牧師室より

 一年半ぶりに髪を切った。若者の流行に倣いスマホ予約した、初めて行く美容室でショートカットにしてもらった。流行といっても、髪型の話ではなく、hair donation (ヘア・ドネイション、「髪の献品」の意)したのである。癌治療でかつらが必要になった子どもたちのために髪の毛を寄付する運動への協力だ。若者の間で静かなブームがある。前回髪を切った際、donationすればよかったのに、と言われ、なるほどと思って取り扱い団体を調べて協力することにした。そのような団体は複数あるようだが、協力しようと決めたところのルールでは、寄付する髪の長さは31センチ必要で、完全に乾いた状態の髪を、きちんと束ねて送る必要がある。自力でその状態にした髪を送ることも可だが、自信がなかったので、協力美容室を団体のホームページで調べ、予約を入れて行ってみた。ふだん無精者で、伸ばした髪を自分で切っている。大人になってから美容室に足を踏み入れた回数は数えるほどしかなく、緊張する。

 上大岡近くの小路に面した、こぢんまりした美容室を探し当てて入店。中村獅童似のスタイリストさんが、慇懃に「donationでご予約の方ですね」と迎えてくださり、少し待って席に案内され、「まず、髪をお測りして長さが足りているかお調べしますね」と。事前に自分で測って来店しても、後の髪型によっては不足の場合もあるとのことだが、なんとか足りているとわかって一安心。髪は、スタイリストさんの手で六房ほどに分けてゴムで束ねられ、切られていった。ヘアスタイルを整えていただく間に、スタイリスト氏がぽつぽつ語る。「僕も自分の髪をdonationしたんですよ。ウチにも小さい子いますんで、こういうの大事だナと。いつか、ウチの子にもやらせてみたい…」。良い体験であった。(中沢麻貴)