牧師室より

 キリスト教において、洗礼とは重要な典礼であるが、この典礼は洗礼者ヨハネにおそらく由来する。しかしヨハネが洗礼を採用した理由は分かっていない。ユダヤ教の一派であるエッセネ派の沐浴が起源だという説もあるようだが、エッセネ派は、清めのための儀式として沐浴を繰り返し行っていたので、これを洗礼の起源だとする根拠には乏しい。また、イエス自身はヨハネから洗礼を受けてはいるが、洗礼を採用したのがイエスであるのか、初代教会の判断であったのかも分かっていない。なぜならば、イエスが弟子たちに洗礼を授けた記録がないからだ。しかし起源が不明だとしても、早い時期から洗礼を採用していたことは、聖書の記録から分かる。

使徒言行録には、ペトロが「イエス・キリストの名によって」(2:38)洗礼を授けていたとある。この場面でペトロは、「悔い改めなさい」と語りかけているので、洗礼者ヨハネの影響を感じる。

 使徒言行録836節には、エチオピアの宦官がフィリポに、「ここに水があります。洗礼を受けるのに、何か妨げがあるでしょうか」と願いでた言葉があるので、洗礼に先だって信仰告白がなされた形式を想像させる。今年も8月を迎える。イエスが主であると告白した信仰の原点に立ち続けたい。          (中沢譲)