牧師室より

読書も、映画鑑賞も、心に残るかどうかは、その作品に問いが含まれているか否かにかかっていると最近思うようになった。ちなみに聖書は、私にとって常に何かの問いを含む。先週、一日に二つの映画を鑑賞した。どちらも上映期間が短く、やむなく映画館をはしごしたのだ。一つは『大地よ アイヌとして生きる』(監督:金 大偉)。詩人であり古布絵作家である宇梶静江さんをめぐる「ドキュメント映像詩(パンフレットの紹介文より)」。そして『ガザ 素顔の日常』(監督:ガリー・キーンとアンドリュー・マコーネル)。2019年制作の、ガザ地区の地中海沿岸に生きる人々の日常のドキュメンタリー。どちらも貴重な記録。アニミズムに注目する金監督は、宇梶さんがアイヌの神々に問う姿をとらえている。素顔のガザ市民の日常からは、なぜここが戦場になるのかという重い問いが発せられているのを感じる。どちらも、自分が害を為す側の、その背後からその問いを聞いているような思いにさせられた。  (中沢麻貴)