剱岳 チンネ 中央チムニー/左稜線 2005年9月17日〜19日

メンバー かっきー、よっしぃー 

9/17 室堂(9:30)---別山乗越(11:00)---剱沢小屋(11:35)---長次郎谷出合(12:50/13:10)---熊ノ岩BP(16:10)
9/18 BP(5:10)---池ノ谷乗越(6:25)---三ノ窓(6:50/7:10)---チンネ取付き(9:30)---チンネの頭(16:05)---BP(17:30)
9/19 BP(6:00)---長次郎谷出合(7:20)---別山乗越(9:30)---室堂(11:00)

  

目指す剱岳は雷鳥坂の向こうがわ 剱岳が見えてきた〜♪
長次郎谷を登る 途中から振り返る
ベルクシュルンドを飛び越えて岸へあがった やっと熊ノ岩が近づいてきた
熊ノ岩のビバークポイント 八ツ峰Y峰のフェース
今年も夏の間は谷底ばかり歩いていたのでそろそろ稜線歩きがしたくなってきた♪
常々剱岳周辺の岩場には興味があったのでここらで、かの有名なチンネに行く事に(^-^)
しかし所詮源流釣師と中年ピクニッカーのコンビでは難しいところはパスだ(^o^ゞ
数あるルートの中でも左稜線なら行けるかな?ってことで決定した♪

4:30。待ち合わせ場所の豊科ICすぐのコンビニに着くとすでにかっきーは到着し仮眠していた。
コンビニは改装中で閉まっていたので、かっきーを起こし大町に向かう途中にあるコンビニで買出しをしたあと扇沢へ向う。
さすが3連休。扇沢の駐車場はすでにいっぱいになっている。 なんとか空きスペースを見つけて車を止める。

アルペンルートの玄関口である扇沢は観光客、ハイカー、登山者が入り混じりながらごった返していた。
始発は7:30なので1時間以上並んだあと、やっとトロリーバスに乗る事ができた。
扇沢からはトロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、トロリーバスと乗り継ぎ室堂へ。
さっそく時間を惜しんで歩き出す。

室堂から剱沢へはよく知った道だ。 ここ何年も来てなかったので景色ひとつひとつがとても懐かしく感じれる。
雷鳥沢キャンプ場から浄土川を木橋で渡り雷鳥坂の登りにかかる。
ここで靴に異変が起こり始めた! いま流行のミッドソールの劣化じゃ〜ん(T◇T)
靴底が剥がれるっていうアレです。。 詳しくはブログに書いたので興味のある方はどうぞ♪
多少のテンションダウンはあったものの「なんとかなるかあ」ってことで登り続けた。

そんな僕のテンションにお構いなく周りの景観は素晴らしい。
立山から大日岳へ続く稜線、称名川、弥陀ヶ原など手に取るように見えている。
そしていよいよ別山乗越まで登ると剱岳が姿を見せた。
剱岳は高校2年の時に初めて登って以来、20年間僕のNo1の山であり続けている。

剱沢キャンプ場への道を下る際はいつも小走りなのだが、さすがに今回は靴がこの状態じゃねえ。。
ゆっくりと靴に負担をかけないように降りていく、それでも30分ほどでキャンプ場に到着した。
雷鳥沢のキャンプ場もそうだったがここもすでに結構な数のテントが張ってある。 みんな連休前から入ってるのだろうか??
ここでランチタイム(^-^)  パンをかじりながら景色を楽しむ。

キャンプ場から剱沢雪渓に下りはじめる。 さすがにこの時期は雪渓もだいぶ後退していてしばらく登山道を行くことに。
武蔵谷出合あたりから雪渓に降り立った。 平蔵谷出合を通り過ぎ、長次郎谷の出合に着いたのは13時前だ。
靴の不調によりスピードが上げれないのがもどかしい。

長次郎谷の出合で先について休憩されていた滋賀県からの二人組とお話しをする。
同じくチンネを登るとのことで、泊まりも同じく熊ノ岩を予定されてるらしい^-^
混みこみも嫌だけど他にだれもいないのも寂しいので心強い♪

さて、ここからはアイゼンをつけて長次郎谷を登り始める。 斜度もあって一歩一歩くるしい。 
しばらく登るとクレバスが口を開けていた。。
通行不能なのでいったん左岸にあがり迂回する。 雪渓に戻って登っていくと今度は雪がきれて滝が出ていた。
今回は右岸側に逃げるがベルクシュルンドが深くて岸に移れる場所を探しながらウロウロ。 安全な場所で飛び移る。

アイゼンを外し右岸を登っていく。 途中で左岸に渡るとザレ場の登りになる。 
遠くに目的の熊ノ岩が見えてるがなかなか近づいてこない。 
このあたりになると靴のダメージも大きくなり歩きにくいったらありゃしない。
長次郎谷は熊ノ岩を境にして右俣と左俣に分かれる。ザレ場に付けられた登山道をいくと自然に右俣に入る。
右手に八ツ峰の5.6のコルを見て熊ノ岩の右手を巻くように登ると熊ノ岩BPが見えてきた。
BPに行くには雪渓を横断しないといけないので再びアイゼンをつける。
結構傾斜があるのでスリップすると下のクレバスにのまれてしまうだろう。。 慎重に渡り熊ノ岩の上にある平坦地に荷物を下ろす。

今日一日なんとか靴はもってくれたが明日はどうなるだろうか・・・  
不安はあるが睡眠不足も手伝って日暮れとともに眠りに着いた。。

 

池ノ谷乗越直下より立山を望む 池ノ谷ガリー
チンネ下部 とりあえず取り付いた1P目
中央チムニーの1P目のかっきー 中央チムニー1P目を登る僕
2Pでチムニーから抜け出る 中央バンドは結構広々していた
翌朝は4時に起床。靴の不調の事もあり暗いうちに出発することに。
ザレ場の登りを避けて雪渓をギリギリまで登り、池ノ谷乗越を目指す。
登ってるうちにだんだん明るくなり立山三山、その左奥には槍ヶ岳も見えている。

池ノ谷乗越に着くと一気に反対側の景色が開けた。 極悪の池ノ谷ガリーの向こうに小窓王が聳えている。
いよいよ北方稜線まで上がった。 久しぶりの景色に感動する♪
池ノ谷ガリーは足を置くたびに崩れていくガレガレザレザレの下りだ。 相当な靴のダメ−ジを覚悟して一気に降りていく。
3分の2程下ったところで右手の踏み後をたどると三ノ窓に到着した。 
誰もいないかなと思いきや縦走の二人組が出発準備をしているところだった。

さて、三ノ窓から南を望むとチンネが聳えている。 取り付きはチンネの基部は基部だろうがどこだろう??
持って来たのは左稜線のトポだけ。。 とにかく行ってみるか・・・

ザレザレの斜面を下り、アイゼンをつけて雪渓を横断する。 チンネの基部に着いて取り付を探すが・・・ が〜ん!!
まったくわからない・・・^-^;   これでもない、あれでもない・・  ウロウロウロウロ・・・・
かっきーと二人で考え込む。 刻々と時間だけが過ぎていく。 
そうこうしてるうちに滋賀県の二人組がやって来られた。 「ラッキー」取り付きを教えてもらおう♪

しかし、二人組も取り付き探してウロウロしてるじゃないですか!! がーん!!  夢破れたり・・(T◇T)

三ノ窓に着いてから2時間以上経過している。。あせる。。どうしよう。
滋賀県の二人組はあきらめて他のルートを登ることにしたようだ。
聞いてみると中央チムニーを登るとのこと。。  中央チムニー??  それは難しいのか?  簡単なのか??
チンネ全体のトポを持って来なかったのを後悔する。 もう、ここで時間を費やしてても埒が開かないので適当に取り付くことにした。

<おそらくルートから外れたところの1P目>よっC
凹角状のフェースから登り始めるがさすがルート外だけあってピンがない。
一箇所キャメロットでプロテクションを取り、3級くらいのフェースを登っていく。
傾斜は緩くなり広いフェースになったところで支点を発見。ピッチを切る。
<ルート外2P目>かっきー
傾斜の緩いフェースを40m伸ばす。このピッチにはハーケンが打ってあった。
<ルート外3P目>よっC
大きな岩の下を右にトラバースし回り込む。
するとなんと、正面に溝が伸びていて先ほどの滋賀県のパーティが登っているじゃないですか!
どうやら中央チムニーの取り付きに着いたようだ。。 ここまで来たらこれを登らないとしゃあないか・・・

<中央チムニー1P目>かっきー
チムニーの中に入って登っていく。途中で苦労してるようだ。 しばらくして合図があり登り始める。なるほど結構厳しいところがある。
帰宅後のトポを見るとV級のピッチだがもう少しグレードが高いような気がした。 通常はチムニーに入らず右のカンテを登るらしい。。
<中央チムニー2P目>よっC
再びチムニーの中を行くが左手から壁がかぶってきて登りづらいったらありゃしない。
ここで右手のフェースに逃げて登ることに。 中央バンド手前でピッチを切る。
<中央チムニー3P目>コンテ
傾斜が緩まり、すぐに中央バンドに着く。 中央バンドはとても広くて休憩するにはもってこいだ。
ランチタイムにしてパンをかじる。 僕達はまったく地形が判らず不安だらけだった。 

 

やっと左稜線に T5にて 核心部を登る僕
T5から2P目 T5から3P目
チンネ直下のリッジ 登攀を終え長次郎谷を下る
剱沢雪渓 虹の架け橋 ななかまども色づき始めた
チンネの地形をまったく把握していない僕達は不安の中で次の行動を考える。
ここが中央バンドだとしたら・・ 左端に左稜線があるはず!! とりあえず移動してみよう。

バンドを左に進み出すとすぐに幅が狭まるが問題になるほどではない。
行く手に稜線らしきものが見えてきた。あれがたぶん左稜線のはず!!

しかし、その手前でバンドは切れていて極悪のトラバースになってるやん。 なんとしても稜線にたどりつかないと!! 
落ちたら終わるので、ここはロープを出して越える事に。 残置のスリングを掴みながら極悪トラバースをクリア。
1段あがると小広いスペースに出た。 帰宅後調べて見るとここはT5だったみたい。
しかし、思い込みと言うのは恐ろしいモノで、中央バンドから続いてるのはT5 のひとつ手前のビレイポイントだと勘違いしていた。
となるとたしか次はピナクル群の通過だなっと完全に思い込んでしまう・・・
<左稜線後半1P目>かっきー
実際はT5からの次のピッチは核心部の小ハング越え。
核心部で苦労するかっきーを見て手前のV級ピッチと思い込んでる僕の思考は完全に暗闇に入っていった。
このピッチはどうみてもV級のはずが無い!! しかもピナクルでもない・・ 
ここはどこ?? 左稜線ではないのか?? 一度そう思い込むと不安が心を支配する。
核心を越えてピッチを切ったかっきーの合図があり僕の番。 登り始めるとやはりキツイ(^−^; 
実際はV級/W級A0だがV級のピッチだと思い込んでるのだから仕方が無い。
間の悪い事にどんどんガスが立ち込めて周りの景色を隠していってしまった。
<左稜線後半2P目>よっC
よくよく考えてみるとどう考えても左稜線なのだが、一度思考の暗闇に入ると全てが飛んでしまうようだ。
左側には目印となるクレオパトラニードルも見えていたのに。。
不安の中でロープを伸ばしていく。クラックを詰めて頭に出てみるとガスの先にぼんやり岩峰が続いている。
次のピナクルの手前でピッチを切る。 シングルロープできたのでロープの流れがすこぶる悪い。
時間が刻々とすぎていく。 もし次のピナクルを越えた先が登攀不可能な地形なら・・・ 不安だけが倍増していく。
<左稜線後半3P目>かっきー
ナイフリッジの右をトラバース。 このあたりはV級程度が続くので不安の中でもロープを伸ばしていく事が出来た。
ここでもロープの流れが悪く短めにピッチを切る。
しかし先にはまだ岩峰が見えている。 ガスの中でこの精神状態だと必要以上に恐怖を感じてしまう。
<左稜線後半4P目>よっC
とにかくもう時間が無い。 行き詰ったらビバークするしかないと心に決めて出てくる岩壁をこなして行く。
すると急に地形が穏やかになり踏み後が反対側のコルに続いているのが見えた。
もしかしたらここはチンネの頭か?? 半信半疑ながら緊張の糸が緩んでいくのがわかった。

登りきった達成感なんてこれっぽっちもなく、ただ安堵だけが広がっていく。
もしここがチンネの頭だとしたら熊ノ岩に帰るにはどうしたらいいのか・・
ガスに包まれているので方向感覚がよく掴めない。踏み後を下ると狭いガリーのあるコルに降り立った。
周辺の概念図も頭に無いのでコンパスで方向確認しながら進む。
次の三ノ窓の頭の肩あたりからトラバースして次の八ツ峰の頭に登る。もちろんそんな名前は帰ってから調べたのだが。
実際のところはここはどこ?? 今立ってるのはどこ?? って感じ。

しばらく地形を見ながら考えていると「もしかしたら、ここは八ツ峰の頭ではないか??」とひらめいた!!
それなら池ノ谷乗越へ下れるはず!! 南に向かう踏み後をたどると見覚えのある地形に飛び出した。
まさしくここは池ノ谷乗越!! これでやっと帰れるぞ〜と思うとカラダの力がス〜っと抜ける思いがした。
長次郎谷のザレ場を下り、熊ノ岩のBPにたどり着いたのは日没寸前だった。

今夜は十五夜。雲が多いが月を眺めながら祝杯をあげた。
ずいぶん先に帰り着いていた滋賀県の二人組に聞いてみるとやはり僕達の登ったのは左稜線らしい。。
しかし、この時はずっと半信半疑でそれは帰るまで続き達成感は全くなかった。。

翌日は朝から雨。 完全に壊れてしまった山靴をザックに仕舞いクライミングシューズで室堂まで歩く。
この痛みはとても辛くて、苦しい下山だった。
ただ、剱沢雪渓で見た虹が祝福してくれてるようで心和まされる瞬間だった。   

今回の山行はまったくもっていいところが見当たりません。反省すべきところは大いに反省しなければいけないと思います。
それでも無事に登れたのはたまたま運がよかっただけでしょう。

 

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