牧師室より

 今年の夏もたいへん暑かった。この暑さに関連して話題になったのが、2020年の東京オリンピックに関することだ。この暑い時期に開催して大丈夫なのか、という声がいくつもあった。真夏に開催することになった理由は、五輪の最大スポンサーである米国放送業界の都合だそうだ。開催時期を動かすことは困難なので、サマータイム導入で時間を動かそうという話も出たが、自民党は今回は断念することを発表した(27日)。

その他にも奇妙な話はいくつもある。ボランティアを約11万人見積もっていると聞く。しかも大会期間中の交通費・宿泊代、研修のための宿泊費・交通費も自腹だという。ボランティアの条件は、18時間、510日間の無償労働と、研修への参加が条件だという。そのため「ブラックボランティアだ」、との批判が出たため、各人に総額1000円を支給するという。また学生をボランティアに動員するために、文科省は各大学に、2020年の授業期間をずらすよう、話をしているとも聞く。

 あるジャーナリストによると、現時点の協賛企業は50社以上、4000億円以上の献金が、すでに日本オリンピック委員会に集まっているという(企業献金の総額は非公表だが、JOCは資金総額が5500億円になったと公表)。資金集めは順調なようだが、ボランティアへの人件費の支出が困難だという理由は公表されていない。

一方、東京五輪公式ホームページには、組織委員会役員の報酬と費用に関する規定が公表されているが、役員トップの報酬は、年額2400万円。役員の宿泊費・出張費は別途支給と記されている。しかも大会の施設建築費用や警備費用などは、当然のように税金から支出される。一例だが、人気女優を起用したテレビコマーシャルの制作費は4000万円、出演者や制作会社は、無償ではないのだ。

 戦時中、国民徴用令、学徒動員令、女子挺身労務令によって、軍需工場で無償で働かされた人たちの話を思い出す。これらの動員令で利益を得たのは、軍事産業である。政治家や企業だけが私腹を肥やすという構造は、同じではないだろうか。

もし、隣人に大会ボランティアを希望する方がいたら、下記のサイトと新書を勧めて欲しい。ウェブサイト「東京五輪学生ボランティア応援団」と『ブラックボランティア』(著:本間龍、角川新書)だ。 (中沢譲)