大人用音楽
YUMI'S CD REVIEW

椎名林檎 『加爾基 精液 栗ノ花』 3rd original full album 2003.2.23

 

ここにはもう、歌舞伎町の女王とか、セクシー看護婦とか、虚言癖の女はいない。この中で生きているのは、一人の普通の女性である。ただちょっと、普通よりも、欲望が強いかもしれない…。生きているといろいろあるけど、それをちゃんとね、やって行きたい、やって行こう、という思いが詰まっているような気がする。サウンドにもそれが表れている。思いっきり、いろんな音、いろんなテイストが詰まっている。ジャンルに捉われず、多くの生楽器と自らプログラミングにも挑戦した実験的作品とも言えるけど、エレキギターを置いたこの姿が本来の椎名林檎の姿なのかもしれない。今までは序章に過ぎなかった。ここからが本領発揮、見事なコンセプトアルバム!

林檎ちゃん、大人になりました。気安く「ちゃん」と呼ばせない雰囲気を醸し出しております。彼女にはちょっと怖いイメージがあると思うけど、しかし歌の内容はとてもかわいらしい女の子。とても正直、すごくストレート。男性は、よく聴けば聴くほど、より、「女って怖いな」と再認識するでしょう。そのくらい聴いて欲しい。だけど、最も聴いて欲しいのは、彼女よりも年上の女性。必ずハマる曲があるはず。無くしかけているものを取り戻せたり、隠している想いを代弁してくれているはず。

これは早すぎるできちゃった婚、長期の出産・育児休暇後の作品だったわけですが、後で知ったことだけど、離婚しちゃってたそうです。離婚の本当の理由というのは言及されておりませんが。アルバム二作で引退も考えていたそうです。あまりに周囲とのズレを大きく感じていたのと、静かな生活を望んだため(ex夫もそう望んでいたらしい)。だけど契約上、リリースしなくてはならないというので、「歌い手冥利〜其の壱〜」を制作したらしいです。新曲を作る時間的精神的余裕が全くなかったため、已む無くのカバー集だったわけですが、アルバムタイトルどおり、ヴォーカルの個性が著しく表れたいいアルバムでした。だけど私は、個人的に林檎メロディーが聴けないことに、単純に物足りなさを覚えた。そして彼女自身もそもそもこれは不本意なもので、かなりの欲求不満をもたらしたらしい(其の弐はあるのか?)。

そこで、ひとりの女性として穏やかに生きるか、ひとりのミュージシャン・アーティストとして激しく生きるか、という究極の選択をしたらしい。もちろん彼女は後者を選んだ。そんな人生をかけた渾身の作がこのアルバム。年齢のわりに、もう多くの苦難を経験済みってわけですね。こんな背景を踏まえた上で再度聴いてみて欲しい。きっと新たに聴こえる魂がそこにあるはず。

さまざまなパフォーマンスや歌詞ばかり取りざたされる彼女。あまりいわれることがないことだと思うけど、私は稀有なメロディーメーカーだと思っています。一聴して林檎ちゃん作だとわかる美メロ。ロックの人だと思われがちですが、兄・純平ととても仲良く育ったらしく、彼女はSOULも大好き。影響出てるよね。そして、私が椎名林檎を聴く大きな理由のひとつにはやはり、森俊之先生(彼女はそう呼ぶ)の参加というのがあります。いい仕事してますよ〜。

いろいろ書きましたが、私は椎名林檎の大ファンというわけではなく、彼女のルックスが好きで、いつも林檎ちゃんかわいーだとか、美しいーだとか、かっこいーだとか思いながら見ています。もし、口元のホクロが無かったら椎名林檎とわからないぐらい、メイクや衣装で別人と思えるほどの変幻自在ぶりをうらやましいと思いながら…。

9月9日、北海道で唯一の函館ライブに行きます。なんと3列目!しっかり観れる!
そこではどんなパフォーマンスを魅せてくれるのか、非常に楽しみにしています!

 

YUMI'S ROOM LISTENING