牧師室より

集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法は違憲であると訴えていた、現役の自衛官による裁判の控訴審判決で、東京高裁は31日、この訴えを却下した一審判決を取り消し、審理を差し戻した。

同じ31日の国会。総務省が国民のエンゲル係数が高くなっていることを発表しているが、国民の生活が苦しくなっているのでは、と追及した野党議員に対し、安倍首相は、国民生活が豊かになったために高くなったのだ、と反論した。まったくの詭弁である。こんな時代にあって、高裁の判決は朗報であった。

いわゆる反戦・反基地運動をしている市民運動では、自衛官との連携で運動をすることは滅多にない。自衛官が裁判を起こしても、支援しづらい関係にある。しかし、いざ戦争がはじまれば、真っ先に命の危険に晒されるのは自衛官である。

専守防衛の理念のもとに、自衛官になった者たちを、平和という名の“国益”のために、海外に派遣するのは違憲であり、不利益を被る自衛官に、出動命令を拒否する権利はあると考えている。差し戻した結果がどうなるかは分からないが、画期的な判決だと思う。   (中沢譲)