牧師室より

 聖書に、「重い皮膚病」という言葉がある。感染性の皮膚病で、重い症状にも至るという特徴から、ハンセン病のことだと理解されることも多く、古い翻訳で「らい病」という訳語があてられていたことを記億しておられる方もあるだろう。実際には、聖書中、人の皮膚だけでなく家屋の壁にカビが生えたような状態まで、同じ言葉でひとくくりにされているので、現代医学で定義する一つの疾病を意味してはいないと最近では考えられ、聖書の訳語もいろいろ工夫がなされるようになってきた。

ハンセン病の病原菌が特定されたのは、19世紀末。それまでは、原因が目に見えず、得体の知れない脅威であったわけだ。いま、新型のウイルスによる伝染病の蔓延が危惧される事態となって、律法さながらの様々な隔離や予防の方策が打ち出され、人々は目に見えない恐怖に日々直面することとなった。悪疫は、人々に分断をもたらし、恐怖は社会に不寛容を蔓延させる。このウイルスから「新型」の名称が取り去られるのは、いつの日だろうか。

「目を覚ましていなさい(マルコ1337ほか)」。各地の教会は、祈りつつ、それぞれ懸命にこの状況に対処しようとしている。しっかり目をあけて、今起きていることを注意深く心に留め、覚えておきたい。私たちの信仰は、「重い皮膚病」の時代の経験からも、多くを学んできたはずなのだ。      (中沢麻貴)