牧師室より

1894年にコプト語(古代エジプト語)で書かれた「パウロ行伝」なるものが発見された。この行伝の中に、「パウロとコリントの往復書簡」(「コリントの信徒への手紙 三」を含む)というのがある。別途、ギリシャ語写本が知られているので、この書簡が3世紀には存在していたことが確認されている。一部の教会で「正典」としたこともあったが、現在では「偽典」として扱われている。  この書簡の序文に、コリントの教会の人たちの中に、神が創造主であることを否定し、復活をも否定する人たちの存在が挙げられていて、そのことが執筆の動機とされている。新約聖書(正典)のコリント書簡との類似点は、誤った福音理解を正そうとする思いである。「常識」や「科学」によって聖書を理解しようとする歴史が、意外に古いことを知らされる。        (中沢譲)