牧師室より

 オロカモノの見た夢か幻。

 20XX年、自衛隊はついに解散し、国際災害救助隊が結成された。同時に日本からすべての米軍は撤退、政府は今後いかなる軍事的な同盟関係も他国と結ばないことを宣言した。自衛隊と米軍の使用していた土地の一部は、災害救助隊の基地と研修施設に作り替えられた。武器の解体とリサイクル、用地のクリーニング、新たな施設の建設などで、各地に経済効果も若干生じた。今や、災害救助隊への体験入隊や設備見学が人気を得ている。海外からも見学者や観光客が訪れる。防災関係の国際シンポジウムや関連する国際学会の大会などの開催も多く、災害救助隊の基地を置く各地は、その誘致にやっきだ。成功しているのは、用地の一部を緑化し、環境保全と自然災害防災の両方を学べる上に、温泉などの保養施設が近隣にある所と、かつての災害現場で歴史を学べる所だ。また、地震・津波などの大規模災害からの現在進行形の復旧・復興を現地研修できる地域や、火山との共存を歴史的に学べる地域なども注目だ。

 災害救助隊員や医師は、公務員となり、任地も自分で選べず派遣制だが、性別を問わず子どもに人気の職種だ。彼らは、国内はもちろん、世界中からの派遣要請にも対応できるように日々の研鑽を怠らない。派遣先が、戦闘地域か非戦闘地域か、という議論が国会で起きた時は、派遣された場所が被災地域なのです、という政府答弁をめぐって若干の混乱が生じたこともあった。しかし、武力行使が生じて危ないと感じた地域からは、救助した人々を連れて即座に逃げますと救助隊が宣言したので、派遣要請する国は、むしろ停戦や治安維持にやっきだ。救命救急と災害復旧に命を懸ける部隊に武器を向ける国に明日はない。  (中沢麻貴)