◇牧師室より◇
西日本を襲った豪雨災害により、多くの被害と人命が失われたという。悲しみと不安の中にある人々の上に、天の慰めを祈る。
被害の全体状況は、まだ明らかになっていない。むしろ豪雨による被害は継続中というのが正しいのかもしれない。西日本に点在する「ため池」が決壊しそうだということで、避難指示が新しく出されている地域もあるからだ。しかも残念なことに、豪雨が続く可能性がまだある。
豪雨が生じる理由については、地球規模での気候変動などを挙げることができるのだろう。しかし理由を知ったところで、豪雨は避けられない。ここ数年、九州、中国、四国地方での豪雨による災害は続いている。災害(地震・津波を含む)が生じることを前提とした国の設計が急務のように思う。
豪雨の最中、通称「赤坂自民亭」(赤坂にある衆院議員宿舎)では、安倍首相をはじめ自民党議員たちが恒例の酒盛りをしていたという。このことが世間の知るところとなり、首相の外遊が中止になるなどの発表が続いた。拾うところの少ない自民党ではあるが、石破茂議員が、「復興庁を改組し、防災省を作っていかねばならない」と発言している。これには賛成である。
ただし、本気で防災に取り組むためには、膨大な経費と努力が必要である。近年の災害への対応を総括し、細かい防災拠点(避難所・生活物資の備蓄・インターネット設備等)の設置と人材育成が必要だろう。病人、障碍者、高齢者等が、躊躇せずに逃げ込める避難所が必要なのだ。
今回の災害でもまた、生活物資の問題、避難所に関する問題、ボランティアに関する問題、ハザードマップに関する問題等が生じている。問題は山積みである。「防災省」を設置するなら、本気でこの問題を解決する必要があるだろう。
今は、人命ファーストの時代である。タイで洞窟に閉じ込められた13名の救出のために、世界中が注目し、尽力したように、人命ファーストで考えられる世界では、防衛省も赤坂自民亭も必要ない。必要なのは、災害救助のためのエキスパートである。国内だけでなく、世界中で活躍できる災害救助隊と、人命ファーストのために働く政治家こそが、先行きの見えないこの時代に必要なのではないか。 (中沢譲)