黒部川 サンナビキ谷 2008年9月20日~22日
メンバー 大ちゃん、よっちゃん
9/20 鐘釣温泉(8:45)---黒二発電所(9:40)---サンナビキ谷出合(10:35/10:50)---3段30m滝(12:55)---取水堰堤跡(14:00)---二股(15:20) |
9/21 二股(7:00)---10m滝(7:40)---高巻き開始(8:35)---1112m地点支谷出合(18:20) |
9/22 テン泊地(6:35)---1753mピーク付近に上げる支谷出合(7:20)---高巻き開始(8:30)---北方稜線(12:00)---赤倉谷出合(14:00)---片貝川東俣林道(14:30) |
本文中の赤文字は写真あり
トロッコ電車で鐘釣駅へ | 黒部川本流を下っていく |
![]() |
|
なんとか本流徒渉をして左岸へ渡る | サンナビキ谷出合が見えてきた |
出合から対岸方面を眺める | 最初の3m滝 |
![]() |
|
下部廊下を登っていく | まだまだ順調 |
黒部の切り立った壁が続く | 3条5m滝 |
9月の飛び石連休の谷間に休みが取れたので4日間の日程がとれた。 4日間あるので今年の黒部はどこに行こうかと大ちゃんとやりとりしているうちに台風接近。 どうやら土曜日は潰れそうな感じなので残りの3日間で完了できそうな谷を捜す。 ぎりぎりまで悩んでいろいろな候補の中から名前のあがっていたサンナビキ谷に決定。 ここは谷名が魅力的なので前々から気になっていた。 さてサンナビキ谷と言えば出合が出平ダムに沈んでしまって入渓が困難とのこと。 大ちゃん情報によると今はバックウォーターがだいぶ土砂に埋まっていて、もしかしたらうまい具合に入れるかもとのこと。 さもなくば山越えでの入渓になるので雨の土曜日をアプローチで使えるかなと考える。 しかし台風一過の前日に天気予報ががらりと変わり土曜日は晴れに変わる。 その後もそんなに悪くはなさそうなので予定通り突っ込むことにする。 計画では中間部ゴルジュを越えたあたりの右支谷を詰めて駒ケ岳まで上がり僧ヶ岳経由で林道に降りる予定だ。 なので最初に1台僧ヶ岳林道を登って登山口にデポする。もう1台で宇奈月に移動し黒部峡谷鉄道で鐘釣駅を目指した。 久しぶりのトロッコ電車で観光気分。天気は予報通りの晴天、名のある谷を眺めながら気分よく進む。 トロッコ電車が出平駅を通過するころから黒部川左岸を注視。一瞬だけ見えるサンナビキ出合を確認するためだ。 バックウォーターに差し掛かるとそれらしい谷間が見えてきた。 大ちゃんの話しの通りだいぶ土砂に埋まっていて出合まで歩いていけるのを確認。ホッとひと安心。 喜んだのも束の間今度は本流の水量が今までの比じゃないくらい多くなっているではないですか。 一気に不安になる。はたして徒渉は可能なのか・・・ 不安をよそにトロッコ電車は鐘釣に到着。河原にある鐘釣温泉の露天風呂まで降りてから出発準備。 まずは水量少ない黒部川をらくらく下っていく。 不帰谷、似合谷、猫又谷の出合を見ながら下ると本流左岸に黒二発電所が見えてきた。 しかし広い河原でこれだけお天気だと暑い暑い。すでに両腕日焼けしてしまった。 さて問題はここから。黒二発電所から滔々と水があふれ出している。 最初は右岸の河原をらくらく進んでいくがいよいよ左岸に徒渉しなければいけない場所に到着。 うろうろとポイントを探すがここぞという場所が見つからない。 少し流れがきつそうだがなんとかなりそうな箇所でまずは大ちゃんがロープを使って泳ぎ渡る。 次に僕が流れに飛び込むがロープ渡渉がうまく機能せず少し流されながらなんとか左岸に移動。 しかし流されるとき左膝を強打。これが最後までひびいてくる。 左岸に渡ってしまえばあとは徒歩でらくらくサンナビキ谷出合に到着。 出合すぐに両岸が立って3m滝がある。ここで遡行準備をしていよいよ入渓。 3m滝は右から高巻いた。その上も谷中に圧迫感はないがまさに黒部な高い壁が続いている。 出合から続く下部廊下は快適に登っていける。どんどん進んでいくと右から枝谷が30m滝となって落ちている。 そこからすぐに2条滝で行き詰った。しかし右奥に2段滝があり全部で3条5m滝のようだ。 |
![]() |
|
右壁からロープを出して越えた | 3段30m滝 |
3段30m滝の下段15m滝と中段5m滝 | 下部廊下は続く |
取水堰堤はぶっ壊れていて取水していない | 10m滝は左から越える |
2段滝は左から巻き越えた | 河原に変わる |
![]() |
|
やや増水気味 | 二股付近のテン場 |
ここは左の2条は問題外。可能性のあるのは右端の2段滝だけだ。 大ちゃんが昔ゴムボートでダム湖は渡って入渓して途中までいった時にはショルダーで登れたらしい。 しかし今日の水量ではそれは難しい。ロープを出して大ちゃんが右壁に取りついた。 そのまま1段目上に降り立つと2段目は倒木を利用して滝上へ登る。さすが大ちゃん。 僕はロープを使ってなんとか滝上へ。やれやれ。 その後はまた快適に登っていく。すると前方に大きな滝が見えてくる。3段30m滝のようだ。 これは無理なので右から高巻く。高く上がり過ぎてしまい最後は懸垂で滝上へ降り立った。 その上も廊下状は続くが谷中は大岩が積み重なっていてどんどん傾斜をあげるので疲れる。 しばらく登っていくと10m滝がありその上に取水堰堤が見えている。 振り返ると完全なV字渓谷でまだ黒部川右岸の山が近くに見える。 取水堰堤は壊れていて水も取っていないようだ。なるほど以前より下部の水量が多いはずだ。 このころから雨がザーザー降り出した。今日は晴れのはずだが・・・ どういうこと!? すぐに出てくる10m滝は左の大岩から乗り越えていける。 その後も大岩の積み重なった地形が続くが、途中あった岩小屋で雨宿りしながら雨脚が弱まるのを待つことに。 20分ほどぼんやりしていると雨が弱くなってきたので行動再開。2段滝を左から巻き上がると下部廊下を抜けて河原に変わった。 しばらく河原を進んでいくとふたたび谷幅は狭まるがとくに難しいところはない。 水量は雨でやや増水し濁っている。下部廊下通過中に降られなくてよかった。 再び開けた地形に変わると二股になっていて本谷は右俣。これ以上進むと中間部廊下に入るので今日はここで終了。 二股を過ぎてすぐのところにテン泊に適した場所があったのでそこにシェルターを張った。 すぐ先で川霧とは違ういやな霧がかかっているのでみて見るとやはりスノーブリッジの冷気によるものだった。明日が思いやられる。 しかし睡眠不足もあって止まない雨にどんよりした気分で寝入ってしまった。 |
![]() |
|
2日目出発直後からSBのお出まし | 谷中は冷気に包まれている |
ズタズタの雪塊を乗り越えながら進む | このブリッジは後ほど崩壊 |
活路を求めて進んでいく | 10m滝で行き詰まった |
中間部廊下入口まで戻り高巻き開始 | 中間部廊下はズタズタの雪渓で覆われていた |
翌朝も雨降り。黒部川本流を渡って退路を断ってきたのでとにかく進むしかない。 歩きだしてすぐにスノーブリッジの登場。ここは簡単に越えて進んでいく。 15分ほど歩くと右から支谷が滝で落ちている。そこから5分ほどで今度は左から支谷が滝で落ちている。 その後いよいよ両岸が狭まってきて中間部廊下に入ったようだ。 すぐに前方から嫌な白い冷気が漂ってきて谷中を包み込む。進んでいくとスノーブリッジの残骸がごろごろころがっている。 ズタズタの雪塊を乗り越えながら進むといよいよスノーブリッジがある。 ここは足早に通過する。次に小滝を右壁から乗り越えて再び雪渓の中へ。 活路をもとめて前進していく。すると無情にも前進不可な10m滝が立ち塞がった。 ロープを出したりしながらいろいろトライするが雨も強くなりこの場所の危険度が高まっていくのがわかる。 廊下入口まで戻って高巻くことに決定。そうと決まればすみやかに戻る。ブリッジをくぐる際は祈るような気持ちになる。 黒部の谷は高巻きも大変だ。地形図を確認して廊下入口から右岸を高巻き開始。 もろいルンゼを登り右手の小尾根に乗りあがり灌木を頼りにモンキークライムで登っていく。 どこまでも傾斜が緩まらない。するとドーンと崩壊音とともに先ほどくぐったブリッジが崩れるのが見えた。ひえ~ 5分もしないうちに今度は違うスノーブリッジが爆音とともに崩壊する。 かんべんしてくれと思っているとまた違うブリッジが・・・ その後もブリッジの崩壊音を何度か聞く。 こんな状態で谷に戻る気分にはなれない。結局200mほど上げてからトラバース開始。 灌木を頼りに急斜面を横切っていく。小尾根を乗り越えルンゼに懸垂下降してまたモンキークライムで登り返して。 その繰り返しで藪をこいで500mほど進むと僕たちが駒ケ岳に詰める予定の支谷が見えてきた。 その手前はスノーブリッジがないのであそこまでいきたいが壁が立っていてトラバースできそうもない。 真下の谷に戻れそうなの地形ではあるのだがズタズタのスノーブリッジにあの連続崩壊音を聞くと戻る気にもならない。 そのうちガスが出てきて視界を覆ってしまった。 時間はどんどん過ぎていき日没の問題も深刻になる。 地形図を確認し傾斜がゆるそうな谷が南に方角を変えた1112m地点あたりを目指してトラバースしていく。 ガスで視界の無い中を地形図とコンパスを頼りにそれらしい枝尾根を乗り越えたあたりから懸垂下降開始。 このあたりでいよいよ日没してしまう。ヘッデンの明かりを頼りに懸垂下降3回で枝沢に降り立った。 あとは滝がでないことを祈りつつ下っていくと無事に本谷と合流。まさにラッキーとしかいいようがない。 想像以上の大高巻きになりへろへろだ。結局9時間半高巻いていたことになる。 本谷を少し上がって地形図1112m地点あたりでテン泊できそうな場所を整地してシェルターを張る。 急ごしらえにしてはなかなか快適な寝心地だった。 真っ暗な中晩御飯を食べてさっさと寝てしまう。一晩中雨は降り続くが朝方にはあがっていた。 |
開けた河原状の本谷を登っていく | 1753m付近にあげる支谷を詰めることに |
谷は狭まり廊下になる | 滝が連続するようになる |
ここはロープを使って乗りあがる | 滝が連続して高度をあげていく |
![]() |
![]() |
また出たスノーブリッジ | 雪渓をきらって左岸尾根を猛烈な藪こぎで登る |
![]() |
![]() |
3時間半の藪との格闘 | 片貝川赤倉谷左俣を下降 |
翌朝は晴れてはいないが雨はやんでいる。明るくなったので現在地を同定するとぴったり1112m地点にいてるようだ。 ここから計画通り駒ケ岳に詰める支谷目指して下降していくがあと少しのところで滝が出てきた。 昨日の大高巻きの間に懸垂用に残置スリングを使いまくったので残りは1本しか残ってない。 懸垂して降りたとしても支谷の状況がここからではわからないので 安全策をとって本谷を登って途中に入る支谷から北方稜線に登ることにする。 そうと決まれば降りてきた谷をUターンして登り返していく。このあたり開けた河原状で問題なし。 まずは右に滝で入る支谷を見る。これは地形図を見る限り上部がとんでもないことになってそうなのでパス。 次に右に入るのがテン泊地にした1112m地点の支谷。しかし次の1753m付近にあげる支谷の方が短そう。 しかも登山大系にも載ってるのでそれを登ることにする。支谷に入ると谷は両岸立って滝が連続するようになる。 ロープを出したりしながらも順調に登っていくとまたスノーブリッジが出てしまった。 見るからにやばそうなブリッジが奥まで続いている。ここは安全策で右の尾根に乗りあがってそのまま北方稜線を目指す 雨でぬかるんだルンゼを登り始めるがとても悪くロープを出すことに。 大ちゃんがロープを引っ張っていくが、ビレイしてると落石がびゅんびゅん飛んできて生きた心地がしなかった。 そんなことより悪い斜面にロープを張ってくれた大ちゃんに感謝しながらアッセンダーで安全に登っていく。 50mほど登ると灌木帯になったのであとはモンキークライムで尾根を目指す。 最初のうちはマシだったが尾根に乗りあがってからが猛烈な藪に悩まされる。 とにかく進まなければ帰れないのでひたすら藪をかきわける。 3時間ほど藪と格闘してようやく北方稜線に到達。しかし視界はガスで真白。 北方稜線には当然踏み跡などなくこれを駒ケ岳まで進むとなると今日中には帰れないだろう。 確実なのはこのまま片貝川に下ることだ。大ちゃんも同意してくれたので片貝川下山に計画変更。 今度は反対側の藪に突入してひたすら下っていく。登山大系ではこちらは赤倉谷と言って下降が容易らしい。 ガレた谷が少しづつ集まりそのうち水が流れ出した。ひたすらガレガレの谷を下ると左から右俣が合流。 ようやく沢らしくなってくる。どんどん下ると滝場が2か所ほど出てくるがロープを出すほどではなかった。 あとは快適な下降で片貝川東股に合流。東股を下っていくと堰堤を二つほど越して林道が出てきた。 しかしこちらの地図はもってきていない。どこまで歩いたらタクシーを呼べるのだろうか。 今までの経験上10kmくらいは歩かないとだめなのでは・・・ あてもなく下っていくと北俣林道からなんと工事用のダンプカーが降りてきた。 お願いしてみると快く乗せていただくことができた。おまけに黒部IC近くの地鉄の駅まで!感謝しまくりです。 これで明るいうちに宇奈月温泉に戻れることになった。 ダンプカーで街まで降りてみると快晴のお天気。振り返って北方稜線だけはどんより雨雲の中だった。 今回はズタズタの雪渓と3日間降り続いた雨に苦しめられた沢旅でした。 さすが黒部。一筋縄ではいかせてもらいません。しかし険谷サンナビキ谷を体験できて満足な3日間でした。 つねにロープを引っ張ってくれた大ちゃんに感謝です。 |