牧師室より

 最近、宮田光雄さんの文章に、はまっています。インターネットの百科事典「ウィキペディア」には、「政治学者、思想史家、学生伝道者」と紹介されていました。私たちの教会で講師として招いたこともあるキリスト者です。

 『宮田光雄集 聖書の信仰』第1巻に、「それでもなお〈りんごの木〉を植える」という項があります。この言葉は、ルターが語ったとされる言葉のアレンジです。

 この文書は、20世紀の終わりに書かれたようですが、当時起きた出来事は、阪神大震災であり、サリン事件でした。宮田氏はそれらの出来事を契機に、世紀末的な歴史事件を振り返っています。そして神学者ティリッヒの「存在することへの勇気」という言葉を軸にして、私たちが存在することの根拠を語るのです。    

難しい表現になりますが、「神によって、私たちが存在すること=生きることを許されているという人間存在の根源的事実に対する基本的信頼」が、「世紀末的不安を越えて『リンゴの若木を植える』希望と勇気」につながるのだと言うのです。ひと言で言えば、神様に対する信頼があれば、希望に生きることができる、ということなのだと思いました。

私たちは神様から存在することを赦されているのです。その事実こそが、私たちにとっての希望であることを知らされました。     (中沢譲)