また、定員関係の規制の見直しに当たっては、安全の確保について十分な検討が必要である旨の意見があった。
(3)航海当直体制については、航海当直を行う者は原則として海技資格受有者とすべきであるとの意見が示される一方、船橋航海当直に単独で就くことができる場合を従来以上に限定することは現在の内航貨物船の運航実態にそぐわないとの意見もあった。
(4)機関部船舶職員の配乗基準については、機関関係機器の信頼性の向上、海上交通システムにおけるIT化の進展に伴った陸上・船外からの支援体制が整備されつつある現状に鑑み、機関関係業務の実態に即した見直しが必要との意見があった。
(5)これらを含む昨今の内航貨物船の運航実態を踏まえて、雇入職名について兼務を認めるべきとの考え方に対しては、単なる実態の追認となる兼務は認めるべきでないという意見や、機関区域無人化船等であれば、さらには、労働時間規制が遵守されれば兼務を認めるべき等の意見があった。
(6)さらに、航行区域については、漁船の輻輳する沿海より外側の区域を航行した方が安全であること、船舶の大型化・自動化・高速化が進展していること等から沿海区域拡張の観点での見直しは必要である、沿海区域における海技資格無受有者の航海当直問題に対処すべきである等の意見があった。
4 実態調査等
 内航貨物船の業務実態を把握し当部会での議論を深めるため、昨年10月に当部会として「船内就労状況実態調査」を実施した。その分析結果の概要は次のとおりである。また、全日本海員組合は、昨年12月独自にアンケート調査を実施し、恒常的なオーバーワークとなっている、現場は体力の限界である等の調査結果を得たとの報告が行われた。
(1)1日あたりの船員(船長を除く。)の延労働時間は、8時間以下の日が3日間で延べ688人日(32%)にすぎず、8時間を超える長時間労働の日が延べ1440人日(68%)と相当の部分を占めており、14時間を超える日も延べ92人日(4%)もあった。
(2)甲板部乗組員の1日の業務は、その大半が甲板業務に当てられている。
(3)機関部乗組員の1日の業務は、機関出力が小さいほど機関以外の業務に当てられる割合が増えており、750KW以下では1日の業務の半数近く(44%)が機関以外の業務に当てられている。
(4)使用燃料油別の機関部乗組員の業務については、全体的にはC重油を使用している船舶は整備作業に当てられる時間が長く、A重油を使用している船舶は機関監査作業に当てられる時間が長い。総労働時間については、顕著な差は見られない。
(5)なお、海難審判庁裁決によれば、海技免状非受有者が係わった海難の原因としては、「服務に対する指揮、監督の不適切」、「報告・引継の不適切」が相当部分を占めていることが示された。
5 内航貨物船乗組み制度見直しの基本的考え方(案)
 
上述の検討内容及び船内就労状況実態調査の結果を踏まえ、平成15年3月25日の第5回内航貨物船部会において、事務局より上記「内航貨物船乗組み制度(船員法関係)の問題と見直しのための検討試案」等を一部修正した「内航貨物船乗組み制度見直しの基本的考え方(案)」が示され、これに基づいて議論が行われた。
6 見直しの概要
 以上のような経過を踏まえて、多くの船舶にみられる船員の恒常的な長時間労働の実態を是正し、定員のあり方も含めて規制内容の合理化、弾力化を図る一方、船橋航海当直体制の強化等により、航海の安全性等を向上させるとともに、機関部の技術革新の進展等を踏まえ、一定の条件の下に兼務労働を認める等効率的な配乗体制の再構築を図ることを基本として、次の通り内航貨物船乗組み制度の見直しを行うこととする。
(1)労働時間・定員等関係
 @ 労働時間規制
 ア 1日8時間、基準労働時間について週平均40時間制は、維持。また、週平均40時間制を担保するための補償休日制も維持。
 イ アを前提とした上で、時間外労働については、労使合意がない限り、これを認めない(ただし、現行船員法第64条1項の「臨時」の労働のうち、船舶の安全航行の確保に係るもの(=「安全臨時労働」とする)及び同条第2項の「特別」の場合は、除く。)。
 ウ イの労使合意がない場合には、時間外労働は認めず、すべての海員について、いかなる1週間(連続した7日間)についても、最大でも56時間(=1日8時間×7日)を超える労働を禁止する(ただし、安全臨時労働及び法第64条2項の「特別」の場合は除く。)。
 エ イの労使合意がある場合には、すべての海員について時間外労働も含めて、いかなる1週間(連続した7日間)についても、最大でも72時間(1日あたり14時間)を超える労働を禁止する(安全臨時労働は除く。)。また、この場合、1日あたり(1ヶ月あたり)の労働時間の上限を定める。
 なお、通達で4週間あたり(1ヶ月あたり)の労働時間の上限を定める。
 オ 安全臨時労働を含めて時間外労働については、割増手当を支払う。
 カ 労働時間の定義については、航海当直、保守管理、荷役作業、事務作業、食料の調達供給、清掃等を列挙しその明確化を図る。
 キ 1週間につき最大の労働時間を遵守させるための担保規定を置く。
 A 定員規制
 ア 労使合意の有無にかかわらず、1日8時間、週平均40時間を前提とした「標準定員」(相対基準)、最低限船舶の安全運航を要求する「安全最少定員」(絶対基準)の両者を規定し、後者のみを強行規定とする。
 イ 「標準定員」については、登録公認等による電子データの蓄積等を勘案して設定する。標準定員を割り込む乗組み体制の船舶については、その程度によって、必要に応じ、当該船舶所有者に通告した上でいわゆるブラックリストまたはグレーリストに掲出し、船員労務官による頻繁な監査を行う。
 B 業務繁閑船
 ア 2年更新制とし、実態が異なる場合は取り消す。
 イ 新規指定を行うにあたっては、新たに事業場への監査等も含め厳しい審査を行う。
 ウ 業務繁閑船に対する特別監査時期を設定し、定期的・集中的に監査を実施。
 C 家族船の運用の厳格化
 D 雇入契約の届出
 ア 雇入契約については、公認制を届出制に改めるとともに、届出が受理されるまでは、出航を認めないこととする(官庁が閉庁である等のやむを得ない場合は事後届出を認める。)。
 イ 届出は、形式的に法令等の違反がない限り、受理する。
 ウ 届出制導入までの間の措置として、登録公認、その他電子化等により、申請者の負担軽減を推進する。
 エ これにあわせ、指定市町村を大幅に縮小するとともに、指定市町村に対し定期的に監査を行い、運用が不適切な市町村の指定を取り消す等の措置を講じる。
 E 船員労務官による段階的是正措置の導入
 次のように船員労務官による段階的な是正措置の導入を行う。
  i)文書による指導
  ii)指導に従わない場合には、文書による勧告
 iii)勧告に従わない場合には、船舶所有者等の氏名の公表
 iv)更に是正されない場合には、是正命令の発出
  v)是正命令に従わない場合には、罰則の適用
 さらに、航行停止命令についても、最低限の人員が乗組んでいないとき等は即時に発動できるように要件を定める。
 F 規制の事後チェック
 ア 船員労務官の業務の効率化、重点化  船員法等の違反事項について、第三者からの申告等を含む申告等を受けた場合に、違反事実の是正と防止に向けて所要の監督が行えるよう申告制度の運用方法の充実強化を図るとともに、具体的な監査手法について習得する。また、監査情報照会システムの活用によるブラックリスト方式の実施、当該システムと登録公認データとのリンク等による船上でのチェック内容の充実強化を図る。
 イ 書類の記載方法の見直し
 G 船員災害防止対策優良モデル事業者認定制度の創設
 H 労働条件の明示の徹底
 船員が自分の休日・休暇、労働時間、賃金等の労働条件について、明確に認識して就労することを徹底するため、船舶所有者による労働条件の明示のあり方等について、運用方法の充実強化を図る。
 I 船内供食のあり方
 船内供食のあり方は、労働環境の改善を図っていく上での重要な課題の一つであり、今後別途検討していくこととする。
(2)資格制度を中心とした航行安全関係
 @ 船橋航海当直
 ア 航海当直の人数については、現行規制を維持。
 イ 航海当直を担当する乗組員は、海技免状受有者(6級〈航海〉以上)でなければならないこととし(ただし船舶職員であるか否かを問わない。以下同じ。)、複数で航海当直を行う場合は、少なくとも、そのうち1名は海技免状受有者でなければならないこととする。
 A 船舶技術や業務実態を踏まえた配乗基準の弾力化
 甲板部、機関部等の兼務を中心として対応する。具体的には以下のとおり。(なお、スーパーエコシップ等の将来的な技術革新に対応した合理化については、今後検討。)
 ア 船員法上の雇入れ
 本来の業務に支障のない範囲で他の部の業務も行うなど航海の安全の確保に関して航海当直体制の維持に支障が生じる等の影響がないと認められる場合には、就労実態にあわせて部門間での兼務雇入れを認めるとする事務局案が提示されている。
 イ 船舶職員法上の法定職員の兼務
 アに掲げる要件のほか、一定の要件(例えば、船舶機関規則に基づく機関区域無人化船など)を満たす内航船については、専任の機関部法定職員1名を除き、他の機関部法定職員が甲板部法定職員(船長を除く。)を兼務することができることとする。この一定の要件については、@機関区域無人化船又は警報装置付きのA重油専焼船であること、A簡易衝突予防装置付きレーダー、GPSなどの航行援助装置等を有する船舶であること、B機関部の専任の職員がいることとするとの事務局案が示されている。
 なお、兼務の要件等について、内航タンカー近代化、内航貨物船近代化等のこれまでの研究結果などを踏まえた近代化基準とするべきという意見や、設備に関する要件を満たした船舶だけでなく、例えば、短距離の航海に従事する船舶や船上作業の軽減に資する陸上支援体制が確立している船舶なども兼務可能と思われるのでこうした船舶も含めるべきとの意見などがあり、また、船長・機関長の兼務は認めないとの意見がある一方、船舶機関や航海設備の技術革新を考慮して、機関部専任職員がゼロのケースも検討すべきであるとの意見もあった。
 最終報告までに兼務の要件の内容等についての結論を得るよう引き続き検討する。
 ※ア、イに基づく兼務の者に対する各種資格取得のための履歴のカウントは、記載された職名ごとにそれぞれ乗船期間をカウントする(ダブルカウントをする)。
 B 配乗表に係る航行区域
 三直体制を原則とした限定近海に関する配乗表を新たに設ける(沖縄の取扱いは別途検討。)との事務局案が示されている。
 なお、この案については、資格レベルの緩和については概ね関係者の合意が得られたが、法定職員の人数については、これまでどおり近海区域の配乗基準と同数とするべきである等の意見がある一方で、配乗基準上は三直体制を前提とした人数とした上で、本報告案に基づく新たな労働時間規制や航海当直基準(海技免状受有者による船橋航海当直を含む。)の遵守徹底により安全確保を図っていくべきである等の意見があり、また、沖縄関係については、先島圏域までを含めて限定近海配乗とすべきであるとの意見もあった。こうした点について、最終報告までに結論を得るよう引き続き検討する。
 C その他
 ア 1600トン以上の内航船に係る資格レベルの緩和を図る。
 イ さらに、3級以下の受験資格の大幅な要件緩和や、@イの円滑な実現に向け、講習受講者に対する試験免除による甲種部員の6級(航海)取得促進のための措置などを講じる。
トン 近 海 限定近海 沿 海 平 水
船長 一航 二航 三航 船長 一航 二航 船長 一航 船長 一航
1 級 3 級 4 級 5 級 3 級 4 級 5 級 3 級 4 級 4 級 5 級
5000 未満 3 級 4 級 5 級 5 級 4 級 5 級 6 級 3 → 4 →
4 級 5 級
1600 未満 3 級 4 級 5 級 4 級 5 級 5 級
500 未満 4 級 5 級 4 級 5 級 5 級 6 級
200 未満 5 級 5 級 6 級 6 級
注  1:網掛け部は、資格要件が緩和される部分
   2:航海当直者は海技免状受有者となるため、 例えば沿海499トン型であっても、三直が必要な船舶は、必要な技免状受有者の員数を別途確保しなければならないこととなる。

kw 近 海 限定近海 沿 海 平 水
機長 一機 二機 三機 機長 一機 二機 機長 一機 機長 一機
1 級 3 級 4 級 5 級 (3 級) (4 級) (5 級) (3 級) (4 級) (4 級) (5 級)
6000 未満 3 級 4 級 5 級 5 級 (4 級) (5 級) (6 級) 3 → 4 →    
(4 級) (5 級)
3000 未満 3 級 4 級 5 級 (4 級) (5 級) 5 級
1500 未満 4 級 5 級 (4 級) (5 級) (5 級) (6 級)
750 未満 5 級 5 級 6 級 6 級
注 1:網掛け部は、資格要件が緩和される部分
   2:( )内は、一定の船舶〈例えば、船舶機関規制に基づく機関区域無人化船など〉については、専任の職員1名を除き、甲板部職員と兼務可能となる部分。
                                                (内航海運新聞 15,6,2)

6. 中間報告 まとまる  第7回 内航貨物船部会
5月27日第7回内航貨物船部会が国交省で開かれ、同部会の「中間報告」が取りまとめられた。
■組合の基本方針は、@労働条件に関する内容を明示した労働契約を義務付けるA違反防止と是正のため内航船を監督するための体制と通報システム(内航版PSC)を確立するB航海当直者は職員で5級以上の海免受有者とするC兼務については安全をベースに引き続き検討するD限定近海の配乗表は近海区域と同様とするE内航船の供食体制を確立するF法改正論議は、船員中央労働委員会などでの審議が必要である。など、労働条件と、航行安全をベースに検討する意見書を提示し、この観点から論議を行ってきた。(詳細は船員しんぶん5月15日号外参照)
■中間報告は、6月中旬に開催される「内航船乗組み制度検討会」に報告されるが、4月25日提示された骨子案を一部修正・追加した内容となっていて、その概要は次の通り。(骨子案については船員しんぶん5月15日号外参照)
▼労働時間関係について、最長労働時間72時間以内に設定する背景として、国際的な枠組み(ILO条約の発効・EUにおけるPSC対象)も考慮し、国内法の整備が必要なことを明示した。
 船員法、船舶職員法に基づく制度の見直しを行うことに伴い外航・他の分野に制度の見直しの必要が生じる場合は、別途検討が必要であること。
▼事後チェックについて、船員労務官の効率化・重点化とともに、船員法等の違反事項について、第三者からの申告等を受けた場合には、違反事実の是正と防止に向けて所要の監督が行えるような申告制度の運用方法の充実強化を図る。
▼船員が休日・休暇、労働時間賃金等の労働条件を明確に認識して就労することの徹底を図るため、船舶所有者による労働条件の明示のあり方等、運用の充実強化を図る。
▼船内供食については、 労働環境の改善を図る上で重要な課題であり、今後別途検討していくこととする。
▼兼務については、一定要件のもとで行える(4月25日提案の要件)ものとするが、これまでの組合意見や、使用者意見などを併記し、兼務の内容等について引き続き検討する。また、配乗表に係わる航行区域については、限定近海を含め、資格レベルについて概ね合意が得られているが、配乗基準などについては労使意見の併記をおこない、最終報告までに結論を得るよう引き続き検討する。

■組合は、これまでの組合基準方針に基づく論点が概ね盛り込まれていること、特に、法違反の防止と是正のための、通告システムの構築(内航版PSCシステム)が、事後チェック制度を「申告制度の運用方法の充実強化を図る」と整理されたこと、兼務および配乗表関係については労使の意見が食い違いを見せていることから、最終報告までの検討課題としたことなどを踏まえ
@内航船の実態は、昨年12月に組合が行った実態調査にも現れている通り、内航現場は荒廃の極みといえる。適正な労働環境の構築が必要であり、都度、検証しながら進めていくべきだ。
Aこれまで何故現行法が守られていないのか、事後チェックについては重要であり、チェックがきちっとできる体制作りが必要である。兼務の要件は、テーブル上論議だけでなく、実態を踏まえた上で検証・検討すべきである。
B兼務は、内航版と相違はあるが、外航近代化船で経験してきている。官労使でシステム作りを行い、船舶の設備、陸上支援体制、乗組員の訓練など関係者間で都度、実験・実証を行ってきた経緯がある。経験からも船舶の航行安全が大前提である。今後も慎重に検討して行くべきだ。
C労働条件の明示について、具体的な制度を作ることが重要で、そこに働く船員が自分の労働条件が分かることは勿論、船舶所有者の条件明示と、労働契約システムの構築が重要だ。これからの検討にあたり、適正な運用ができるシステムを作り上げることが必要だ。との意見を述べた。
■以上の中間報告(案)の審議を行い、座長から、今回の議論を踏まえ最終報告をまとめていくことが提案され、当部会の「中間報告」を「内航船乗組み制度検討会」に報告することが了承された。
■なお、組合が求めていた船橋航海当直者を5級以上の職員とする件については、官労使勉強会で6級所有者とすることに対する船主側の強い反対があった。組合として、有資格者による当直体制が中間報告に盛り込まれたこと、小型船における部員当直の実情も考慮し、一歩前進を確保したことなどから、今後も引き続き時間をかけて取り組んでいくことがベターであるとの判断で合意した。他の項目については、組合方針が実現されるよう今後の審議に臨みたい。
■内航船乗組み制度検討会は、6月中旬頃開催される予定で、検討会開催後、旅客船部会の立ち上げを予定していることが事務局から報告された。
                                    (総合政策部) (船員しんぶん 15,6,5)

7. 国交省の第2回乗組み制度検討会 中間報告を原案通り了承
                     法改正の検討会設置も諮る
 国土交通省海事局は6月17日、第2回内航船乗組み制度検討会を開催し、内航貨物船部会がこのほどとりまとめた「内航貨物船乗組み制度の見直しについて(中間報告)」の報告が行われ、原案どおりこれが了承された。併せて、事務局側からは法改正のための検討会の立ち上げの必要性、および旅客船部会の立ち上げについての考え方なども示された。
 今回の検討会では「中間報告」が原案どおり了承されるとともに、兼務や配乗表に係る航行区域に関する未結論事項などについては、今後関係者間で詰めを行いながら内航貨物船部会を開催して引き続き検討を行い、最終報告までに結論を得ることも確認された。
 法改正の検討会の立ち上げに関しては、船員法関係については船員中央労働委員会での諮問などの手続きを行い、全体的には次期通常国会に改正案を提出できるよう作業を進めていく考えであることなどが示された。
 また、旅客船部会についてはその設置が取り決められ、今月中に第1回目を開催し合わせて2〜3回部会を開き、旅客船に係る問題点などを検討することとなった。          (日本海事新聞 15,6,23)

8. 内航乗組み制度検討会 第1回旅客船部会資料 国交省
 内航乗り組み制度検討会の第1回旅客船部会がこのほど開催され、旅客船の現状、規制見直しに関する業界関係者との意見交換を行った。貨物船部会がすでにまとめた中間報告を踏まえ旅客船に適用した場合の問題点を挙げたほか、業界からは一定航路を短時間で繰り返し運航し日帰り船員もいるため雇い入れ契約の簡便化、限定沿海に対応した配乗表の新設などの要望が出された。質問が多岐にわたっており、今後問題整理、労使関係者間の勉強会開催などを行い、7月の第2回会合では見直しに関する基本的考え方の検討を行う。第1回会合で出された資料の概要は次の通り。
貨物船部会中間報告概要
(1)労働時間・定員関係
 @労働時間規制
 ・1日8時間、基準労働時間について週平均40時間制は、維持。また、週平均40時間制を担保するための補償休日制も維持。
 ・時間外労働については、労使合意がない限り、これを認めない。
 ・労使合意がない場合には、時間外労働は認めず、すべての海員について、いかなる連続した7日間についても、最大でも56時間を超える労働を禁止する。
 ・労使合意がある場合には、すべての海員について時間外労働も含めて、いかなる連続した7日間についても、最大でも72時間を超える労働を禁止する(安全臨時労働は除く)。また、この場合、1日当たりの最大労働時間は航海当直基準に準じて14時間とする。なお、通達で4週間当たりの労働時間の上限を定める。
 ・安全臨時労働を含めて時間外労働については、割増手当を支払う。
 ・労働時間の定義については、航海当直、保守管理、荷役作業、事務作業、食料の調達供給、清掃などを列挙しその明確化を図る。
 ・1週間につき最大の労働時間を順守させるための担保規定を置く。
 A定員規制
 ・労使合意の有無にかかわらず、1日8時間、週平均40時間を前提とした「標準定員」(相対基準)、最低限船舶の安全運航確保を要求する「安全最少定員」(絶対基準)の両者を規定し、後者のみを強行規定とする。
 ・「標準定員」については、登録公認などによる電子データの蓄積などを勘案して設定する。標準定員を割り込む乗り組み体制の船舶については、その程度によって、必要に応じ、当該船舶所有者に通告した上でいわゆるブラックリストまたはグレーリストに掲出し、船員労務官による頻繁な監査を行う。
 B業務繁閑船
 ・2年更新制とし、実態が異なる場合は取り消す。
 ・新規指定を行うにあたっては、新たに事業場への監査なども含め厳しい審査を行う。
 ・業務繁閑船に対する特別監査時期を設定し、定期的・集中的に監査を実施。
 C家族船の運用の厳格化
 D雇い入れ契約の届け出
 ・雇い入れ契約については、公認制を届け出制にあらためるとともに、届け出が受理されるまでは、出航を認めないこととする。
 ・届け出は、形式的に法令などの違反がない限り、受理する。
 ・届け出制導入までの間の措置として、登録公認、その他電子化などにより、申請者の負担軽減を推進する。
 ・これにあわせ、指定市町村を大幅に縮小するとともに、指定市町村に対し定期的に監査を行い、運用が不適切な市町村の指定を取り消すなどの措置を講じる。
 E船員労務官による段階的是正措置の導入
 F規制の事後チェック
 ・船員労務官の業務の効率化・重点化
 船員法などの違反事項について、申告などを受けた場合に、違反事実の是正と防止に向け所要の監督を行うことができるよう、申告制度の運用方法の充実強化を図るとともに、具体的な監査手法について習得する。また、監査情報照会システムの活用によるブラックリスト方式の実施、当該システムと登録公認データとのリンクなどによる船上でのチェック内容の充実強化を図る。
 ・書類の記載方法の見直し
 G船員災害防止対策優良モデル事業者認定制度の創設
 H労働条件の明示の徹底
 船員が自分の休日・休暇、労働時間、賃金などの労働条件について、明確に認識して就労することを徹底するため、船舶所有者による労働条件の明示のあり方などについて、運用方法の充実強化を図る。
 I船内供食のあり方
 船内供食のあり方は、労働環境の改善を図っていく上での重要な課題の一つであり、今後別途検討していくこととする。

(2)資格制度を中心とした航行安全関係
 @船橋航海当直
 ・航海当直の人数については、現行規制を維持。
 ・航海当直を担当する乗組員は、海技免状受有者(6級〈航海〉以上)でなければならないこととし(船舶職員であるか否かは問わない)、複数で航海当直を行う場合は、少なくとも、そのうち1人は海技免状受有者でなければならないこととする。
 A船舶技術や業務実態を踏まえた配乗基準の弾力化
 ・船員法上の雇い入れ  本来の業務に支障のない範囲で他の部の業務も行うなど航海の安全の確保に関して航海当直体制の維持に支障が生じるなどの影響がないと認められる場合には、就労実態にあわせて部門間での兼務雇い入れを認めるとする事務局案が示されている。
 ・船舶職員法上の法定職員の兼務
 一定の要件(例えば、船舶機関規則に基づく機関区域無人化船など)を満たす内航船については、専任の機関部法定職員1人を除き、他の機関部法定職員が甲板部法定職員(船長を除く)を兼務することができることとする。この一定の要件については、機関区域無人化船または警報装置付きのA重油専焼船であること、簡易衝突予防装置付きレーダー・GPSなどの航行援助装置などを有する船舶であること、機関部の専任の職員がいることとするとの事務局案が示されている(兼務の者に対する各種資格取得のための履歴カウントは、記載された職名ごとにそれぞれ乗船期間をカウントする)。
 B配乗表にかかる航行区域
 三直体制を原則とした限定近海に相当する航行区域にかかる配乗表を新たに設ける(沖縄関係の取り扱いについては別途検討)との事務局案が示されている。
 Cその他
 ・1600トン以上の内航船にかかる資格レベルの緩和を図る。
 ・さらに、3級以下の受験資格の大幅な要件緩和や、講習受講者に対する試験免除による甲種部員の6級(航海)取得促進のため措置などを講じる。

旅客船の乗り組み制度にかかる主な論点
(1)現状
 ・旅客船については、長距離カーフェリーから、高速船や港内・湖川の遊覧船に至るまで、その運航形態や使用船舶は多種多様。
 ・なかでも、定められた航路を短時間で繰り返し運航するような船舶が多く、いわゆる日帰り船員なども存在する。
 ・運航管理体制については、事業法規の面からも必要な安全規制が講じられている。
(2)考えられる論点
 @貨物船部会の中間報告について
 ・旅客船の特性を踏まえた上で、今回の貨物船部会の中間報告で示された見直し内容を旅客船に適用した場合に何か問題点があるかどうか。
 A旅客船の実態を踏まえた配乗基準について
 ・ジェットフォイルや高性能エンジンを用いる高速船や交通艇など、航行中での機関室内での点検・整備をほとんど行わず、帰港後に陸上支援を受けつつ必要な整備を行うものも多い。
 ・ジェットフォイルやホバークラフトなど特殊な構造の船舶については、機関故障時洋上での対応は困難。
 ・こうした船舶での機関部職員の業務実態や陸上での支援体制を踏まえ、合理的な配乗基準となるよう必要な見直しを行う必要があるのではないか。
(3)短時間の航海を行う旅客船に対応した配乗基準について
 ・旅客船については、内航貨物船と異なり、沿海区域を航行する船舶であっても、定められた航路で短時間の航海を繰り返すものが大半。
 ・船舶安全法では、限定沿海という制度を設け、沿海区域を航行する船舶のうち短時間の航海を行う船舶に対応した基準を設定。
 ・こうした沿海区域を航行する船舶のうち短時間の航海を繰り返し行うものに対応するため、適切な配乗基準を設定する必要があるのではないか。                   (日本海事新聞 15,7,7)

9. プッシャー・バージ規制 船員法関連見直し
     15年の経過措置を設定 国交省

 国土交通省はこのほど、プッシャー・バージに関する船員法関連の安全規制の見直しについて地方運輸局に通達を行った。船舶安全法関連は省令改正となるが、船員法関連の見直しは通達で実施する。適用開始時期は現在内航船全般の規制見直しを進める内航船乗り組み制度検討会の検討状況を勘案して今後決定するとしたほか、経過措置として2003年8月1日(船舶安全法施行規則の施行日)以前に建造、建造に着手されたプッシャー・バージについては、今後決定する適用時期から2018年7月31日までの間、従来通りのプッシャーだけを船員法などの適用対象とする。
 今回の見直しは、これまで堅固に結合したプッシャー・バージ以外はプッシャーだけが船員法など海事関係法令による規制対象となっていたものを、海難事故の発生状況などを踏まえ安全面への配慮からプッシャー・バージを一体としてとらえ、同法令を適用することが柱。
 1つの船舶として取り扱うプッシャー・バージは従来の対象に加え、プッシャーと、推進機関を有する他の船舶に押されて沿海区域を航行するバージ(限定沿海区域、特定短距離区域を航行するものを除く)、油ばら積みバージなど。
 船員法の適用にあたり、プッシャーとバージの総トン数の合計をその船舶の総トン数とし、その船舶の航行区域はプッシャー、バージの航行区域のうち、より限定的な方を採用する。
 適用開始時期については、内航船乗り組み制度検討会で今回の見直しも検討項目に入っており、検討状況を踏まえ別途通達する。
 経過措置については、現存船(03年7月31日までに建造、建造に着手された船)は18年7月31日までの間は従来通りの規制とするが、国交省では適切な見張りの実施、当該プッシャー・バージの大きさなどを勘案した適切な有資格者の乗船などに努めるなど、安全運航に十分留意するよう所有者に指導する。
                                              (日本海事新聞 15,7,10)