牧師室より

 中村 敏氏という日本のキリスト教史の研究者が、その著作の中で、豊臣秀吉によるキリシタンへの弾圧がはじまる前の1580年頃のキリスト教人口を、約35万人だと算出していました。当時の人口の1%を越えていたそうで、現在の日本のキリスト教人口よりも多かったと分析していました。

 それほどまでにキリスト教が広がった理由の一つとして、森島 豊氏という研究者は、宣教師が葬儀を行ったからではないかと指摘していました。日本には、死を忌み嫌う慣習があるため、葬式も行わず、「野捨て」することも当時は珍しくなかったと言います。ところが宣教師たちは、亡くなられた方を大切に扱って葬儀を行ったため、遺族は深い慰めを与えられ、そのことが宣教の業になったとしていました。省みられることのない人生を送っていた人たちに、インマヌエルの神を示したのでしょう。

誰もが空しくされない、それが福音であるということを、あらためて知らされました。    (中沢譲)