大人用音楽

YUMI'S CD REVIEW

スガシカオ 『TIME』 全曲レビュー

 

今作は『歌詞のアルバム』だとシカオさん自身が評されておりますので、
私も歌詞を重点的に絞って、ひとりごちてみたいと思います…。

 

1. 「サナギ」

なに歌っちゃってんの、シカオさん。あなたでしょ、私達の粘膜をジンジンと突きまくるのは!
ホントらしいリアルなウソばかり並べて、私達のことバカにして毒撒き散らすし。けどねぇ、
そんなあなたが私達は大好きで、どんなにエグい音像だろうと歌だろうと、受け入れてしま
うのです。どんなに深い傷も、ずっと背負って生きていかなければならないのです。けれど、
未来を夢見なくてはならないのです…。(大サビ、「たいくつ/ゆううつ」と同じテーマだね)。

 

. 「カラッポ」

みんな、「まともなのは自分だけ」って思ってるの。本当にそうなら、この世の中、しごく、
まともなのにね…。意味ありげな体言を並べ、怒り奮闘でキレまくってわけわかんなく
なっちゃてるけど、その感じよくわかるわ。あまり飲み過ぎないようにね。引き金はなん
だったの?「ミートソース」の怒りは暑さからだったわね。私、大好きよ、こういう熱苦しい
FUNK ROCK
が。『TIME』の中で、最も気持ちいいわ。汗かいてストレス発散しましょ。

 

. 「光の川」

座布団一枚!と自らおっしゃっていた見事な隠喩ですが、どこかで聴いたことあるような
表現ですよ。J-WAVEのスタジオからは、いつもそんな光の川が見えるのかしら。都会の
喧騒の中の孤独を感じるのかしら。でもね、光は近くの短波ではなく、遠くの長波の方が
美しく見えるものなの。通り過ぎた残光ではなく、目の前のピンスポットでもなく、向けられた
ビームでもなく、遠くの光源に向かって進まなくてはならないの。いつかの輝きを求めて…。

 

4. 「アーケード」

自分でも意外だったんだけど、この曲が一番好きでハマっているの。これは、めちゃくちゃ
UK ROCK
! アレンジ間宮さんは、元々そっち系の人だもんね?(たぶん) これがねぇ、
もし、森さんアレンジだったら、もっと甘くなって、こういう危険な空気は出なかったと思うの。
素晴らしい名曲ね。恋の倦怠期や終わりの歌は今までもたくさんあるけど、こういう始まり
の歌って初めてじゃない?制御の利かない熱情があるのに、静かなの。確認は要らない。
<ノロマで行儀のいいルールなんかはいらないみたい> 特にこのフレーズが大好きよ。
雑音も他人の下手な口笛のように聞き流して。「それぞれの日常ではなく、二人一緒の
夜のまま」ってのもいいね。ひどい睡眠不足でも、仕事もがんばれるんだろう。恋は
こうじゃなくちゃ!見つけた未来ってどんななんだろうね?先は険しそうなんだけど…。

これでねぇ、またシカオさんに擬似恋愛する女子が増えてると思うの。私のライバル?!
「秘密」では悪名高かったからねぇ。だけど、こっちが「秘密」な感じよね。秘めた色気が
あるの。「黄金の月」で情熱や純粋が無くなってしまったと歌ってたのに、最近の歌には、
これらがある。根っこにない人からこういう言葉が出てこないはずだから、やっぱりあるん
だね。本当の純正じゃないかもしれないけど。一度は失くしかけたものだからこそ、小さな
原石を強く感じられるのかもしれない、見落とさないのかもしれない、なんて思っちゃった。
アウトロがすごくいいんです。星空な感じ!ロマンティック!C/W収録してくれてありがとう。

 

5. 「クライマックス」

青春のそんな一幕、大人になった今から思うとちょっとばかばかしく思えるけど、その時は
切実だったのよね。失恋ソングは世の中に腐るほどあるけど、こんなドラマティックじゃない
のは、滅多にないわ。だけど、「友達でいよう」「ありがとう」なんて、韓国ドラマでも使えない
常套句なんだけど、実際ではよくある話…。思い出しちゃったじゃねーか!そんなことより、
このアレンジの完成度、素晴らしい。このアルバムヴァージョンは、低音とホーンを聴け!

 

6.June

6月、なぜ初夏に新天地?大学生?新社会人かな?やっと慌しい新生活も落ち着いて、
実家を離れ自活を始めたんでしょうか。「桜並木」は新一年生の歌だったけど、それよりも
もうちょっと先の成長の一歩。でも、どうしてそんな工場の街に住むの?実家がそっちなん
じゃなかった?シカオさんは。そして電話じゃなくて、手紙が好きですね。ウソしやすいから?
通例C/Wになりそうな曲だけど、締め切りぎりぎりにできた曲の割には名曲度低いかな…。

 

7. 「あくび」

シカオアルバムといえば、必ず収録されるのがドキュメントシリーズと呼ばれる抜きの一曲。
今回、あえてそう言わないのはどうして?他全部違うけど、これ唯一俺自身の歌!と豪語し
ております。だけどわかるわ、眠れない夜って妄想が膨らむんだ。しかも誇大被害妄想…。
深夜早朝に“みかん売り”が歩く街ってそれどこの国ですか?こちらの国では“イカ売り”よ。
しかしどーして、女運が悪そうなんだろうねぇ?「アーケード」後の寝不足ならいいのにね…。

 

. 「魔法」

ふ〜ん、今度は魔法なんだ。でも、薬なんだね?「バクダンジュース」とは違うんだよね。
バクダンジュースは自分以外の身の回りの不都合を消す薬だったけど、この薬は、自分
自身の拭えない不都合を消す薬なんだね。これは簡単に手に入らないの?しかしさー、
他力本願だな。頼るなよ!みんな、そうやって我慢しながら生きてんだよ!どーしようも
ねーんだよ!そうだ、リンゴジュースだったら、自分で作れるかもよ?やってみるぅ?…

 

9. 「秘密」

SMILE』の9曲目は「はじめての気持ち」だったんだけど、この「秘密」を究極の意味で
誇大解釈してしまうと…。君が僕の友達の弟だったら?同じ部活の先輩後輩の関係だっ
たら?男子校だったとしたら?…。ものすごぉーく陰部が明確になってしまうんだけど…、
違いますから!どうして女心をわかってくれないの?とバカな男心を嘆くのではなく、単純
な解析であるからこそ、余計なことを考えて抱えてしまうのが男です。温かく見守りましょう。

 

10. 「風なぎ」

「お別れにむけて」に優るとも劣らない泣きのアコースティックバラード。この胸の奥にずっし
り残る重苦しい感触はなんだろう?それは悲しみでも苦しみでもなく、やるせなさなのか…。
初耳時、これは失恋の歌かと思った。いるじゃない?始めから自分からいつか別れるつも
りで付き合い始めて、一瞬の愛情をぶつけまくって、パッといなくなる女…私なんだけども。
そのときのことを思い出して、辛くなったんだけど、実は違うんだ。「お別れにむけて」と同様、
これは予告のない死別です。友人お棺を担いだ日、ものすごい青空で、風もないとても穏や
かな日だったそう。その時の空気がぎゅうっと濃縮された曲なんだそうです。私のつまらない
感傷と重ねちゃってごめんなさい。ちなみに、風なぎとは、シカオさんの造語だそうですよ。
「波光」もそうでした。あの曲では、アウトロでぱっと光が広がりましたが、この曲では間奏で
それと同じような効果があります。でも、もっとその光は大きくなりましたね。天国へ行ってし
まった彼は彼の明日を歩き、僕は僕の明日へ歩き出していく。それがあたりまえなんだろう。

 

 

どこか陰鬱な空気が漂い、重苦しいテーマがひしめくこのアルバムですが、かつてのアルバムでは、
それで終わってしまっていた。でも今作では、必ず未来を見据えています。そこには光が射しこんで
きそうです。以前からそうでしたが、その光は強くなってきたように思います。うつむいてばかりでは
いられない、さまざまな負を抱えながらも、僕らは、しっかりとこの時代を生きていかなくてはならな
いんだ。そんな2004年のスガシカオの心意気がつまった彼流の「Sign Of The Times」。
共に生きていくには、ものすごく強くたくましく、力強い相棒のような気がする。
素晴らしい日々が、いつかきっとやってくると信じ、目覚めの一服に聴きましょう!(笑) キッツゥ!

 

 

TIME超ロングレビュー。も書く予定です。お楽しみに。

 

 

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