大人用音楽
YUMI’S MUSIC COLUMN

私の「太陽」へ 〜空の色、海の色〜

 

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 「太陽をつかんでしまった」について、レビューしたかった。だけど、今、何を書いたらいいんだろう。曲の紹介?どんなにこの曲がカッコいいか、説明する?私が初耳した時の衝撃でも伝えてみる? …何を書いても、なんだか切ない悲しみが残るだけだ。だから、今の思いを書くのはやめにする。今年のある真冬の快晴日の深夜、私が書いたメールを転載します。読んでいただければ、私のこの曲への思い入れが伝わるはず…。

Yumiの「太陽」へ送ったラヴレターより…

海を見に行きました。また違った海の表情を見ました。とても天気がよく、空気も澄んでいたので、(真冬の快晴日の特徴)、仕事を終えてから、港へ向かいました。ギリギリ間に合ったの!素晴らしい夕焼けに。水平線ギリギリのところに沈み行く太陽が浮かんでて、その周りはもちろん真っ赤っ赤。ポカンと浮かんでる雲は、さらに色濃く輝いて…。

その海の色といえば…。夕日の反射が届く範囲は、もちろん空と同じように輝いて、手前になるに従ってそれは薄れ、生命感を失って行くような…。その真紅と濃紺のコントラストは、まるで万物の表裏のようで…。

人間もそうですよね。光と闇の対比を詞にした歌はよくあるけど、自然界もそうですね。光は目算では計れないほど遠いところに輝いてて、闇はすぐ目の前にある。手を伸ばせばすぐ届くところに。もしかしたら、一歩踏み出すところを間違えたら、ストンと落ちちゃうところに。本当の闇なんて、もっと奥深いところにあって、そこまで行き着きついてしまう人なんて、自殺者ぐらいに思うんだけど、呼吸をしてるのが当たり前の私達が、その見えない恐怖に怯えちゃったり、暗闇に踏み込んでしまったと勘違いを起こしてたり。そんなの無意味だよね、きっと…。常に今よりちょっとでもいい先を見ていなくちゃならないんだよね。夢想でもいいからさ。

そういえば、辺りがすっかり闇に包まれるまで眺めてたんだけど、ふと視界に入ってきた月と金星は、いつもよりずいぶん遠くに感じられました。宵の明星、好きなんですよね、神秘的で。

とても冷え込んできたから、車内から眺めていたんですが、そのときのBGMは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 「太陽をつかんでしまった」。むっちゃカッコよくて、一耳惚れしてしまった。この太陽って、何の暗喩になってるんだろう。彼のこれより先はない、そしてすべてを失ってしまったって事だけはわかるんだけど…。けど、彼女の中には新しい命が宿ってたりして。チバくんに訊いても、何も答えないような気がしますが…。ともかく、太陽をつかんでしまったら、大火傷して、後は死んでしまいます…。

ところで。夕陽は赤いけど、朝陽は紫色なのは、どうしてだろう?太平洋の水平線の向こうから覗き出る陽光を見たことがあるけど、まったく様相は違うんですよね。とても同じものとは思えない。やはり万物、さまざまな表情を持っています。

朝焼けのブルーブラックからダークブルー、ブルーからパープルへと続くグラデーションは、夕暮れのコントラストよりも美しいという人は、多かったりします。やはり、これから色を失う世界よりも、新しい光に人は惹かれてしまうんでしょうか。月も明けの明星も、急に姿を消してしまうけど、人が太陽しか見てない時だって、いつでもその光を受けて輝いているはずなのに…。

太陽ってさ、すべての人に平等だって思ってたんだよね。光と熱は均等に降り注ぐものだって。でも、違ったわ。当たり前のことだけど。やはり私は近眼でした…。地球はすべての人に平等じゃないもんね。それと同じことで…。

では、海の色が違うのは、空の色が違うから?ううん、同じでしょう?晴れた空の色は。 それとも、スモッグに侵された都会の空の色は違いますか?

海は空の色を反映している。そうともいえない。確かに夕焼けに赤く染まった海は、そうだったけど。南国の海のエメラルドグリーンは、一体どこから来るのでしょう?

私が南国の海を体験したのは一度だけ。グアムに行きました。無事25歳を迎えられた自分への誕生日プレゼントでした。生涯唯一の海外旅行。もうパスポートの期限も切れてるなぁ。海外といってもホテルの周りは日本人観光客で溢れてて、全然そんな気分になれず。島の反対側の海まで行ったら、観光客なんていなくって最高でした!ビーチでは子供が数人ボールで遊んでたので、仲間に入れてもらったり。木陰でボードの手入れをしていた地元サーファー仲良くなれたり。沖までサーフィンに誘われたけど、それはちょっと勘弁。その代わり言葉でレクチャー受けたけどね。サーフィン、奥深いです。"Today's my birthday" と告げると、ちょっと待っててと、どこからか白い大きな花を摘んできて私の髪に刺してくれた。それがグアムの習わしだそうです。今夜、パーティーしよう!ってことになって、夜にホテルのロビーに待ち合わせたの。彼は全く日本語がわからない人だったので、日本人観光客の女の子を食い物にしてる人ではないなと、全く怖くなかった。日本のことも全然知らなかったし。北海道の説明に苦労した。雪を見たことはないらしい。まったく別世界だよね。しかし、何であんなにうまく英語でコミュニケートできたのか、不明(笑)。ビーチに面したオープンバーへ行ってテキーラを飲みまくったよ!椰子に葉で編んだかわいい帽子をプレゼントにもらった。雰囲気にはかなり酔いましたが、アルコールに酔ってしまうことはなく…南国の空気は、そんな作用をするのですね。まさに楽園。

あ〜、また勝手に思い出話しちゃった!トシかなぁ。もうあの時のビキニは着れないんだろうなぁ…。

話し戻して。南国の海の色だったね。美しいグリーンの海も、一歩入れば底は真っ黒なナマコだらけで、とても素足では歩けない。全然美しくない。なんとかそのナマコ地帯を抜けても。今度はゴツゴツしたサンゴだらけで、とても歩けはしない。サーフボードを漕いで進むなら問題ないんだろうけど。美しさに魅了されて、そこに浸ってみたいと思っても、素足では踏み込めない領域だなんて…。そして、入ってみると、海の色は全然エメラルドではなくって、透明なの。それって一体…。目は何を映し出すのだろう。決してそれは真実ではないってことだけはわかる…。

南国には魔物がいませんか?美しい側面だけ観ると、妖精が飛んでそうにも思えるけど、うねった原生林の中には…、ね?いそうでしょ?魑魅魍魎が。南の鳥や蝶は美しいけど、ちょっと怖いでしょ?熱帯雨林には、怖いイメージがあります。一度入ったら、出てこられないような…。

北の針葉樹林帯はそうではないよ。樹木はまっすぐ空に向かって伸びてて、入り組んでない。素直なイメージでしょ?魔物がいたとしても、それは雪女か雪男。冬にしか現れません。動物もかわいいものばかリ。熊はちょっと怖いけどね。北にはクリーンなイメージがないですか?少なくともオドロオドロしい毒々しいイメージはないでしょう。

北にも目を見張る美しい場所があります。あまり有名なところではなく、界隈の人しか行かないような所です。釧路湿原の方にアイヌ語でオンネトーと呼ばれる、大きくはない沼があります。沼の周りは深い森に囲まれていて、その沼の色は…。見事にその周りの木々の色と空の色を映し出して、とっても神秘的。刻一刻とその色は変化して、二度と同じ色は映し出さないらしい。何時間見てても飽きません。いえ、ずっと見続けないと、その尊さはわかりません。釧路出身のNORTH WAVEのDJさんも、ここが大好きと言ってましたよ。 私の言葉ではうまく伝えることは不可能です。もし、道東へ行くことがあったら、是非ここまで足を運んでください。霧の摩周湖よりも全然魅惑的ですから。そうそう、オンネトーのすぐそばにキャンプ地になってるところがあって、そこでは野生のリスと遊べますよ。とっても人になついてるの。かわいいよ。

ん〜〜と、私はまだ太陽について考えてる。どうも太陽=ロックンロールとは思えないのだよ。HE=ミッシェルで、彼らにとっての太陽はロックンロールであるのはいいんだけど…、こんな風に歌ってしまったら、ホント、THE ENDじゃん。でも、未来は続くんでしょう?危惧はあったかもしれないけど。バンドはこれ以上ない最高傑作ができたら、終わるしかないんだよねぇ。続けるのは惨めなもんだし。ミッシェルがもし、太陽をつかんでるなら、今度のアルバムが最後になっちゃうよ。でも、大丈夫、ストーンズは今も生きてる!

ミュージシャンって、終わってから本物のスターになったりするね。若くして亡くなってしまった人は、死んでから天才と崇められたりする。ジョーストラマーもクラッシュ後、さんざんだったようだけど、今再評価、スターになりましたね…。

人は死んだらお星様になる…なんて話もあるけど、スターになるのはごく一部の人。太陽になるのもまた、ごく一部の人。夜空に輝く星も、昼間に照る太陽も、同じ恒星なんだけど、その光はずいぶん違いますね。別物です。同じ星としては括れないのは、距離のせいだけじゃないような…。でも、誰でも誰かの星や太陽になれたらいいね。

太陽はみんなの頭上にある。平等ではないけど。誰でも太陽をつかんでしまったら、死ぬしかないと思うの。私にだって太陽はあるはず。それってなんだろうって思って…。あなたの太陽はなんですか?

もっと形に表すことができない形而上のもっと大きなものに思えませんか?ロックンロールなら形はないけど、少なくとも記録に残せるから、なんか違うような気がするんですよねぇ…。だから、太陽という曖昧な隠喩が使われてるのではないかと…。ほら、太陽は丸いと思い込んでるけど、実際は輪郭がないでしょう?

って、絶対答えなんてわからないことを考えてると、どんどん時間が過ぎてゆくね。 でも、時間の無駄遣いにはなってないと思うけど。だよねぇ?もう朝の時間。でも空はまだ暗い。雪が降り積もってて、街灯が反射してちょっと明るいです。もう少し考えながら、寝付こうと思うけど、なんかいいヒラメキ降りてこないかな。でもでも、太陽がまだまぶしい時間に起きられるように。今日は晴れの予報だから!

じゃあ、また書くね。

 

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