牧師室より

「土の器」(作詞&作曲:田中瑠美子)という歌を発見した。

「土の器、欠けだらけのわたし/その欠けからあなたの光がこぼれ輝く/ 土の器、ヒビだらけのわたし/そのヒビからあなたの愛が溢れ流れる」(以下省略)。

 これはコリントの信徒への手紙二のパウロの言葉、「ところで、わたしたちは、このような宝を土の器に納めています。この並外れて偉大な力が神のものであって、わたしたちから出たものでないことが明らかになるために。」(Uコリ4 : 7)が出典だと想像しています。

 詩人の島崎光正さん(故人)が、この同じ聖書箇所について、こう述べています(『傷める葦を折ることなく』1981)。「ここでパウロが言っている『土の器』とは、要するにこわれやすく、うつろいやすい、人間の外側の世界のことである」「いずれは衰えやがて朽ちていくのである」と。

しかし島崎氏はこう付け加えます。「しかし、パウロはここで、かかる『土の器』の中に『宝物を持っている』のだと断言する。『宝』とは、申すまでもなく、イエス・キリストからたまわる福音の力である。そして、土の器であればこそ、この力をあらわし示すのに、何よりの条件だというのが、パウロがもっとも言いたいところなのである」と。

「欠けだらけ」「ヒビだらけ」の私たちであるからこそ、証しするのに相応しいということでしょう。そして今、この時にこそ、福音は必要とされているのです。 

 (中沢譲)