◇伝道師室より◇

7月23日九州沖縄サミットは終わった。注目されていた重債務国の債務棒引き案は余り進展が見られなかった。「ジュビリー2000」と名づけられたこの運動は、イギリスのロックバンド「U2」のボノによって始められた。

ジュビリーとは、旧約聖書に由来する「聖年」いわゆるヨベルの年のことである。古代イスラエルではレビ記25章にあるように、50年ごとに巡ってくるこの年に、すべての借金が棒引きになったと言われる。

ジュビリー2000は、2000年中に重債務貧困国40ヵ国が抱える約2,700億ドルの債務を帳消しするよう日本や欧米などに呼びかけてきた。このうち、日本は政府開発援助(ODA)と、非ODA合わせて1兆1千億円強(100億ドル強)の最大の援助国であり、サミット議長国である日本の姿勢が問われていた。

昨年のケルン・サミットで「2000年までに30ヵ国程度」を削減目標としたが、現在までのところ9ヵ国、86億ドルの帳消し決定を受け入れただけで、実行は僅かである。内容は、ODA債務の100%免除で、その後貿易保険などの非ODA債務の100%帳消しが加えられた。2000年末までに、11ヵ国の削減国が追加され目標が20ヵ国に下げられたが、実行の大きな障害になっていることは次の二つである。

一つは世界銀行とIMFが求めている「構造調整プログラム」の実施、二つ目は「貧困削減戦略ペーパー」の作成が義務づけられていることである。しかし、貧困国政府にはこうした作業をするための人材やノウハウが不足している。さらに、大きな懸念材料である貧困国内外の紛争が、その実行を阻んでいる。 九州沖縄サミット開催費用800億円でガンビアの債務が帳消しされ、1,200万人の子供を学校にやれると言うのにである。

「キャビアを食べながら重債務国討議」と皮肉った英国紙の論評は的を得ていると思われる。