牧師室より

 かつて東京にいた頃、野宿労働者の生活支援(山谷)とDV(家庭内暴力)被害者支援の二つの団体の立ち上げに関わりました。二つの団体は姉妹関係にあり、チャリティーイベントでは一緒に活動しています。

 コロナウイルス感染症の広がりの中で、どちらの運動体も“自粛”したいのでしょうが、こういう時だからこそ、逆に忙しくなっています。

東京都内で炊き出し(夜回り)を行っている団体は30ほどありますが、現在、その半数が活動を休止。そのため、残りの半数の団体で、野宿者の支援を行うことになっています。この状況下で活動している団体ということで、マスコミからの取材も増えているようです。その結果、ボランティア希望者も増えているので、人手不足ではないのですが…。

 DV被害者支援の方も、当然忙しくなっています。すでにマスコミでも報道されているところでもありますが、外出の自粛要請で、家族が“密”の状態になり、DVの発生が増えているとのこと。

 そもそも、どちらの問題も国や行政が放置してきた問題であり、市民団体に押しつけてきた、緊急性のある問題です。今回のコロナウイルス発生により、支援団体の休止やDVの増加は、市民団体の対処能力を超える事態だと感じています。またDVの問題にも関連していますが、母子家庭の貧困(子どもの貧困)、高齢者の貧困問題も深刻になっているのではと危惧しています。

 私たちは自分たちの身を守るのに精一杯な状態ではありますが、想像力を豊かにして、マスコミの報道の陰に隠されている事柄に、注視し続けたいと思うのです。 (中沢譲)