牧師室より

 雑誌(マガジン)と本(ブック)の中間型の出版物を出版業界の造語でムックという。作りは雑誌的だが、ある程度の期間発行され続けるところが本的である。前任の教会で会堂建築資金のためにバザーをはじめた頃、たまたま『家じゅうの布から 布ぞうりを作る!履く!』というタイトルのムックを手に入れた(発行から10年以上経つので今はさすがに絶版)。着物でもTシャツでもネクタイでもカーテンでも風呂敷でも、工夫すれば布ぞうりになる、というところが面白くて、布ぞうり作りを始めた。バザーにも出品したところ、買っていただけたので嬉しかった。以来、自分用にもバザー用にも、布ぞうりを作る習慣ができた。

 何度か人から請われて作り方を伝授したが、現在それはしていない。時間的に無理だからである。布ぞうりの編み方には、いくつかの流派のようなものがある。編み台のような道具を用いる方法もあるが、私のやり方は、昔のわらじ作り同様、足指にヒモをかけて編む原始的な方法だ。鼻緒を作る際の小さな道具は手作りした。特殊な器具なしで、コツさえつかめば簡単に編める。ただし、足指を使って編むと困ることがある。作っている最中に電話がかかってきても、来客があっても、即座には立ち上がれないのだ。ゆえに、バザー前には、電話も来客も心配せずにすむ深夜か夜明けに、せっせと布ぞうりを編んでいる。

 継続的に作れる理由は、もうひとつある。バザーに、様々な布が出品されることがあり、それは縫物の上手な方が、高齢になったり忙しくなったりして、布製品の手作りをなさらなくなってのことだったりする。洋裁をされる方からは良質の服地が、パッチワークをされる方からは綺麗な柄の端切れが出品される。一方で、縫物をされる方は減っているのか、買い手がなかなかつかないこともある。素敵な布がもったいないと思うが、私は縫物が大の苦手なのだ。でも、ぞうりなら編めるので、ありがたく布類をふんだんに買わせていただいている。    (中沢麻貴)