牧師室より

 ルカ福音書は、「野宿しながら、夜通し羊の番をしていた」羊飼いたちに、天使が救い主誕生を告げたと記す。この話を子どもにすると、ベツレヘムの町に羊飼いたちが出かけるとき、羊はどうしたのとよく聞かれた。絵本では、羊を連れた羊飼いが馬小屋を訪問している絵も見かける。だが、放牧している羊を夜間収容する共同使用の柵囲いのようなものが各地にあったらしい(ヨハネ福音書10章の「羊の囲い」参照)。ルカに登場する羊飼いが夜通し番をしていたのは、狼より人間の泥棒対策だったかもしれない。彼らは泥棒の心配より救い主に会いたい気持ちが勝ったのだろうか。

 この国は「何かあったらどうするんだ症候群」に罹っているという批判がある。防衛費増大より、誰かに会いに出かけることのほうに希望がある気がしてならない。(中沢麻貴)