◇牧師室より◇
「天声人語」(朝日新聞2023年9月26日)に、リビアについての話題があった。 紹介する。「リビアとは、古くはアフリカ北部を広く指す言葉だった。そして一帯は旧約聖書『創世記』の伝説の舞台でもある。愚かな人間によって、世界が悪で満ちてしまったと後悔した神は、恐ろしい決断をする。洪水で地上を一掃しよう、と」とある。そう、ノアの洪水物語の舞台として、古代リビアを紹介していたのだ。 今年、リビアは洪水に見舞われた。豪雨のためにダムが崩壊したので、自然災害とも言えるが、国の東西で分裂状態が続いていたことから、人災とも言われている。災害が起きることは、十分に予測されていたのに対応しなかった人間の罪が、「洪水物語」の罪の問題と重ねられたのだろう。罪の結果というならば、福島の原発事故も例外ではない。津波の危険性はすでに指摘されていた。 ノアの息子ハムは、古代リビアの民の先祖となったとある。聖書には「レビハム人」として、リビア人の祖が記されている。「天声人語」は、「人間の愚かさとは改まらぬものなのか。もどかしい」と閉じられていた。 (中沢譲)