牧師室より

 大学の動物発生学研究室で卒業研究をしていた頃、コンタミネーション略してコンタミという用語をよく使った。日本語なら「汚染」である。細胞分裂しはじめたイモリの卵から未分化細胞の塊を、顕微鏡下で、自作の極小ガラスナイフやメスを使って切り出し、細胞を分化させるかもしれない物質を挟み込んで培養。細胞塊の変化を調べ、細胞分化を促す物質をつきとめるのがテーマだった。必要な試薬や培地を作成し、研究室で飼育しているイモリから採卵し、細胞培養後に組織標本を作製するまで、一人で全部行う。一サイクルが一か月程度。最も恐れたのが、培地や道具が細菌やカビなどで汚染されること。少しでもコンタミすれば、一か月がぱあになってしまう。手指の消毒、実験中の慎重な動作、器具の滅菌など、徹底することを学んだ。次第に、細心の注意が必要なポイントと、そう神経質にならなくてもよいことがわかるようになり、ストレスは軽減した。今、コロナ対策であの頃のことを思い出す。(中沢麻貴)