1st マキシシングル 1997.02.27 RELEASE
ムリヤリ、インパクト重視のセンスのない邦題をつけられたかのようなタイトルではある。
昔の洋画や洋楽のようにね。しかし、これがスガシカオさんの記念すべきデビューシングル。
「ぜってぇーかけぬけねーよ!」と私は内心思っていたけど(売れ線ではなかったので…)、彼はどんどん駆け上がって行った。
今にして思えば、祈願と希望と気合が十二分にこもった、実に30歳、サラリーマンから転身という彼のデビューに相応しいタイトルと内容。たぶん彼は、今でも、このころの気持ちを失ってはいないないだろう、持ち続けているはず。とても意味深い作品。
(以後、これ以上明るいテイストの曲は生まれてはいない…)
当時は、バッキングのアコギを山崎まさよしが弾いているということもほとんど話題にも上らず(ヤマちゃんも大ブレイク前。「One more time, One more chance」がヒット中だった)。
実際に私もこのマキシを買ったのは、2ndマキシ「黄金の月」発売後。買った理由もC/W(「サービス・クーポン」「ひとりぼっち」)を聴きたかったというものだった。
いい遅れたが、これらの曲を初耳したのは、スガ自身がパーソナリティーを勤めるFM NORTH WAVEの番組だった。その番組タイトル名も「ヒットチャートをかけぬけろ」(97.4〜98.3 火曜深夜1:00〜2:00)。
私は偶然にもその放送第一回を聴いてしまったのが何よりもの始まり。まぁ、その時はスガシカオというアーティスト名も聴き取れなかったんだけど…。早口ハイテンションで喋るおもろい兄さんだった。それに似合わず、そのC/W曲がカッコよかったんだよね。もしこの番組を聴いていなかったら、こんなファンにならなかったかも。その後のリリースのたびに、どんどん拍車がかかっていったんだけど…。
話を戻そう。
ファーストアルバムに収録されても、私もたいして注目しなかったそんなデビュー曲だったんだけど、大化けした瞬間があった。デビュー2周年記念の武道館公演(99.02.20)。
「私が行かずに誰が行くの?」と大勘違いを起こし、私自身も初の武道館体験。
2曲目に演奏されたその時、たぶん初めて、この曲の意味がストレートに入ってきたんだ。彼が今ここに立っている理由が詰まっているような気がした。私もここにきて本当によかったと思える瞬間でもあった。(1曲目に披露された「前人未到のハイジャンプ」の方が強烈だったんだけどね。大舞台に一人で出てきての緊張感あふれすぎるほどの弾き語りだった。)
以来、この曲をCDで聴いてもさほど響いては来ない。だけど、LIVEで聴くたびに確実に感動の度合いは大きくなってきている。LIVEの定番曲にはなっていないからこそ、聴けた時はとても嬉しいというのも大きい。
昨年のTOURでも演られていたのにもかかわらず、ライブベストアルバム『THANK YOU』には収録されなかった。それはとても残念に思ったんだけど、もしかしたらこの曲は、そう幾度となく聴く類のものじゃないかもしれないとも思う。愛される曲の多くは、作者の手を離れリスナーのものになって育っていくものだけど、この曲はいつになってもスガシカオ自身のもののような気がする。そうであって欲しい。そうして歌い続けて欲しい。
今年2月のTOURは、SINGLE COLLECTIONというサブタイトルがついているので、当然この曲も演奏された。中盤バラードが続いた後の、アッパー盛り上がりのきっかけとなった。ファミシュガアレンジ、最高!
参照 : SET LIST http://www5b.biglobe.ne.jp/~yummie/music/setlist/sfs04.htm
ジーンとくる大好きなフレーズがある。
<真剣な顔で君と交わした約束は 僕のたった一つのプライドになったんだ>
自意識過剰なプライドというのは、真っ直ぐな気持ちの邪魔をして、向上の妨げになったりもする。純粋な感情ではないんだよな。つまらない大人っていうのはそういうもんに縛られてるのかもしれない。
だけど、こういうプライドならば、いつでも味方というか、お守りとなって力を貸してくれるんではないだろうか。私もそんなプライドなら持ちたいなぁって思っているんだけど、今のところ、誰とも何の約束も持ってない…。約束できることが見つけられない。強い気持ちがないからだろうな。自分のことさえ信用できないもんな…。
しかし、スガシカオは違った!
歌詞をじっくり読むと、スガシカオの志がはっきりわかる。
歌を唄って生きていこうと誓ったんだね(きっとお父さんと約束したんだろうと、私は推測している)。どんな歌かといえば、「愛の歌」。決して何か特別なことを唄おうと思っているわけではないんだよ。その歌が誰かに届き、またそこで唄われればいいと…。それが彼の未来の光だった。
それはしっかり私に届けられたと思っているんです。リリース当時、私は25歳。私も30歳までに何か見つけようとしていたんだけど…32歳になってしまった。まだ何も誓えない…。
このマキシシングルのジャケットには、
If you get my tricky rhythem on the radio, call me like you used to.
と書かれている。確かに私はラジオからそのリズムを受け取った。でも、私に向けられたメッセージじゃないんだよね。電話なんかかけたことないし…(笑)。だけどね、これがキッカケで、FAXを買い、PCを買った(現役中)。そしてRADIOにメッセージを送ったの。 ちょっとした変化だけど、内にこもってた私としては大きな変化だった。感謝してます。私の中でシカオさんから発せられたメッセージはずっとかけぬけています。
もしも、デビュー曲が「黄金の月」や「愛について」だったら、またちょっとアーティスト生命は違ったかもしれない、なんて思っちゃいます。どこに進んでいただろう。この「ヒットチャートをかけぬけろ」に込められた想いが、以降の曲たちにもずっと宿ってるように思えるんです。今となってはヒットチャートの常連さんですが、この曲だけチャートに上がらなかったのは、表面的な感触とは反対に、中身に込められた想いが重すぎたのかもね。
どこをどうとっても、メジャーデビューはこの曲でしかありえなかった、と思える大切な大切な曲なのです。
これからもずっと、ヒットチャートをかけぬけていってください。
(いちスガマニアより愛を込めて)