◇牧師室より◇
ぜひ鑑賞してみたい映像がある。元琉球朝日放送の報道記者で、現在はドキュメンタリー監督大矢英代(はなよ)氏制作の『テロリストは僕だった〜沖縄・基地建設反対に立ち上がった元米兵たち〜』という作品だ。大矢氏を取材した記事を見かけたので紹介したい。
大矢氏は、沖縄・高江(米軍ヘリパッド建設反対)の現場を取材中、おそろいのTシャツを着て座り込みをし、機動隊に排除されているアメリカ人たちを目撃した。「このアメリカ人たちはいったい何者?」という疑問から取材を始めたという。アメリカの退役軍人たちで、ベテランズ・フォー・ピース(VFP)のメンバーだった。大矢氏は、その中の一人、マイク・ヘインズ氏を追って、アメリカへ渡った。
アメリカでは軍人が尊敬され、国家への自己犠牲が最高の奉仕だと教えられる。私も何度か目撃したことがあるが、何か集会があれば、必ずと言っていいほど、軍人や退役軍人がその場で立つように紹介され、集会の参加者から称賛される時間が設けられる。そのように教育された子どもたちが、その後、軍隊にリクルートされることになる。マイク氏も18歳で海兵隊に入隊し、人殺しのための訓練を受ける。沖縄に駐留し、9・11後にイラクの戦場に送られた。
現地で彼は、イラクの民間人宅を襲撃し、尋問を命じられる中で、「テロと戦うためにイラクに来たのに、実はテロリストは僕だった」ということに気づかされる。マイク氏は、米軍の仕事は分業化されていて、弾丸を運ぶ者、弾を込める者、引き金を引く者は別々で、殺人に関わっている実感が薄いという。
そこで思い出したのは、『冬の兵士』(反戦イラク帰還兵の会、岩波書店)という本だ。「私たちは、冬の兵士です」「私たちは闘い続ける。すべての軍隊がイラクから撤退するまで」という帰還兵たちの闘いと思いが綴られている。
フランスでは徴兵制が復活した。軍事大国化(軍産複合化)する日本にとって他人ごとではない。兵士は、一番安価な兵器と呼ばれている。帰還兵たちが闘う前に、止めなくてはならないことがある。
(中沢譲)