牧師室より

 「豊洲市場事件」「森友学園事件」で盛り上がっている一方で、政府は「共謀罪」の制定を、今月21日にも閣議決定し、今国会に提出して、成立を目指すと言われている。

「共謀罪」が最初に登場したのは2003年。最初は「組織的犯罪処罰法」の一部改正として提案された。その時の内容は、市民が長期刑(4年以上)に定められている犯罪に違反する話をし、合意すれば、実行していなくても処罰できるという法律である。この長期刑に相当する刑が、619もあることから、思想・言論処罰法であるとの世論がわき起こり、これまで三度も廃案になっている。ところが安倍政権は、東京オリンピック(パラリンピック)の開催に不可欠だと言い、この「共謀罪」の制定を今、進めているのである。

 この「共謀罪」が制定されれば、酒の席での発言であっても、インターネット上での冗談発言であっても、“相づちを打つ”だけで、「合意」(共謀)したものとみなされ、処罰される可能性が生じる。

 ちなみに米国政府が、国内外の通話履歴を無差別に入手していることが、元職員であるエドワード・スノーデンによって明らかにされている。また英国政府が、人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部)の活動を違法に監視していたことが、英裁判所によって認定(2015年)されてもいる。長年、人権活動を支援してきた日本基督教団事務局も、違法に盗聴されてきたとの関係者の証言がある。私たちの日常は、すでに筒抜けであり、その上での「共謀罪」新設の動きでもあるのだ。 

すでに私たちは、“戦前”の世界を歩んでいるのかもしれない。この悪法に反対である。      (中沢譲)