◇牧師室より◇
『民主主義のあとに生き残るものは』(アルンダティ・ロイ著・岩波書店)を紹介する。アルンダティ・ロイ氏は、インド出身の作家である。
本書は、2011年月3月13日に、東京で予定されていた「幻の講演」を翻訳したものだ。なぜ「幻の講演」になったのか。それは3月11日に東日本大震災が起きたからだ。ちなみに彼女は10日に来日していて、東京で震災を体験している。
アルンダティ・ロイ氏は、「私たちは民主主義にいったい何をしてしまったのか」を問う。さらに「民主主義の寿命が尽きたとき何が起こるのか」「民主主義が空虚となり意味を失ってしまったのはいつからなのか」……と矢継ぎ早に疑問を投げかける。彼女は民主主義には賛成しているが、それは機能していないと認識しているのだ。そしてこう語る。「この惑星の生存のために私たちが必要としているのは、長期的な視野である」と。
私たちはいろいろな危機の中に置かれ続けているが、「明日の教会」を考える場合にも、「長期的な視野」が必要だと感じた。 (中沢譲)