牧師室より

 この時期、外出時にはなるべくマスクをする。花粉を吸い込まないためである。鈍感なので、春先の咳やクシャミの原因が、アレルギーと気づくのに、ずいぶん時間がかかってしまった。しかし、里山歩きをする際は、マスクをしない。たとえ帰宅後にティッシュボックスを抱えるはめになっても、である。なにしろ、早春の里山は、かぐわしさに満ちている。それを胸いっぱい吸い込まないことには、冬は終わらない気がするのである。ロウバイやウメの香は、驚くほど遠くまで届く。鼻をひくつかせ、風の香をたどって花を発見する楽しさ。ロウバイは、クスノキ目ロウバイ科、ウメは、サクラと同じバラ目バラ科。クスノキやバラの仲間は、良い香りの花が多い気がする。聖書によく登場するアーモンドもバラ科なので、花には甘い香りがあるらしく、嗅いでみたいものだ。

そろそろ、ジンチョウゲも香る。分類は、フトモモ目ジンチョウゲ科。里山歩きをすると、道端にオニシバリというジンチョウゲ科の低木をよく見る。この時期、ジンチョウゲそっくりの花をつけるが、まったく香らない。代わりに、初夏の真っ赤な実が、目を楽しませる(ただし有毒)。

 ついでに。春の野草ではないが、旧約聖書に出てくるコエンドロは、コリアンダーつまりパクチーのことだ。セリ科に分類される。葉の香は個性的だが、種実はオレンジのような甘い芳香を持つ。  (中沢麻貴)