◇牧師室より◇
4月19日、「アイヌ民族支援法」(アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律)が参議院本会議で成立した。アイヌ民族が「先住民族」であることが、法律によってはじめて規定された点で、画期的であったと言える。今後、アイヌ民族の文化・産業・観光振興のための事業を政府が支援し、「国立アイヌ民族博物館」(北海道白老町)等が、来年4月までに開設されるという。ただし不足はある。「先住民族の権利に関する国連宣言」(2007年)には、奪われた土地の原状回復や補償などが明記されているが、今回の法案には、アイヌ民族の自決権・教育権などは盛り込まれていない。文化・言語・宗教などの具体的な回復については、まだまだ困難な状態にある。
不思議なことに、このアイヌ新法を快く思わない人たちがいる。ネット系右翼団体は、「アイヌは無理やり同化を迫られたのではなくて、自ら進んで“日本人”になった。いまさらアイヌを先住民族として認めるのは日本の分断・解体につながりかねない」「アイヌを先住民族と認めよというのは“利権狙い”だ」「アイヌ利権はカジノ利権になる可能性が高い」「アイヌ協会は北朝鮮関連団体と親密な関係にある」などと主張しているという(香山リカ「アイヌ新法の国会提出と雑音」『創』3月号)。
ところで『ゴールデンカムイ』というマンガ(アニメ)をご存じだろうか。日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌと和人たちの姿を描いた作品で、販売数は1000万部を超えているという。アイヌ文化を丁寧に描いた点で評価されている。まずはアイヌの歴史と文化を勉強することが、和人には必要なのだと思う。 (中沢譲)