牧師室より

 忙しくしているうちに、フキノトウの季節が過ぎ、蕗(ふき)味噌を作りそこねてしまった。フキノトウは、フキの未熟な花芽である。実は、これに雌株と雄株がある。雌株は花房が黄、雄株は白の色味を帯びている。拡大して観察すると、雌株の花には、やがて種子を作る雌しべと退化した雄しべがある。雄株の花には、花粉を作る雄しべと退化した雌しべがある。種子植物には、両性花と呼ばれる、一つの花に雄しべと雌しべがあるものも、カボチャのように雌雄異花で、一個体が雄花と雌花を別々に咲かせるものも、フキのように雌雄異株で、雄花を咲かせる雄株と雌花を咲かせる雌株のあるものもある。そして上で述べたように雄花にも雌的性質が皆無なわけではなく、雌花にも雄的性質が皆無なわけでもない。

 動物は、どうだろうか。ワニやカメなどでは、卵の孵化までの温度条件で、生まれる個体の性別が決まる。例えば低温なら雄ばかり、高温なら雌ばかり、中ぐらいで雄雌半々などという場合がある。また、ゾウリムシには雌雄どころでなく、16通りの性別があったりする。ガンやカモなどの大型の水鳥の群れを観察すると、繁殖期には、雄雌のペアが多く形成され、巣作りと産卵子育てが見られるが、中には雄と雄がペアになって子育てせずに過ごしているものもいることが知られている。

 まだまだ語りたいが、このへんで自制しよう。要するに、生物の世界において、性には、実に柔軟で奥深い多様性があるのだ。人間の世界ではどうか。多様性を積極的に認めようという機運が出てきたので、性的マイノリティーとかLGBTという言葉で、男女という二分法とは違う見方で、人のありようの多様性を尊重しようという人権感覚が育ちつつあることは、良いことだと感じる。

 役員会に提案し、賛成を得られたので、週報の表記から、氏名につけていた「兄・姉」の呼称を省くことにした。また、集会出席者数の報告も、男女別に数えることをやめた。そして、礼拝への来会者に記名していただいている受付の名簿も、男女別にすることをやめた。小さな一歩である。             (中沢麻貴)