天狗ノ頭 間ノ岳
天狗ノ頭も展望が素晴らしい。今しがた越えてきた間ノ岳が目の前に見える。
反対側は奥穂高への岩稜帯が頭上に迫る。
天狗からはハイマツのジグザグ道を下って行く。
技術的には何の問題もない道だがこのあたりになると逆ルートの登山者と
どんどんすれ違うので落石だけのないように歩く。
天狗のコルまでは楽勝と思っていると最後の最後に鎖場出現。

 

天狗のコルの鎖場
事前に研究してたけどうっかりこの鎖場は忘れていた。
西穂から奥穂に向かう場合の難所のひとつだった。
この岩場はオーバーハング気味になっていて降りる際にステップが見えない。
一歩降りるごとに身を乗り出して次のステップを探さなくてはならない。
重心がとれないので重いザックを投げ出したくなる。
手足に擦り傷を作りながらも無事に天狗のコルに降り立つ。

 

天狗ノ頭 登山道
天狗のコルは唯一エスケープルートがある場所で岳沢まで降りることが出来る。
避難小屋の跡を右側にみていよいよ今日最大の登りにとりつく。
岩の斜面をぐんぐん高度を上げていく。背中のザックが重く感じる。
振り返ると天狗ノ頭が見える。この時間になるとガスが出てきた。
視界が閉ざされていく。何も考えず目の前の岩場をひとつひとつ越えていく。

 

ルンゼ状の鎖場 ジャンダルムから奥穂方面展望
さすがにこの登りは体力を消耗させる。ザックが重い。
今度はルンゼ状の鎖場が立ちはだかる。いやな場所だ。
こんな場所で落石がおこると逃げれない。はやく通過したいが身体が重い。
ルンゼを越えて少し傾斜が緩やかになる。それでも岩稜帯の登りはつづく。
ようやく大きな岩が重なり合ったコブの頭に到着。すこし下ったところが
ジャンダルムとのコルだ。ここで荷物を投げ出してへたりこむ。
だいぶ疲れてるみたいだ。
空身になってジャンダルム(3163m)の頂上をピストンする。
残念ながら頂上からはガスで視界が悪い。奥穂の人で賑わう声がガスの中から聞こえる。

 

ロバの耳のトラバース 馬の背への岩稜
コルに戻りザックを背負ってジャンダルムをトラバースする。
信州側をトラバースするのだが足元から切れ落ちていて高度感がある。
このあたりで自分でも限界にきてるのがわかる。集中力が落ちてるようだ。
奥穂までもう少しだが安全策をとって大休止することにする。
パンとチョコレートを食べて少し何も考えずボーっとすごす。
30分程休み出発。まだ本調子ではないが進むことにする。
まずはロバの耳をトラバース。今度は飛騨側を行く。疲れた身体にはきつい岩場だ。
そして間髪をおかず馬の背が立ちはだかる。

 

ここまで難所が続くともう勘弁してくれっていう気分になってくる。
でも進まないとたどり着けない。馬にまたがるように重い身体を持ち上げて行く。
足元が切れ落ちてるが、高度感はとうに麻痺している。
馬の背の難所を越えて岩稜帯をへろへろになりながら登るとやっと山頂が見えてきた。
西穂のテン場を出て8時間30分やっと奥穂高岳(3190m)の頂上に到達できた。
ザックを投げ出し山岳展望盤に抱きつく。やった〜。

 

時々ガスが晴れてジャンダルムが姿をあらわす。いつ見てもかっこいい姿をしてる。
ここまできたらやっと涸沢を見下ろすことが出来た。さてどうしようか?
涸沢に下るか、岳沢に下るか。今接近してる台風の進路次第では大阪に帰れなくなるはず。
すこしでも早く地上に近づくには岳沢だな。
行く先を岳沢に決定。吊尾根方面に歩き始める。

 

奥穂高岳とジャンダルム 穂高の稜線
吊尾根はさすがに今までの道に比べ歩きやすい。最初に長い鎖場を降りれば
あとはアップダウンの少ない道を快適に進んで行く。
最低鞍部を過ぎて少しで紀美子平に到着。
いよいよ岳沢へのきつい下りの始まりだ。
まずは一枚岩の長い鎖を下る。登山客が多いので順番待ちをする。
鎖場をすぎぐんぐん下って行く。ザックの重さが苦痛だ。足に力が入らない。
ガスがきれて太陽がガンガン照り付ける。それでも歩かなければたどり着けない。
途中雷鳥の親子に励まされながらようやく樹林帯に。しかし道はなおも急下降を続ける。
すこし道が緩やかになりジグザグに下って行くと岳沢のテン場に飛び出した。
到着は15:58。まるまる12時間の行程だった。
翌朝5時前に出発。樹林帯の道を上高地までのんびり歩く。今朝も快晴。
梓川のほとりから見上げると昨日歩いた稜線が目の前に広がっていた。

 

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