地域情報化の基本的考え方

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1.IT革命の意義
 インターネットがもたらした情報通信ネットワークの可能性と情報通信機器の普及は、情報化の中心を単体としてのコンピュータ利用から各種情報通信機器が接続されたデジタルネットワークシステムへと進化し、その結果IT革命と呼ばれる社会システムを根底から覆す劇的な変化をもたらそうとしている。

ITは価値創出のための戦略技術
 IT(情報技術)による変革は、従来の情報化とはまったく異なるものと捉える必要がある。従来「コンピュータの活用」といえば、業務の効率化による生産性の向上を図るものであった。具体的には、伝票の自動集計や自動計算のような人的作業を省力化してコストダウンや事務処理量の向上をはかるものであった。しかし、ITはそうした従来の情報化とは異なり、単なるコスト削減の道具ではなく、価値創出のための戦略技術となってきている。

時間と距離を超越した高度な社会の創出
産業分野ではネットワーク技術を利用した業務システムの再構築が進むとともに、ネットワーク上で行われる電子商取引が急速に成長している。また、保健・医療・福祉の分野においては遠隔医療や在宅健康管理によって医療や福祉の高度化が図られており、教育分野においては遠隔教育等に対する需要が高まり、さらに電子メールなどの情報通信を活用して、自宅や農村などのオフィスで仕事を行うSOHO、テレワーク等の新たな就労形態が進展しつつあるなど、時間と距離の制限を超越した高度な社会 が生まれつつある。

生活者主導の社会への転換
しかし、ITがもたらすもっとも大きな変革は、生活者主導の社会への転換であると考えられる。すでに商取引の舞台では、これまでメーカーや流通業の主導で行われてきたマスマーケティングから、顧客がさまざまな選択肢の中から主体的に選ぶというのがインターネット上での基本的な購買行動として定着しつつあり、ITがもたらす「選択肢の増加」と「消費者同士の自由な情報交換」によって、顧客主導への転換が進んでいる。これはインターネットの特性である双方向性の機能がもたらした効果であり、双方向性の活用による顧客を教師にして企業が学習するというビジネスモデルが主流となりつつある。

住民と行政との協働による政策運営
今後、行政の場においても同様のことが起きると考えられる。インターネットの活用により行政による徹底した情報公開と民意の把握が進めば、地域の課題について意識の共有化が図られるようになる。このような関係の中から住民と行政とのコラボレーション(協働)による政策運営の実現が可能になり、さらには住民が直接行政の監視を行うということも可能になることから、より効果のある行政改革の実現が期待できる。

2.ITが変える地域社会
地域情報化の目指すところは、町民一人ひとりの幸福であり、豊かさである。情報化は、それ自体が目的ではなく、コンピュータやネットワーク技術を、町民の生活を豊かにする道具・手段として活用することが重要である。基本理念で見たとおり、情報の迅速な流通をもたらすデジタルネットワークの活用により、地域のの豊かな自然環境の中で、同時に都市的機能の恩恵をも十分に享受することが可能となる。インターネットに代表される高度に電子化された情報通信のネットワークは、以下のような特性を有する。

 ・空間の制約を取り払い、世界中の誰とでも情報のやり取りを可能にする。
 ・時間の制約を取り払い、いつでも相手に情報を届け、また相手から情報を受けることを可能にする。
 ・情報受発信のコストが低廉化し、多様な情報の流通を可能にする。
 ・ネットワークを通じた情報受発信は、情報を多くの人が同時に共有することを可能にする。

これらの特性は、人々に「多様な選択肢」と「自由な参加」の機会を提供することで、企業活動のみならず、個人の生活様式までも変革をもたらすと期待されている。

ITの有する機能を最大限に活用することによって実現する町の将来像について、代表的なものを挙げると次のようになる。

生活では・・・
 住民票等各種証明の取得や納税の申告等が自宅や町外の勤務先からできる。
 議会で議論されている政策やその議論内容が随時町民に公開され、それに対して町民は意見や政策提言を提案することができる。町民から提案された意見等は即座に議会での議論に反映され、町民参加によるまちづくりが進む。
防災に関するさまざまな情報を高度分析して、関係機関や町民で共有されることで災害に対し迅速な対応をすることが可能となる。

教育・文化では・・・
 学校の授業でインターネットが活用され、子供たちは自ら直接世界中のデータ等を探すことができ、自発的・創造的な学習が可能となる。
 インターネットの活用により、都市に出掛けなくても自宅にいながら最新の映画等を楽しめ、高齢者や障害者も趣味等に基づくコミュニティの参加できる。

保健・福祉では・・・
 インターネットを通じて、介護や子育てに関する情報を自宅や勤務先、携帯電話等から24時間いつでも入手することができる。
 テレビ電話等を利用することによって、高齢者等が病院に出掛けることなく、医師や保健婦等に相談できる。

産業では・・・
 取引企業間の情報流通が迅速になることによって、顧客ニーズに即応したビジネスを展開できる。
 インターネットの利用によって、地場産業が世界中に取引先を開拓できる。
 テレワーク、SOHOといった新たな勤務形態が実現し、女性や高齢者・障害者等の社会進出が活発化する。

行政では・・・
 役場内の情報流通が促進されると同時に業務改革が進み、効率的な行政運営が行える。
 徹底した情報公開によって、町民が直接行政を監視することが可能となり、効果的な行政改革が実現できる。

3.地域情報化の基本方針
 今後、町の情報化が進展すると、行政情報や行政サービスの多くはインターネット等を通じて提供されるようになり、電子メールや電子掲示板などの利用によりインターネット上で住民間のコミュニケーションが活発化するようになると予想される。このような状況が進むと、インターネット等情報技術を利用することができる町民とできない町民との間に行政サービスの格差が生じ、かつ地域コミュニティから疎外されるなど、情報格差がそのまま生活格差へと発展する懸念が生ずる。
住民と行政との協働によるまちづくりを実現し、町で暮らすすべての人が豊かで便利な生活を手に入れるためには、すべての町民が情報技術を使いこなし、ITがもたらす恩恵を享受できる環境を整備する必要がある。