◇牧師室より◇
先日、入門講座の準備をしながらふと思い出し、久しぶりに手にした本がある。『迷い出た羊』という本だ。著者は柴田作治カという牧師で、すでに天籍に移られている。小樽望洋台伝道所の牧師であった。今は伝道所も解散している。
柴田牧師との出会いは、1990年の即位礼・大嘗祭の頃に遡る。私は、教団事務局を拠点とした市民運動にスカウトされ、代替わりに反対して全国各地をキャラバンで巡ったことがある。その関係で北海道の集会で出会ったのが柴田牧師であった。
彼の教会に一泊させてもらい、地元で採れた名も知らない茸で、朝まで飲み明かしたことを覚えている。その後、交流を深めることになるのだが、柴田牧師はある時、自分が週報で書いた原稿を、本にまとめたいと連絡して来られた。キャラバン後に教団に居候するようになった私とその仲間たちは、一宿一飯の恩義から、『迷い出た羊』として柴田牧師の原稿を1冊の本にした(その後、第2巻を発行)。柴田牧師の要望はそれに留まらず、ぜひ出版記念会も行いたいという。そこで教団事務局の会議室で出版記念パーティを行うことになった。1991年5月20日のことである。私は、酒と肴を準備する才能を買われて、教団に居候することを許されていたので、この時のパーティも裏方を務めさせて頂いたのだが、なんとその日の出席者の名簿が、『迷い出た羊』に挟まれていたのだ。
そこに書かれた名前の多くは、すでに故人となっていたが、驚いた名前がそこに一つあった。そこで記憶がよみがえってきたのが、教文館の関係者の方が、一人来られると聞いていたことだ。わたしは受付をしていたので、挨拶をしたのを覚えている。しかし名前も顔も失念していた。その方は、O. Y兄である。
神様はその頃から、出会いを準備されていたのだということを知らされた出来事であった。 (中沢譲)