牧師室より

 福島の友人から本が送られて来た。美しい写真の絵本である。題は、『かえるふくしま』。帯には、「原発事故から5年。カエルを通して描かれた福島からのメッセージ」とある。著者は矢内靖史氏、福島民友新聞社の報道カメラマンである。

 福島は、知る人ぞ知るカエル王国である。阿武隈川の源流域は、「水質日本一」に何度も選ばれている。川や沼、そして水田や森に、12種類ものカエルが生息する。ウシガエルを除く11種類が、日本原産のカエルだ。ページをめくるたびに、様々なカエルが登場する。『親指姫』の物語さながらに花びらに座っているカエル、水田を気持ちよさそうに泳いでいるカエル、渓流の岩に修行僧のような顔で座っているカエル、道路脇の石垣に忍者のようにへばりついているカエル…。震災前の大熊町の森で、幼稚園児たちがびっくり顔で見上げる樹上にある、モリアオガエルの卵塊の写真もある。その木の下に位置するのは、孵化して木から落ちるオタマジャクシのために、大事に作っていた水田だ。カエルと人が、仲良く利用していた田んぼは、今どうなっているのだろう。ページをめくっていくと、衝撃的な一枚がある。放射能で汚染された土を入れた袋が累々と積まれ、それを覆うブルーシートの青い襞の間に、ひっそりとくっついているニホンアマガエル。

 カエルの、大きな目でじっと見つめる眼差しは、無言で何かを訴えているようだ。津波被害のあった港に置かれた、カエルの石像の写真もあった。「無事帰る」の意味が込められているのだそうだ。

 津波、放射能、そして除染のための表土や落ち葉の除去、樹木の伐採など、人間だけでなく、カエルをはじめとする多くの生物の生息状況にダメージを与えることがあったのだ。最後のページの、結びの言葉を引用しておく。「わたしたちの願いは、みんながふるさとに『かえる』こと。福島が以前のすがたに、よみ『がえる』こと。福島を『かえる』こと。わたしたちは、福島で生きていく」。

  (中沢麻貴)