牧師室より

『ビッグイシュー』という雑誌がある。ホームレスの仕事づくりのための雑誌だ。すでに何度か紹介したように思う。創刊15周年記念号の表紙&スペシャルインタビューは、羽生善治(永世7冠)、特集は「誰もがパーソナリティ」であった。

 将棋の世界に、AI(人工知能・コンピュータ)が持ち込まれて久しい。そのことについて羽生氏はインタビューの中で、AIは人間同様万能ではなく、不得手なことも多い。人間には人間にしかできない創造性がある、と語る。続けて、「社会全体としては統計的・確率的な画一化の方向に向かうのは避けられませんが、個人や組織としては違う道もあるんじゃないかという人がたくさん出てきた方が社会も活性化するのではないでしょうか。やはり世の中にはいろんな世界や考え方があって、それらをたくさん許容できる社会の方が楽しいし、自分自身もそうありたいと思っています」と。同感である。特集の「誰もがパーソナリティ」は、その羽生氏のメッセージに呼応するかのような企画で、ネットラジオ「ゆめのたね放送局」の紹介であった。このラジオ局は、生身の人間の息遣いをリスナーに届ける、「SNSを越える、人がつながる居場所にしたい」という理想を掲げていて、現在、561人のパーソナリティが、東京、大阪、沖縄など、7つの放送局で活躍中という。彼らのほとんどが、LGBT、ひきこもり、障碍者などを含む、“多様な一般人”だという。それだけで、ワクワクしてくるような話である。詳細は、『ビッグイシュー』を読んで頂きたい。教会用に1冊置いてあるが、ぜひ街頭での購入を。

 先週の全体集会では、「次の世代に残したい良さ」というテーマで、この教会に与えられている賜物について共に考える時を持った。

この教会の豊かさは、“多様さ”だと私は思っている。合同教団に属する合同教会(様々な教派出身者が集う教会という意)であり、信仰について自由に考え、話し合うことができる教会であるからだ。自分と異なる信仰(思想・信条)を持つ人を、この教会の豊かさだと受け止められる教会として、今後も歩んで欲しいと願っている。         (中沢譲)