牧師室より

月刊『ジャーナリズム』(5月号・朝日新聞社)の特集は、「移民社会へ  − 改正出入国管理法の施行で変わる日本」であった。ここでは西日本新聞・坂本信博記者の「泥縄式の労働開国で地域にひずみ『新移民時代』取材班が見た実情」から紹介したい。

 同記者は取材先のカトマンズの雑居ビルの壁に、真新しい看板を見つけた。そこには「日本の黄金の仕事の機会」とあったという。昨年12月に、出入国管理及び難民認定法(入管難民法)「改正」(=改悪)の報を聞き、現地の介護人材仲介業者が出した広告なのだそうだ。

 同雑誌には、201932日付、西日本新聞社の朝刊記事の写しが掲載されており、「『黄金の仕事』貧困層殺到」「下火の日本語学校『特需』」という見出し記事が紹介されていた。その記事の内容はネパールの新聞記事にも触れていて、大手の英字紙カトマンズポストは1面記事で、「日本がネパール人労働者にブルーカラービザ(現場作業労働ビザ)を与える」。ネパール語の別の大手紙でも、「留学は費用が最低120万ルピー(約120万円)かかったが、ワーキング(労働)ビザはお金を払わずにいけるようになるよう願う」「月給は15万ルピー以上になりそうだ」などという記事が紹介されていた。そして「費用なしで公務員の5倍の月給」の噂は、ネパールの貧困層には「ジャパンドリーム」と映っていると、西日本新聞は伝えていた。

日本政府が計画する受け入れは、5年間で345150人。受け入れ先の産業は介護、外食、建設など14業種。対象国は、ネパールをはじめとする9カ国である。「特定技能」の認定試験(日本語、業種別技能)を行うとしているが、これら9カ国は、すでに日本の現場労働を支えている「技能実習生」派遣国でもある。つまり人手が足りないので、「技能」を口実に、もっともっと外国人労働者を、というのが政府の本音であろう。労働問題が起きるのは、火を見るよりも明らかである。それでも「黄金の国ジパング」を目指すアジア人労働者が押し寄せるだろう。教会がアジール(聖域・避難場所)としての役割を果たす時代が、目の前に迫っているように思う。    (中沢譲)