#2751/4530 連載 ★タイトル (CKG36422) 93/ 1/28 12:12 ( 60) ●連載パソ通小説『権力の陰謀』 29.結末 ★内容  信一には富も学歴も何もない。 あるのは20年前と同じ純真な心と正義感と、そし て、あれから養った真理を見つめる目だけである。 それから20年間の苛めに耐える ことによって備わった忍耐力である。 そして、失ったものは計り知れない程大きく、 言葉にはできない。  民主主義は勝ち取るまでの道程は遠く困難であったが、それをまた持続させるのもま た困難であることを知るべきだろう。 社会的地位の高い者は勿論、一般市民も、社会 をもっと問題意識を持って良く見詰め、不正を絶対に許してはならない。 一つの不正 を許せば、不正はどんどん拡大し、後で取り返しの付かない不幸な結果を招くことにな るのである。 つまり、一つを見逃すことは全てを失うことにつながるということであ る。  また、法律には反していなくても、皆で民主主義憲法の精神を守るよう、たゆまぬ努 力をすべきである。 一つ一つの小さな積み重ねによってのみ、それは達成される。  差別者を生け煮えとして民を権力に従えさせ、組織力・結束力・統率力を高めるとい う方法は、独裁国家のそれと同じである。 つまり、差別者の存在を容認することは独 裁国家への道を開くことになる。 また、人道的な観点からも考えて欲しい。 その被 害者の身になって考えたなら、とても容認出来るものではない。 どうして、昨日まで の肉親や友や隣人に、いや、他人であっても同じ人間にそのような酷いことができよう か。 そういう人間としての自然な感情を、権力がことごとく抑圧するなどということ は、絶対にあってはならないことだ。 また、そこまで国家全体を統率する必要などな いはずだ。 軍隊のように組織力を必要とする特定の機関に必要なだけだ。 だから、 この風習はずっと昔の時代錯誤の風習であり、現代では本当は必要のない風習のはずだ 。 従って、この風習は政府によって即刻終わらせるべきものだ。  日本は国連の一員として南アフリカの人種隔離政策に反対する一方、国内にこのよう な差別の風習を容認・推進するという相矛盾する政策を取っていることになる。 今後 、日本は国連における重要な地位を目指しているのだから、このような風習は払拭すべ きだ。 そして、近代国家日本は堂々と世界に羽ばたくべきだと思う。  信一には富も学歴も地位も何もない。 だから、法と正義を信じるよりない。 全て の人は法の下に平等であり、人が人を裁くのではなく、法が人を裁くという民主主義の 原則は、一人一人の心の中にある正義によって、必ず守られると信じるよりない。 一 番大切なことは、必ずそうなると信じ、絶対に諦めないことだと思ったのだった。  もし、この信一の願いが権力や社会に通じ、差別から開放されるなら、信一には僅か な希望が持てるだろう。 信一を取り巻く社会の状況は、決して20年前より良くなっ てはいない。 むしろ、あらゆる条件が悪化している。 だが、昨日まで信一に重く覆 いかぶさっていたものはなくなるのだ。 何も取り柄もない信一だが、信一の努力を妨 げるものは何もなくなるのだ。 だから、少しは人並みの幸福が得られる可能性もある だろう。 決して楽観出来る状況ではないが。  だが、信一が考えた通りの真相であり、それが徹底した思想のもと行われているので あれば、信一の行く手はより一層困難なものとなるだろう。 人生の終末は間近という ことになるだろう。 これこそ『権力の陰謀』の最終目標であるわけだ。 つまり、標 的は信一、そしてその目的は、権力の独占の維持・拡張なのである。 そして、新たな 標的が作り出される。 次はあなたかも知れない・・・ 「一生やることに決めた」「一生良くならなければいいんだ」    「一生やることに決めた」「一生良くならなければいいんだ」       「一生やることに決めた」「一生良くならなければいいんだ」             ・              ・                ・    ・                   ・       ・                                    ヨウジ                       初版 93-01-28