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★☆★江戸崎町のころ★☆★ |
茨城県は霞ヶ浦に近い江戸崎町。周囲は肥沃な田園が広がる小さな町。
今でこそ「江戸崎まんじゅう」「江戸崎かぼちゃ」なる名物で
ちっとは知られるようになったんだが辺鄙なとこよ。
平右衛門のばあちゃんに育てられ「ヘーモンのよっちゃん」と呼ばれておったです。
生まれたのが昭和19年、農村地帯だがら食い物にはこまらんかった。
とうちゃん、かあちゃんが東京に定職をもとめて出ておったこともあってな、
東京文化というか、この田舎町にはみらんなかった子ども向け読み物が山のようで、近所の子どもらの図書館といったとこよ。
そのころの児童文学は創作ものではねぇ。岩波にしても講談社にしても、ネタ本を子供向けに書き換えた物語ばっかしだったのよ。
『クオレ』『愛の家族』みてえな「ためになる本」もいっぱいあったけんども、
それらよりは『アラビアンナイト』のほうがずうっと面白かったなぁ。『船乗りシンドバットの冒険』『アラジンと魔法のランプ』『アリババと40人の盗賊』。
グリム童話でも『白雪姫』『シンデレラ姫』は何度読んでも飽きなかったし、アンデルセンもイソップも好きだったの。
このころから不思議系に興味があったということかも知れん。
冒険活劇はなおのこと。『岩窟王』『三銃士』『鉄仮面』『ウイリアムテル』『ロビンフッド』、『ソロモンの洞窟』『ターザン』から『ジャングルブック』、『ガリバー旅行記』『ドンキホーテの冒険』『ドリトル先生』、
ミステリー系では『怪盗ルパン』『シャーロックホームズ』、SF系なら『海底2万マイル』『宇宙戦争』『地底旅行』『失われた世界』
日本の物語もいいものがいっぺえありましたぞ。『かぐや姫』『浦島太郎』に『桃太郎』、
『少年王者』と『少年ケニア』、『少年探偵団シリーズ』。
時代物のほうもよう読んだもんで。『椿説弓張月』『源平盛衰記』、『太閤記』『真田十勇士』『猿飛佐助』『霧がくれ才三』に『忍術自来也』、『八犬伝』『大岡政談』『天一坊』『国定忠治』『鞍馬天狗』。英雄豪傑なら『塙団衛門』『決闘高田馬場』『荒木又衛門』ですか。
今と変わんねぇ、ハイ雑読でごぜえます。
ラジオ番組にも『新諸国物語』というえらい長編のシリーズ物
『白鳥の騎士』『笛吹き童子』『紅孔雀』『オテナの塔』とこの大ロマンは欠かさずに聞いてたもんじゃった。
平右衛門のばあちゃんは落語、講談、浪花節を聞くのが楽しみでな、『浪曲天狗道場』は
毎週一緒に聞いていたもんだから、広沢虎三『次郎長伝・石松金毘羅代参』寿々木米若『佐渡情話』三門博『唄入り観音経』玉川勝太郎『天保水滸伝』相模太郎『灰神楽三太郎』
いまでもおおかたの名曲のさわりぐらいはうなれる自信があるよ。
中央の文化といえばかあちゃんが戻ってきたときに子供らを集めてカルタとりをしたもんじゃ。
もちろん「百人一首」のこと。意味はまるっきりわからんくせに上の句を読んでもらえば、下の句は諳んじられたもんだ。
今の子供のテレビゲームとは格が違うで。
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